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1章 ミリアリア・レノヴァティオ

本日1話更新です。

私は前世の記憶を持ったまま生まれた。


この世界で目を覚ました時、目の前には銀髪で翠の瞳の美しい女性がいた。汗をかいて疲労がピークのようだけれど、とても幸せそうな顔をしてこちらを見ている。そこで私は、赤子として生まれたばかりということを理解した。


(私は死んだはずじゃ…まだ首に冷たい刃物の感触が残っているのに…!!)


「女の子だ!きっとアリアにそっくりの美人になるぞ。これからが楽しみだ。ありがとうアリア。とりあえずゆっくり休んでくれ。」


「ええ、そうね。」


(アリアが私の母親で、この男性が父親か。)


私の母親と父親が嬉しそうに話をしている。何故転生してしまったのかは分からない。前世では生きていくのが苦しくて、悲しくて、痛かった。「生きてほしい」と言われたから、私なりに頑張ってはみたけれど、結局生きることから逃げてしまった。その結果が転生だ。私は、赤子の泣き声にのせて、何日も転生してしまったことを嘆いた。


私が2歳の時、母親(アリア)が死んだ。


転生してしまった理由は分からないままだが、嘆いても仕方がない。前世とは違って幸せな人生になるかもしれない。そう思い、ミリアリア・レノヴァティオとしての人生を歩もうと思い直した矢先だった。母親(アリア)の死因は流行り病で、同じ時期に亡くなった人は他に何人もいた。誰が悪いだとかそういう話にはならなかった。皆、「運が悪かった。」「仕方がないことだ。」と言っていたのを覚えている。母親(アリア)は毎日私を抱きしめてくれていた。貴族なら乳母がいてもおかしくないのに、母親(アリア)自ら私に乳を飲ませ、世話をしていた。とても優しくて美しい人だった。


(私のせいだ。私も死んだ方がいい。)


母親(アリア)が死んだのは私のせいだと思った。前世でも()()だった。まだミリアリアとしての人生を歩んでいないが、私は死を選ぶことにした。私が生きていれば、誰かが死ぬ。それならば、死んでしまった方が皆のためになると思った。幼児である私に出来る自殺といえば「飛び降り自殺」だった。私はメイドの視線を掻い潜って窓から飛び降りた。すると、運悪く落ちているところをお客様として来ていた男性に魔法で助けられてしまった。結果、メイドが責められ、彼女は仕事を辞めた。


(死ぬなら誰にも迷惑がかからない方法がいい。それにどうせ死ぬなら、誰かを助けてから死のう。今さら罪を取り消すことはできないけれど、償いとして、人を助けよう。)


(家族をこれ以上死なせないために、距離を置こう。私は離れて暮らした方がいい。)


私はその日から必死に勉強した。自分が死ぬまでに誰かを助けられるように、こっそり魔法の練習もした。まだ2歳の私が本を求めるのは異常だったはずなのに、お父様とお兄様は私のために色々な本を用意してくれた。いつも私を気にかけて笑いかけてくれる家族。お父様とお兄様を愛さずにはいられなかった。離れて暮らさなければという決意は日に日に愛情に溶けていった。


そして12歳のある夜。レノヴァティオ公爵家が襲われた。


レノヴァティオ公爵家を快く思わない人間は少なくない。貴族の中では最高位の爵位であり、王族とも交流があるレノヴァティオは、勝手に周囲から恨みを持たれることがある。他貴族からの嫌がらせなんて日常茶飯事だったが、暗殺部隊を送り込まれたのは初めてだった。こういう時のために、レノヴァティオ公爵家も部隊を持っているが、お父様が別任務を言い渡して不在にしていた。敵はおそらくずっと隙を窺っていたのだろう。夜中に10数名がレノヴァティオ公爵家に侵入した。守る部隊もおらず、私が気付いた時には使用人が数名殺されていた。


(また…私のせいだ…!!)


10年ほど平穏な生活を送っていたから忘れかけていた。このままだと()()家族を失ってしまう。


(私が……死なせない!)


私は魔力を霧のような形態に変化させ、放射線状に散開させた。そして自身の魔力でレノヴァティオ公爵家を包み込む。私は侵入した人の位置を捕捉した。次に魔力を圧縮する。イメージとしては前世にあった弾丸だ。私の自室から魔力を放っても、壁を貫いて敵を貫通出来るように、残りの魔力全てを使って弾丸を創る。頭が割れそうだった。でも、魔力を行使しすぎて死んだとしても、それはそれでいいと思った。私は敵の心臓付近に付着している自分の魔力に当たるように弾丸を13発放った。長距離を目で狙って打つことはできないが、自分の魔力に自分の魔力を当てるのは簡単だ。そして私は魔力を行使しすぎて意識を失った。


「ミリア!大丈夫か!ミリア!」


お兄様の声で目を覚ます。私は死ねなかった。でも家族の無事な姿を見て安心する。私の弾丸はちゃんと敵を貫通したようだ。お兄様も私の無事な姿を見て安心した様子だった。私は自室で鼻血を出して倒れていたらしい。そして私の部屋から壁の穴が発見され、暗殺部隊を全滅させたのは私ではないかと推論されていることをお兄様から聞かされた。


(人を殺めてしまった。私はどうなるのだろう。)


私は人を殺したことよりも、殺人によってどのような罪に問われるのかを恐れた。しかし、今さら事実は変わらない。私は正直に暗殺部隊を全滅させたと答え、これからどうなるのかと尋ねた。お兄様は「どうもしない」「助けてくれてありがとう」と言った。他の使用人にも、12歳の小娘が人を殺した事実に戸惑う人はいたが、殺人を責められることはなく、むしろ感謝されてしまった。


そこで私は前世との認識の差を知った。


前世では理由がどうであれ、殺人は罪に問われるものだ。しかし、この世界では理由次第で、罪になることはなく、むしろ奨励されることもある。

私は、少し前から修復魔法の構想を考えていた。修復魔法が完成できれば、多くの人の命を助けることができる。しかし、修復魔法を試すことが出来なかった。自分を刃物で切りつけて魔法を試す程度は出来るが、失敗した場合のリスクが高すぎた。そこで、私は冒険者になり、盗賊や指名手配犯で実験することを思い付いた。罪に問われることはなく、むしろ奨励されている殺人の代表例だった。


私の倫理観は前世から既にぶっ壊れていた。


15歳になり、公爵家から出て行った。本当はこれで家族とさよならをするつもりだった。しかし、お父様に食い下がられ、1人暮らしということで落ち着いた。私自身も家族を愛していたため、完全に家族愛から離れることが出来なかった。


1人暮らしを始めて、ミアを名乗った。出来るだけ街の人の役に立ちたいと思って行動した。子どもたちの先生になったのも役に立ちたいと思った行動から始めたことだった。そして私は次第に街に溶け込んでいった。しかし、その反面、フェレスという名前で冒険者となり、魔力の実験のため、盗賊を中心に討伐していった。


人を助けるために人を殺した。


修復魔法の実験をすることに最初は少し抵抗心があったが、今では何とも思わない。手足を切り落として修復魔法に失敗しても、筋肉の動きを直接観察しても、最後には首を切り落としてギルドに提出をする。どんなに残虐な行為を行ってもその事実が公になることはない。死人に口なしということだ。むしろ、盗賊に囚われていた女性・子どもたちやその家族、品物が襲われると震えていた商人たちに次々と感謝された。だからといって偉ぶるわけでもなく、私の目的はただ一つ、修復魔法を完成させることだった。一瞬で移動する手段は修復魔法を完成させる過程で得たものだった。


そんな生活を送っていく中で、ギラという友達ができ、1ヶ月ほど前に殿下を拾った。殿下はなぜそこまで私に執着するのだろう。一目惚れという言葉に惑わされたりはしない。彼は王族なのだ。平民に惚れるなどありえない。


(何か理由があるはずよ。)


今日は殿下がやってくる日。なぜ私に執着するのか、私の残虐行為を知ってしまったらどう思うのだろうか、答えを聞いてしまいたいが、聞いてしまったら後には戻れない気がして私は口を閉ざすのだった。

読んでいただきありがとうございます。

次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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