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2章 誘拐隠蔽工作8

誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。


ミリア目線とアレク目線です。

前世のことをアレクシル殿下に話した。


彼は黙ったままだが、苦しいくらいに抱きしめてくれている。それだけで、彼が私の話を信じてくれたことが分かった。


あと話していないのはドラゴンに関することだけ。

もう、殿下には話してしまってもいいのかもしれない。


判断が鈍っているからそう思ったのかは分からないが、前世のことを受け止めてくれた彼には、私のことをもっと知ってほしいと思った。



ーその感情の名前を、私はまだ知らないけれど。



公爵邸に帰ったら、行方不明中のギラを真剣に探してみて、殿下にドラゴンのことを話していいか聞いてみようと思う。

きっと、ギラなら私が探していると知れば、現れてくれるだろう。



肩の力が抜ける。

もう本当に疲れた。

身体も気力も限界だ。



『エル、もう…寝るね…あとは殿下に任せるわ。』


『分かった。レオに伝えておく。おやすみ』



私は殿下に体重を預けたまま、眠りについた。

殿下の上着を着て、さらに殿下に抱きしめられて、好きな匂いに包まれた私が睡魔に勝てるはずもなかった。



……



リアから前世のことを聞いた。


正直、前世を覚えているなんて信じ難い話だが、お陰で今まで疑問に思っていたことに辻褄が合ってしまう。


それに、神はリアを幸せにするために私の(つがい)にしたと言っていた。

そして、リアを呪ったのは別の神だと。


なら、リアが別世界から来たとしても不思議ではない。



「………っ!」



リアは…どれだけ苦しい思いをしてきたのだろう。


大切な人を沢山殺してきたと言った。

呪われていることを知らないから、訳も分からず、近くにいる人が死んでいく。


そんな中で精神が壊れていかないわけがない。

目の前で訳もわからず殺されて、倫理観が壊れないはずがなかった。


大切な人を守るために離れて、ずっと、大切な人が死んでないか恐怖して…考えて……

そして、少しずつ確実に、大切な人に依存するようになっていったのだろう。


そう考えれば、今日の行動にも十分説明がつくと思った。



「…リア………」



何と声をかければいいのか分からない。

ただ、分からないまま彼女の名前を呼んだ。


そして違和感に気付く。

私は腕の中のリアを覗いた。



「…すぅ……すぅ……すぅ……」


「……寝た………!?」



小さく寝息をたてる彼女。

今まで何度か見たことがある寝顔がそこにあった。


私は彼女の頬を軽くつまむが、起きるそぶりがない。



「はあああ………勘弁してくれ。」



私は天井を仰いだ。


大事な場面でリアが寝るのは…悲しいがいつものことだ。

悶々と何とも言い難い感情が湧いてくるが、堪えよう。


私は再度、彼女の寝顔を見る。


血で真っ赤に染まっていた顔とは真逆で、とても可愛らしい顔をしている。

これもギャップのように感じて、さらに愛おしくなってしまうのだから、きっと私の倫理観も少しおかしくなっているのだろう。


その時、扉をノックする音が聞こえた。



「殿下、失礼しまーす。…っと、お邪魔でしたか?」


「セイルズ…まだ入っていいと言ってないんだが…まぁいい。リアは寝てしまったから別の部屋で話そう。」



私はリアをゆっくりとベッドに寝かそうとするが、リアが私の服をつかんで離さない。



「…………。」


「……殿下は愛されていますねぇ。もう、このままここで話しましょう。その様子だとしばらく起きないでしょうし。」


「…あ、あぁ…そうだな。」



起きている時は距離を置かれている分、嬉しいと思う。というよりずるいと思う。


私は、リアが眠りやすいようにベッド端に座り直す。

セイルズが無駄に冷やかさない性格で良かった。というより、普段の性格が悪いのだが…それは今は置いておこう。


そして、セイルズから報告を受ける。



「とりあえず、結果から先に言いますと、犯人は不明。というよりフェレスだったらちゃんと報告が上がるだろうというのが騎士団とギルドの見解ですねぇ。」


「そうか…ということは、死体は全員ブラックリストに載っていたということだな。」


「んーまぁ…表向きはそうなんですが、現場にあった血液量と肉片の量から考えて…妹ちゃんはブラックリストに載っていない者は、頭も身体も全部すり潰したんでしょうね。」


「…………そうか。」



さっき見た現場が思い出される。


リアの話を聞けば、あのような惨状になってしまったことに納得がいった。でも、だからといって彼女を擁護するつもりもない。


私がするべきなのは、彼女を擁護するのではなく、同じことを繰り返させないようにすること。

彼女の呪いに()()することだ。


セイルズはリアがやったことをあまり気にしていないようで、やれやれという感じに手を振った。



「現場を見た者が次々に吐くから大変だったんですよー。僕の管轄じゃないのになぁ。」


「セイルズは…あれを見ても案外普通なんだな。」


「まー僕も流石にびっくりしましたけど、妹ちゃん闇深そうじゃないですか?寧ろ納得という方が強いかなぁ。」



セイルズはリアと同じで魔力を感じることができる。

闇が深そうというのは分からなくもないが、セイルズにしか分からない何かを元々感じ取っていたのだろう。


その後、私は言える範囲で、誘拐事件の経緯をセイルズに伝えた。流石にここまで働かせておいて、内容は秘密ですとは言い難い。


しかし、セイルズはあまり興味がないようだった。そして、思い出したように言う。



「あ、そういえばライルから連絡来てますよ。」


「は?そういうことは先に言え。」



私はセイルズから手紙を受け取った。


リアの話によれば、公爵邸にはレオと護衛騎士のオズルトがいるはずなので、ライルも状況を把握しているはずだ。


私はすぐに手紙に目を通した。



『ジョイル・エルーレレが妹に誘拐事件の解決を依頼。レオ、ルトから状況確認後、リフレット伯爵に本人引き渡し済。大きな力の犯人は妹。妹の大量の吐血痕を公爵邸にて確認済。ミリアのこと頼んだ。』



ライルらしく、簡潔で短い。


手紙によれば、リフレット伯爵令嬢は既にリフレット伯爵の下へ帰されている。

となると、私たちは、事件の後始末をして帰るだけということだ。


それにしても…



「大きな力の正体はリアだったか…」


「そうですねぇ。ま、何のために力を使ったのかは想像できますが…本人に聞いた方が早そうですね。」



セイルズがそういうと、リアがもぞもぞと動き始めた。

浅い眠りだったようだ。



「…起きたか?」


「………………ふぁい。えっと…そこに誰か…いらっしゃい、ますか…?」


(ん゛ん゛っ……)



まだ眠そうに話す声が幼くて可愛い。

寝起きの彼女は、いつだって心臓に悪かった。これをセイルズに見られるのが癪だが仕方ない。


セイルズは面白いものを見たというように笑って言った。



「あはは!さっきとは別人だねぇ。妹ちゃん僕が誰かわかるかなぁ?」


「………え!?セイルズ様!?…あ、そういえば…殿下が名前を呼んでいたような…」


「あたりー!!」


(…分からないわけないだろう……)



流石に、セイルズがいると聞いて意識が覚醒する。もう少し可愛い声を聞いていたかったが仕方ない。

そして、リアの様子から、まだ魔力を扱えないようだった。


彼女は私に寄りかかるように寝ていたことに気付き、そっと離れるが、手は離していない。


魔力を使えない今、何かを掴んでいた方が安心するということは分かっているのだが、それでも私の手を握ってくれていることが嬉しかった。


セイルズの目がランランとしている。

彼は興味を持ったものにはとことん言及するタイプだ。寝起きのリアに容赦なく質問した。



「ねぇ、とても大きな力を感じたんだけど、あれって妹ちゃんがやったんでしょ?」


「…え?大きな力?……何のことでしょうか?」



ミリアは本当に分かっていなさそうだが、ライルからの報告が間違っているはずがない。

私は分かりやすく説明し直した。



「魔力なのか分からないが、王宮で大きな力を感じたんだ。それで私たちは、100年周期の大災害かもしれないと思った。そして、私に感じたのならリアも感じただろうと公爵邸に向かったんだが…直後、リアはこの都市に向かって走り出したということだ。」


「あ…そういうことですか。……セイルズ様の言う通り、その力は私ですね。今思えば、セイルズ様に気付かれるのは当たり前でしたね。」



リアが力の行使を認める。

すると、セイルズが答え合わせのように聞いた。



「ねぇ、その力ってもしかして…リフなんとかって令嬢を探すために使ったのかな?」


「…流石……大正解です。私にセイルズ様のような力があれば良かったのですが…残念ながらないので、大量の魔力を広げて捜索しました。紛らわしくて申し訳ございませんでした。100年周期の大災害とは違います。」



リアはその後、独り言のように「だから殿下とセイルズ様が私を追いかけて来てしまったのね。」と言った。先程の様子とは違って物分かりが早い。寝たからだろうか。



「じゃあさーぶっちゃけ聞いちゃうけど、妹ちゃんていくつの魔力を扱えるのかな?僕が知っているのだと、これで3つになるんだけど?」


「それは………」


リアは少し躊躇った後、意を決したように答える。


「おっしゃる通り3つです。ただ、今日使った魔力は…魔力量こそ素晴らしいですが、ほとんど扱えません。なので、基本は2つです。」


「ふぅん?」


「これ以上は……答えられません。」



セイルズは興味深そうにリアを見つめるが、リアはもう話す気はないようだった。


私になら話してくれるだろうか。淡い期待をしてしまうが、きっと話してはくれないのだろう。

私もそこまでは自意識過剰ではないし、自惚れてはいない…いない。


ただ、使える魔力が3つと聞いて、思い当たるものがあった。

1つはリア自身の魔力とすると、残り2つ。

そして……リアの胸には2つの美しい宝石が埋め込まれている。きっと関係があるのだろう。



その後、この誘拐事件の顛末をどうするのかを3人で話し合った。

というより、リアが始めたことなので、騎士団の調査結果を聞いてリアが決めた。


今回の事件は、フェレスの仕業ということにして、報告書を後でギルドに提出するという。


これで完全にアルアイカ伯爵家はフェレスを敵に回したと噂になるだろう。きっと、アルアイカ伯爵家は社交界から爪弾きになってしまう。

そして、リフレット伯爵もフェレスを敵に回してしまったということで怯えて暮らすことになるだろう。これで、娘を大事にしてくれるようになればいいが、それは私たちには分からない。


私は、状況についての報告を簡潔に手紙にまとめ、ライルに向けて伝書鳩を飛ばした。


もう空が赤く染まってきている。

私たち3人は明日王都へ向けて発つことに決め、セイルズは街を散策に行ってしまった。


部屋に2人きりになる。

まだ、前世について聞いてからの返事をしていない。


私はリアに話がしたいというと、彼女は頷いてくれた。


読んでいただきありがとうございました。


ブックマーク&評価していただきありがとうございます。

おかげで執筆ペースを落とさずに頑張れております。


もし、まだブックマーク&評価されていない方がいましたら、ぜひよろしくお願いします。


また、参考になりますので面白いと思っていただいた話には「いいね」をお願いします。


次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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