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2章 誘拐隠蔽工作7

誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。


ミリア目線です。

私は、ダン・アルアイカへトラウマを植え続けた。


人間の破壊の仕方は様々で、色々な方法で私は彼に、死と血を浴びせ続けた。


ギルドのブラックリストに載っている者は首を残し、載っていないものは頭も潰した。


フェレスの仕業だと世間にバレれば、後から裏で辻褄を合わせるし、バレなければ正体不明の犯人として事件を迷宮入りにさせる。

死んだ者がブラックリストに載っていると分かれば、そこまで詳しく調べられないだろうから。


本当に、これでリフレット伯爵令嬢は幸せに暮らせるようになるのだろうか。分からない。


寧ろ、こんなことをしない方が、彼女は幸せになったかもしれない。



だって…彼女は、ダン・アルアイカを愛していたから。



好きな人に裏切られていることを、知らない方が幸せになったのかもしれない。ダン・アルアイカの計画によれば、彼女は想い人と結婚するのだから。


私は、ダン・アルアイカ以外の人間を壊し終えてから、自分の行為が分からなくなっていた。

ただ、分かるのは、これは彼女のためではなく、私のためにやっていること。


ダン・アルアイカが気を失った。


これで3回目。私は彼を無理矢理起こそうとはせず、彼を眺めた。そして、彼の記憶を読んだ。



(………)


(知りたくなかったわ……)



ダン・アルアイカもリフレット伯爵令嬢に少なからず好意を持っていた。

その想いは歪んでいるけれど、彼女を好きだという気持ちよりも名誉を大事にしている彼だけれど…


名誉をとるか命をとるか

名誉も命の形も人それぞれで分からない。


私の名誉と命は他人から見ればどんな形になっているのだろう。前世から倫理観がぶっ壊れている私は、きっと醜い形をしているに違いない。



(あ…魔力が……もうほとんどない。エルの魔力も、私の魔力も…)



考え事をしながら、配分を考えず魔力を消費していたからか、私はもう立っているのもやっとの状態になっていた。


この場から立ち去る気力も魔力も体力もない。


私は、レオが迎えに来てくれるのを待っているしか出来なくなった。



………



そして今、私は高級宿のベッドに寝かされている。


身体に力が入らないので、アレクシル殿下が運んでくれたが、何故殿下が来てしまったのだろうか。


色々考えたいのに、それすら放棄したいほど、私は疲れていた。

殿下が色々と聞いてくるが、私は思ったことを答えるしかできなかった。


殿下の手が心地いい。


目も見えない、匂いも分からない、魔力も使えない状態で、殿下の言葉と手の温もりだけが、私に与えられる情報だった。


(いつもは、魔力で色々なものが見えすぎているから…変な感覚だわ…)



殿下は悲しそうに言った。



「リアは…まだ呪われているんだ。私が分かっていなかったんだ…すまない。」



謝られている意味が分からない。

呪いに関しては、殿下は全く責任を感じる必要がないのに。


手に水が落ちてきた。

多分、殿下の涙だ。私はいつも、彼を泣かせている。


魔力を扱えないから、彼が今どんな気持ちなのか分からない。泣いてほしくない。できれば、笑っていてほしいと思う。



「……リア。私は…リアが残酷に人を…平気で殺すのを見て…とても悲しかった。」


「……。」


「心が引き裂かれるような思いを…今、している。」



心が引き裂かれるような思い。どんな思いだっただろうか。

言葉だけじゃ難しいけれど…

確か、お兄様が死にかける姿を見て、私も心が引き裂かれる気持ちだった。



「…お兄様が死にそうになるくらい?……それと、同じ思いをしているのでしょうか?」


「……??……そう、いう…………………あぁ、なるほど。」



思ったことを口にしたが、伝わらなかっただろうか。

しかし、殿下はすぐに返事をくれた。



「そうだ。同じ思いをしている。だから、人の命を弄ぶような行為はやめてくれ。…その度に、ライルが死んでしまうのと同じくらい、心が引き裂かれる思いをする。」



今の私には、殿下の様子がよく分からない。


ただ、殿下が私に嘘をついたことはほとんどないから、きっと、嘘ではないのだろう。

実際、殿下は泣いてしまった。なら、泣くほど辛かったということに間違いはないのだから。


いつもの私なら、もっと色々考えられたし、気をつけることが出来ていただろう。

しかし、私は疲弊していて、殿下の言葉をそのまま、何も疑わずに受け止めてしまった。



「…分かりました。もうしません。」


「よかった。じゃあ……もし、リアの友達が名誉を汚されて、復讐してほしいと懇願されればどうする?」


「…それで、殿下の心が引き裂かれるのであれば、復讐しません。どうしてもというなら、その時は……殿下に相談しますね。」


「は………ははっ。存外、私はリアに大切にされているらしい。嬉しいよ。」


「…… ?」



正直、私には今の会話が全く分かっていなかった。

聞かれたことに頷き、素直に答えただけ。


殿下の気持ちを優先する。

私にとって、殿下が大切な人だと言っているのと同じ。

でもそれは、誰かの復讐を果たせなかった時、その責任を殿下が背負うということになる。


殿下は私の頭を優しく撫でた。



「リア。眠らないのか?」


「…エルを通してレオから連絡が入るかもしれないので、眠れないんです。」


「エル……というのは、グリフォンだったか。エルは話せるのか?」


「…はい。いくら距離が離れていても……会話出来ます。」



私は、普段は人に言わないこともぽろぽろと話していた。


ギラの魔力を使った影響が酷い上、エルの魔力をほとんど使ってしまうことが初めてだった。

そのため、お兄様とお酒を飲んでる時以上に、私の判断は過去最高に鈍くなっていた。


何より知られたくない秘密を漏らしてしまうほどに。



「そうか。…なら、私と話を続けよう。その方が眠くならないはずだから。」


「…助かります。」


「……今度、エルを私に紹介してくれないか?ライルとオズリオは会ったことがあると言っていて、羨ましかったんだ。」


「そう…だったんですね。では、今度一緒に空を飛びましょう。……約束。」



私は殿下の手を離し、小指を殿下の小指に絡めた。



「ん?この指にはどういう意味があるんだ?」


「これは……私が前に住んでいた世界での…約束の証なんです。」


「………え?今…何て言った?前に……()()()()()()()?」



殿下が復唱したことによって、私は自分の失言を知った。

私は殿下の手を離し、とにかく逃げようとする。でも、身体は動かないし、言い訳も思い付かない。


「どうしよう」と頭の中で何度も何度も考える。

今の私に答えが出るはずもないのに、焦りだけが募り、私は過呼吸になった。



「ぁ……はっ…ぁ…はっ……!!」


「リア!!!ゆっくり息をしろ!!くそっ!!」



殿下は私の口に手を被せ、呼吸を整えさせようとするが、落ち着かない。

勝手に涙が溢れてきた。目が熱くて、怖くて仕方ない。


殿下は私の身体を起こして、私の顔を彼の胸に押し付けるように抱きしめた。


息がし辛い。でも、いつの間にか回復していた鼻が殿下の匂いを吸い込んだ。


安心する匂い。眠たくなる匂い。…好きな匂い。



「はぁ…はぁ……はぁ………」


「…落ち着いた…のか……良かった…」



気付けば、過呼吸は止まっていた。

私が落ち着いたのを知り、殿下が私を離そうとするが、私は殿下の服を握りしめ、それを止めた。


私は殿下の胸に額を付けたまま話す。



「出来れば…もう少しこのままで…………話しますから。」


「……分かった。」



殿下の大きな手が私の背中や頭を撫でてくれる。

まるで、前世のことを話せるように、宥めてくれているようだった。



「………………やっぱり、聞かなかったことにしていただけませんか?」


「それは……無理だな。私はリアのことが好きだから、なんでも知りたいし、共有したい。」


「………っ!」



好きだと言われて動揺した。

いつもはさらっと聞き流すことが出来るのに、今は何故か出来なかった。



「……話したら、私のこと…嫌いになりますよ。」


「ふっ……まるで、嫌われたくないかのような言い方だ。」



真剣に話しているのに、殿下はどことなく嬉しそうな声をしている。

私は、そのまま思ったことを言った。



「……はい……嫌いに、ならないでほしいです。」


「……っ!!これは……いや、なんでもない。私はリアが命を弄んでいるのを見ても、嫌いにならなかった男だ。安心してくれていい。」



本当に大丈夫だろうか。

大切な人をたくさん殺しておいて、私はのうのうと生きている。今日のようなブラックリストに載っている男とは訳が違うというのに。



「……手を握ってもいいでしょうか?」


「ああ、勿論。…今日のリアは素直で…抜けていて…可愛い。」


「……疲れているだけですよ。」



殿下の手を握る。

その上、正面から抱きしめてくれる。大丈夫。

私は深呼吸をして、ゆっくりと話し始めた。



「私には…前世の記憶があるのです。こことは違う世界の記憶。私はそこで今とは全く違う人間でしたーー」


「ーー……ただ…私はその世界でも、生まれた時から呪われていたということです。」



そして、呪われていることになかなか気付かなかった私は、大切な人を沢山殺してしまったことを伝えた。


両親が死に、クラスの友達が死に、育ての親が死に、施設の皆んなが死に…ずっと海外で暮らしていた歳の離れた優秀な兄も死に、最後に慕ってくれた後輩が誕生日に死んで…耐えきれず私も自殺した。


首を切った感覚が残ったまま、この世界に生まれ、そして、母が死んだことにより、まだ呪われていることを知ったこと。


目の前で大切な人が色んな死に方をして、「死」に対する感覚がおかしくなっていること。



殿下は、何も言わずに黙って聞いてくれた。


信じてくれるかは分からない。けれど、嫌わないと約束してくれたのだから、私が殿下を信じていた。


読んでいただきありがとうございました。


ブックマーク&評価していただきありがとうございます。おかげで執筆ペースを落とさずに頑張れています。

もし、まだブックマーク&評価されていない方がいましたら是非よろしくお願いします。


参考になりますので面白いと思っていただけた話には「いいね」をお願いします。


次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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