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2章 誘拐隠蔽工作1

誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。

お兄様とレオから新しい義足を受け取り、私の日常は元に戻っていた。


護衛騎士であるオズルト・アナーキンが休暇から帰ってきた後、ルトがいなかった間のことを伝えると、ものすごい勢いで謝られた。しかし、ルトは何も悪くないし、レオだって悪くない。


寧ろ、私はダン・アルアイカを懲らしめる機会ができて良かったと思っていた。



ここ最近社交界では、私が殿下の恋人で一夜を共にしたという噂が流れている。私が戦えるという噂が流れるよりはマシなので、噂については放置しているが、王宮に行けば針の筵になってしまう。


だから私は、公爵邸で自主謹慎していた。


もう少しで眼球の治療も終わる。

ルトの訓練を眺めながら、目が見えるようになったら何をしようか考えていると、レオが丸いお菓子を口に放り込んできた。



「これ、美味しいわ。」


「マカロンて言うらしい。色が沢山あって面白いお菓子だ。」


「そうなのね。早く見てみたいわ。」



口に入れられた時はマカロンと分からなかったが、前世でもあったお菓子なので、勿論どんな色か知っている。

レオは私の記憶を見た時に、前世のお菓子については見ていないのだろうか。


私だってレオの記憶を全て見たわけではない。私が読み取ったのは、見たいと思ったレオの(つがい)の情報だけだ。どこまで正確な記憶を読み取れるか、もしくは見せるのか。ある程度、意思操作出来るのではないか。


私はマカロンを咀嚼しながら、そんなことを考えていた。


試しに、私は爪で右手の人差し指の腹を切る。

指から流れる血に、レオの(つがい)の笑顔の情報を載せるイメージをした。



「レオ。」


「ん?どした……って、指を切ったのか?」


「ええ。ちょっと、舐めてみてくれる?試したいことがあるの。」


「あぁ…いいけど、王太子との夜を見せられるのは勘弁……」


「…してないわよ!!!」



軽口を言いつつも、レオの長い舌が私の指を流れる血を舐めとっていく。

そういえば、レオの舌をじっくり見たことがなかったが、人間の舌より細長くて薄い。ちょうど、人間の舌と爬虫類の舌を足して2で割ったような形をしていた。


そんな私たちの様子を、ルトが見てはいけないものを見たと言うような感じで見ている。

少し、魔力も興奮しているような、恥ずかしいような、疑惑を持っているような複雑な状態になっていた。



「ルト、どうしたの?」


「あ、いえ!……もう見慣れたと思ったんですが、ミリア様は殿下の恋人なんですよね?」


「…ええ、一応ね。」


「私からすると、師匠の方がずっとミリア様の恋人に見えますよ。」



ルトはレオのことを師匠と呼ぶようになっていた。そして、レオも師匠と呼ばれるのを気に入っている。


そして、よく言われるが、「恋人」の定義が分からない。


そのことについては、1度レオにも聞いたことがあった。

しかし、ドラゴンは魔獣と同じで、性別関係なく、お互いの身体を舐め合ったり、抱きしめ合ったりするらしく、レオは私のことを人間というよりドラゴンと見做しているそう。そして多分、私もそんな感じでレオのことを見做している。


他人に対しては距離を保てるが、レオに対しては何も思わない。

それに元々、前世では夜の経験だけは豊富な私だ。身の潔白さを大事にする今世とは価値観がまるで違う。


これでも、今世の人間に価値観を合わせようと私も頑張っている…と思う。

私の身体は未だ処女だし、キスだって自分からしたことないし、誘ったこともない。…誘ったことはないはずだ。



「……誰か、私に『恋人』とはなんたるかを教えてほしいわ。で、レオ。どうだった?」


「………っ。」


レオは袖で目元をゴシゴシと拭いていた。


「レオ、もしかして…泣いてる?」


「え、師匠を泣かせたんですか!?」



私はルトを無視して、レオの腕をそっと掴み、小さな声で「見えた?」と聞いた。

レオはコクンッと頷き、「ありがとう。」と呟いた。


レオにはちゃんと(つがい)の笑顔が見えたらしい。

もしレオが暴走しても、(つがい)の笑顔を見れば、彼も落ち着くことができるだろう。

これで、レオを止められる有効な方法として、また1つ確保することが出来た。


レオは私の頭をおもむろに掴んだ。泣かせた腹いせだろうか。

そして彼は、私の耳元で言った。



「はぁ…わざとに気を失うって可哀想だろ。少しは相手をしてやれよ。」


「んなっ!?」



完全に腹いせだった。

レオは殿下の部屋に泊まった時のことを言っているのだろう。

あの血の中には、(つがい)の笑顔だけでなく、殿下の情報も入ってしまっていた。


レオは私の頭を突き放し、大きな声で笑う。



「はははっ!俺が直前で揶揄ったから、情報が入っちゃったんだな。」


「レオのせいね!!っ…次は気をつけるわよ。」


「そうしてくれ。夜を見せられるのは俺も嫌だ。」


「もう……ほら!ルトが早くしごいてほしいって見てるわよ!」


「見てませんよ!!」



私がレオの背中を叩くと、ルトが「ひっ!」と怯えた声を上げた。

これはパフォーマンスの悲鳴だ。多分。本心じゃないはずだ。


剣術大会まであと1ヶ月半くらい。

ルトはレオを相手に、かなり戦えるようになった。ただ、ルトはレオとしか実践経験がない。できれば、どこかで命のやりとりが出来るような相手と戦ってほしいところだった。



そんなことを考えていると、サジアが私の下へ走ってきた。

そこまで緊急ではないが、私の判断を仰ぎたいというところだろうか。



「サジア、何かあったの?」


「お嬢様。エルーレレ侯爵家の御子息様が面会を求めております。」


「え?ジョイル君?」


「はい。約束がないのでお断りしましたが、どうしてもと言って聞きません。」



私は基本的に貴族の面会は断っている。

会うのは親しい方達だけ。ジョイル君とはとてもじゃないが親しいとは言い難い。


ただ、ジョイル君がどうしても帰らないと言うので、魔力を広げて、ジョイル君の感情を探ってみた。少し遠いがどこにいるのか知っていれば、そこに魔力を広げればいいので問題ない。



「ジョイル君、相当切羽詰まった状態ね。今にも人が死にそうなくらい……きっと何かあったのね。」



私はサジアにジョイル君を応接室に案内するよう指示し、レオとルトに訓練の中止を伝えた。

私は1度、自室へ戻り、簡単に身だしなみを整える。ルトもその間に着替えてきていたので、私たちは応接室へ行った。


ジョイル君は汗だくで、お世辞にも綺麗な格好とは言えない状態だったが、ダサい格好ではなかった。

彼は私を見るなり、立ち上がって縋ってきた。



「助けてくれ!!」


「……ご自分が無礼な行いをしていることは自覚しておりますか?」



急に助けてくれと言われても、「はい、分かりました。」なんて答えるわけがない。問題を持ち込まれても困るし、とにかく私は秘密主義。順序を大切にしてもらわないと困るのだ。


しかし、ジョイル君は、承知の上だと言って、用件を言った。



「エドナを助けてほしい!どこにもいないんだ!!」


「エドナというのは、リフレット伯爵令嬢のことでしょうか。どこにもいないとはどういうことでしょう。」



知った名前を聞いて、ドキリとする。

エドナ・リフレットは、私がお茶会に誘おうと思っていた令嬢だ。そして、最近婚約破棄になった。

私が王宮に通っている時は、よく話しかけて来ていたが、ここ2週間くらい私は王宮に行っていない。だから、最近の彼女の様子を私は知らなかった。



「エドナが婚約破棄したのは知っているだろ?それで、俺は彼女に婚約を迫ろうとずっと見ていたんだ。でも、彼女は途中からいなくなった!帰り道に来なかったんだ!多分誘拐された!」


「ちょ、少々お待ちを。」



私はジョイル君の言葉を止めて、支離滅裂な情報を整理する。


つまり、ジョイル君はエドナに想いを寄せていて…言い方からするとストーキングをしていたということだ。そして、彼女が通るはずの道に来なかったということ。


彼が汚いのは、ずっと1人で彼女を探していたからなのだろう。エルーレレ侯爵家は爵位は高いが、そこまで力を持っていない家門だ。家門に関係ないことに、他人の力を雇うことも出来なかったのだろう。



「…彼女がいなくなったのはいつでしょうか?」


「4日前だ。リフレット伯爵はまだ何も言ってないが、屋敷がバタバタしている感じがしたから、いなくなったのは間違いない。」



ジョイル君は嘘を言っていない。


婚約破棄した後すぐの行方不明。そして、元婚約者はあのダン・アルアイカだ。彼は暗殺者も雇った経験も女性を強姦した経験もある。

そして、リフレット伯爵家もアルアイカ伯爵家も社交界では地位が高い家だ。家門に傷が付くような事件は、できれば隠したいと思うだろう。


しかし、いなくなってから4日。そろそろ家門と娘の無事を天秤にかけ、騎士団へ捜索依頼が出される頃だ。


私は最悪の想像をする。


騎士団へ捜索依頼が出され、事件が(おおやけ)になった場合、リフレット伯爵令嬢に降りかかった災難は社交界のネタになるだろう。その災難が、女性の尊厳を踏み躙るようなものだったとしても。


私は、ジョイル君に1番気になっていたことを聞いた。



「どうして私に助けを求めるのでしょうか?」


「だって、おま……公女様は…人の心の声が聞こえるって言っただろ?エドナを探せるんじゃないかと思って。」


「……そう。」



人の心の声が聞こえるというのは勿論嘘。それを信じて、彼はここにやって来てしまった。それに、もしダン・アルアイカが関わっているのであれば、この行方不明の要因は私にもあるということだ。


リフレット伯爵令嬢とは友達になりたいと思っている。流石に見て見ぬふりは出来ない。



「……分かりました。リフレット伯爵令嬢の捜索を引き受けましょう。」


「本当か!?」


「ええ。ただし!これ以上貴方は動かないで下さい。そして、エルーレレ侯爵邸からも出ないでください。」


「は?俺も探すぞ!家から出るなってどういうことだ!!」


「説明しません!!彼女を見つけたらすぐに連絡をするので待っていてください。そう…ですね。今日中にエルーレレ侯爵家に連絡を入れます。あと、私に捜索を依頼したということは絶対に誰にも言わないで下さい。」



もし、リフレット伯爵令嬢の状況が悪いのであれば、その状況を知る者は出来るだけ少ない方がいいだろう。それに、騎士団に先越されてもいけない。彼女の名誉と今後のために。


しかし、ジョイル君は納得しなかった。



「なんで!?納得できない!!」


「…面倒臭い。」



私は時間が惜しいため、ジョイル君の意識を奪った。そして、ジョイル君をサジアに預けて、指示を出す。



「ジョイル君汚いからお風呂に入れて綺麗にして、どこかに閉じ込めておいて。……今はお兄様にも知られたくないから、他の使用人には、ジョイル君は帰らせたと説明して。」


「かしこまりました。」



私はルトにレオを呼びに行くように頼み、頭の中でどう動けばいいのか整理した。


嫌な想像をしてしまうが、私はそれを振り払う。

フェレスの時も嫌というほど経験したこと。人の捜索に盗賊退治。その末路の女性たち。


私は、エドナ・リフレットが無事でいますようにと心から願った。



読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク&評価してくださりありがとうございます。

おかげで、執筆ペースを落とさずに頑張れております。

もし、まだブックマーク&評価されていない方がいましたら、ぜひよろしくお願いします。


参考になりますので、面白いと思っていただけた話には「いいね」していただけると助かります。


次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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