2章 お似合い
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
今回ちょっと長いです。
アレクシル殿下目線です。
私は、リアと一緒に目覚めて朝食をとった後、彼女を魔法騎士団へ連れて行った。彼女は今片足なので、抱き上げて連れていく大義名分が出来て楽しかった。
その後、私は執務室で業務をしていた。
執務室には、珍しく私とオズリオの2人しかいなかった。
セジルは相変わらず他業務との仲介業務を。ライルは、リアの義足の様子を確認するため、レオがいるであろう武器屋に行った。
私とオズリオは、昨日、訓練場でダン・アルアイカが起こした件についてまとめ、騎士団の編成を悩んでいた。
本当ならオズリオではなく、統括であるハイノール伯爵の役目なのだが、こういう面倒臭い仕事はオズリオが代わりに行っていた。
「ハイノール伯爵には困るな。まぁ、私もオズリオ相手の方が楽でいいのだが。」
「統括はそういう人だ。たまにお菓子を買いに行かされるし、それに比べたらこの案件はマシな方だ。私は当事者でもあるしな。」
近衛騎士団には団ごとに性格があり、それは大体、団長によって決まる。
近衛騎士なので一般騎士と比べれば、実力も高く、貴族の礼儀作法も学んでいるが、セレリィブルグ王国は、身分よりも実力を重視しているので、どうしても団ごとに差が出てしまっていた。
オズリオが率いる第1団は、特に近衛騎士の顔として、実力も人柄の良さも兼ね備えたエリートを集めていた。
しかし、第2団は、性格は悪くないが平民出身もいて素行の悪い者も多く、第3団は、見た目はいいが、権力が大好きで性格に難がある集団になっていた。
そして、昨日問題を起こしたのは第3団のダン・アルアイカ。他の騎士の証言によれば、彼は陛下の名前も出してリアを愚弄していたので、まだ確定してはいないが「不敬罪」として処理する予定だった。
それが1番重く、対外的にも説明しやすい罪だった。
私たちはどちらともなく、リアの話になる。
「ミリアには、慈悲という言葉はないのだろうな。彼女がフェレスということを考えると、当たり前なのかもしれないが。」
「そう、だな。…それにしてもまさか男の象徴を切り落としているとは…手慣れすぎて全く気付かなかった。」
「やはりミリアがやったのか!ダン本人も、気付いたら切り落とされていたと喚いていた。誰がやったのか、証拠もないし、服に傷もない。迷宮入りということにしたが…ミリアしかいないよな。」
リアは、昨日のやり取りのうちに、こっそりとダンの象徴を切り落としていた。ダンが漏らしたことをリアが声に出した後、すぐに切り落としたらしい。
リアが口元に人差し指を立てたのは、そういう理由だったのだ。
本当にリアは公爵令嬢なのかと疑いたいところだが、見た目の美しさや、国を想う心は、誰よりも公爵令嬢だと言えた。
「あぁ、犯人はリアだ。流石の私もリアを叱ったよ。反省は…していたが、またやるだろうな。」
「ミリアは言っても聞かなそうだな。ライルが頭を抱えていた。」
「頭を抱えるって…どう考えてもライルがリアを育てたんだろう。性格がそっくりじゃないか。」
リアが権力を使わずに相手を制圧するのは、フェレスやミアとして、冒険者を制圧してきたからと本人は言っていた。
しかし、あの兄妹を知っている私やオズリオからすると、ライルの性格がリアに反映したという方がしっくりくる。
リアの教育係はライルだったようだし、リアのあの性格は当然の結果とも言えた。
「ははっ全くだな。でも、ダンには余罪があったとライルが言っていた。それをミリアが知っていたから容赦しなかったんだろうな。」
「ああ、それはリアも言っていたな。リアを殺しに来た暗殺者の中に、ダンと手を組んで女性を強姦していた者がいたらしい。その事件は公にならず、もみ消されている。」
おそらく伯爵家の力で揉み消したのだろう。
昨日、リアを叱っている時に白状したことだった。
彼女は記憶を読むことが出来る。難しい魔法だろうが、暗殺者にはもってこいの魔法だろう。しかし、そんな魔法を使えても、自白ではないので証拠にはならない。事件を立証するには、別で証拠を探さなければならなかった。
「じゃあ、最初からミリアはダンに対して何かしらの機会を伺っていたのか。そういえば、ダンの婚約者のリフレット伯爵令嬢とミリアは友人関係だと言われていたか?」
「実際は、リフレット伯爵令嬢が勝手に話しかけているだけだがな。でも、リアは彼女を気に入っているらしい。目が治ったら彼女をお茶会に誘うつもりのようだ。」
「ははっ。ダンは知らず知らずにミリアを作っていたということか。」
「そういうことだ。」
リアは社交界を面倒臭いと言うが、目が見えないというのが大きな要因なのだろう。大体のことは今でも把握できるらしいが、色は分からない。色が分からないと流行も分からないし楽しめない。楽しくないものに時間を割くのが、とても面倒臭いものというのは私にも理解できた。
オズリオは、顎に手を当てて黙り込む。
「どうした?」
「もし、ミリアが敵だったら…とな。私ならどうするかと考えてしまった。」
「それは…考えたくないが、リアのような存在が他にいないとも言えないからな。」
急に黙り込むから何だと思ったが、オズリオは自分で言った『最悪の敵』という単語を反芻していたらしい。
「ミリアのスピードは脅威だ。昨日のは特に、見えないどころか動いた気配すらなかった。あれで暗殺なんてされたらたまらない。もし他国にミリアのような存在がいれば、国は終わりだ。」
「リアのような存在か。レオも似たようなものなのだろうな。」
「……ミリアもレオも、力を無闇に奮わない性格で良かったな。レオは分からないが、ミリアの攻撃魔法は強力だからな。」
「ああ、そう…だ…………は?…攻撃魔法?」
「ん?」
私はオズリオの言葉に共感しかけるが、身に覚えがないことに気付く。
リアの魔法で知っているものは、修復魔法や移動魔法、あとは記憶消去や読み取り、空間把握、魔力操作……くらいだ。そういえば前に静電気も使っていたが攻撃とは言えない小さなもの。そして、フェレスの戦闘スタイルは白兵戦で魔法ではない。
私は、リアの攻撃魔法を見たことがなかった。
「オズリオは…リアの攻撃魔法を見たことがあるのか!?」
「え?あぁ…以前、レノヴァティオ公爵家に行った時に見せてもらった。もしかして、殿下も知らない魔法だったのか?これは……ミリアに黙っていた方がいいな。」
「もちろん黙っておこう。今後のためにどんな魔法だったのか教えてくれないか?」
「ああ。」
そして、私はオズリオからリアの攻撃魔法がどんなものだったのかを詳細に聞いた。
流石、近衛騎士団長と言ったところで、どんな魔法だったのかの説明がとても分かりやすい。おかげで、私はその攻撃魔法の恐ろしさを知ってしまった。
私は念のためにオズリオに確認する。
「…その光線は、レオの肩を貫いたんだな?」
「ああ、ちょうどこの辺りをこの大きさでな。」
オズリオは自身の肩を使って、リアはレオのどこに光線を当てたのかを再度説明した。
その場所は、レオがリアに噛み付いた位置だ。となると、リアは精密に光線を、見ずに、どこにでも、当てられるということだ。
そして、光線の威力はレオの皮膚を容易に貫くほどで地面に深い穴が空くほど…
「光線の最大威力は分からないんだな?」
「ああ。聞いたが、人1人分と嘘をつかれた。レオが少し反応していたから間違いない。実際はもっと威力を上げることが出来るだろう。魔力量は少ないと聞いたが、疲労も見られなかったし…その後、ポーションを飲まずに欠損を治していた。」
「………護衛騎士のオズルト・アナーキンの治療を簡単そうにしていたと、ライルからは聞いているからそれは知っている。………大丈夫だ。」
リアが眼球や肩の治療をする時は間違いなく魔力を使い切っていた。
でも、リアは、魔法の技術がテロの日から比べて格段に上がったと言っていた。それに、ライルとも話したが、リアの身体が他の人と違い特殊だから修復に多くの魔力が必要なのだろうという結論に至った。レオの欠損も簡単に修復できるということは思った以上にリアの身体は複雑なのだろう。
しかし、問題は光線だ。
光線の難しさや必要となる魔力量が分からない今、考えても仕方ない。ただ、もし光線の攻撃範囲の広さ、もしくは、光線を攻撃中に動かせることが出来るのであれば、リアは街1つ分くらいは消してしまえるのではないかと考えてしまった。
リアのことはかなり詳しくなったと思っていたが、オズリオが言った『最悪の敵』の意味…私はそれを今、実感した。
私の緊張を知ったのか、場を和ませるためにオズリオがこちらを見て笑った。
「…もしミリアが敵になったら、対抗できるのは殿下の魔法くらいだ。…やっぱりお似合いだと思いますよ。」
「は?……………ははっ……そうだな。……私もそう思う。」
オズリオが急に敬語で話してきて驚いた。
しかし、すぐに意図に気付く。思考が良くない方向へ進んでいっていることを察し、空気を変えてくれたのだろう。
私もリアのように器用に魔法を使うことは出来ないが、大きな出力の攻撃魔法なら負けることはないはずだ。大丈夫、リアは街を消すような真似はしない。ただ、そんな真似をしようとする奴に容赦ないだけだ。
きっと、オズリオはこういう気遣いができるから、騎士の憧れとなるのだろう。格好いい男だ。
「そういえば、昨日ミリアを殿下の部屋に泊めたんだって?恋人らしいことはしたのか?」
「ん゛っ。」
そしてわざとに話題を変える。
確かにリアの攻撃魔法を今悩んでも仕方がないが、この話題を選ぶとは。
私はオズリオを睨んだ。
「リアの泊まりについて、最初から聞こうと思っていたのだろう。」
「いや、普通気になるだろう。剣の打ち合いの時は周りに人がいることも多いからな。それでどうなんだ?」
「……お前が思っていることはしていない。普通に会話した後、リアが気を失うまで目の治療をしたせいで、何も出来なかった。」
「それは…ミリアは分かってやったんだろうな。でも、目の前で気を失えるくらいには信頼関係があるということか。」
「…そうだといいのだが。」
実は、リアが気を失った後、キスくらいはこっそりしている。もちろん軽く触れるくらいだが、早く深いキスがしたいと、柔らかい肌に触れたいと、余計に思ってしまうから手に負えない。
こんなことを考えているとリアに知られれば、今ある信頼関係もなくなるのだろう。リアも薄々気付いているかもしれないが、見て見ぬ振りをしてくれている気がする。
もしくは、試されている。
「朝起きた時はどうだったんだ?部屋に泊めたならベッドは1つしかないだろう?」
「それが……」
「それが?」
「…リアは瞼を開かないから起きたかどうか分かりにくい。それはリア自身も同じのようで、寝ぼけている時は、手と匂いで判断するんだ。」
オズリオは「どういうことだ?」という顔をしたが、すぐさま状況を理解できたらしい。同情の視線を送ってきた。
「…………それは……よく我慢したな。」
「…だろう?」
私は元々体調が悪かったおかげで、今はそこまで睡眠を取らなくてもある程度は平気だった。だから、リアといる時は、リアの寝顔を堪能しているが、起きた時はそんな余裕は一切ない。
リアは寝ぼけて私に擦り寄って匂いを嗅いでくるし、触れてくる。極め付けに、匂いを嗅いで安心したのか、今朝はそのまま二度寝した。目が見えないというのは可哀想だと思うが、こればかりは……と思わなくもなかった。
リアは、私にぴったりとくっついてスヤスヤと眠るあたり、1人で眠るよりはぬいぐるみ等と眠る方が好きなのかもしれない。
もしかしたら、レオとそんな風に寝たことがあるのかもしれないと、もしくは目の治療中に私がずっと抱き締めているからかもしれないとも考える。出来れば後者であってほしいと願わずにはいられなかった。
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