2章 レオの不安
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
「ルト、使用人を貸してあげるから、今すぐ公爵邸へ荷物を持ってきなさい。」
「は、はい!」
オズルトは、公爵家という場所にまだ緊張しているのか、恭しく返事をして、引越しの準備のために帰って行った。
正直、オズリオ様とオズルトの名前を間違えそうになってしまう。公爵令嬢として絶対に名前を間違えることはしないのだが、オズルトのことは、今後「ルト」と呼ぶことにした。
ルトが、サジアと数名の使用人を連れて出て行ったので、オズリオ様とレオと私の3名が公爵邸に残った。
オズリオ様はルトに遠慮していたようで、ここぞとばかりに話す。
「私は、ミリアがフェレスだと初めて知ったのだけど、良かったのかな?」
「何をおっしゃっているのですか?明言はしておりませんでしたが、オズリオ様は随分前から気付いていたでしょう?問題ありませんよ。」
「ははっバレていたか。」
オズリオ様は、最初から私の能力に気付いていたし、今更フェレスのことを隠しても意味がない。
正直、お兄様の次に頼れる方だと思っている。なんたって彼には恋愛相談もしていたのだから。
「ミリア、殿下から聞いたのだけど、恋人になったんだって?良かったのかい?」
「ぅえ!?」
「え?ミリアそうなのか?」
恋愛相談もしていたなとちょうど思い出していた時に、殿下の話をされたので必要以上に驚いてしまった。もしかして、顔に出ていたのだろうか。オズリオ様は本当に聡い方だ。感情が読める私より心が読めるのではないだろうか。レオには私から言おうと思っていたが、オズリオ様によって先に言われてしまった。
「恋人になったといっても以前と関係は変わりませんけどね。…きっかけはレオなんですよ。」
「なるほど、もう殿下とレオは面識があるんだな。」
「あぁ…あの後、くっついたのか。」
殿下とオズリオ様は割と仲が良い。だから、私のこともよく話すのだろう。
殿下から何を聞いたのかは知らないが、碌でもないことというのはオズリオ様の表情で分かった。苦笑いのような同情のような顔で笑っている。
対してレオは、表情を暗くした。
私が殿下と恋人になったことよりも、私を傷付けたことを思い出したようだった。彼は思ったよりもあの夜のことを気にしているらしい。これは、何とかした方がいいだろう。私は頭を悩ませ、レオと私らしい方法を思いついた。
私はオズリオ様とレオを連れて、公爵邸の訓練場に来た。
今日もオウルに無理を言って人払いをしてもらう。
「オウル。そういえば、アーマードグリズリーを倒した時の魔法について気になっていたわよね?」
「あの一瞬で首を落としたやつですね!見せてくれるんですか!?」
「ええ、見せてあげるわ。よーく見てて。」
私がオウルに話しかけている間、オズリオ様とレオは私の後ろで、何をする気だろうと首を傾げていた。
心が痛まないと言われれば嘘だが、私の予想では喜ばれる筈だ。
私はノーモーションで、魔力を使って太陽光を収束した。一瞬だけ空から地面に向かって一筋の光が現れる。
詠唱もなく、音もない、そして時間もかからない。
私はレオの肩にその光を当てた。
バキッ
「…っ………!!」
「お、おい!!!」
魔力操作の練度が上がった私の光線はドラゴンの鱗を難なく突き破り、レオの肩を貫く。私が噛まれたところと全く同じ位置に。
レオは急に肩が抉られた衝撃で倒れ、オズリオ様はレオを助け起こそうとして、レオが魔法で私に攻撃されたことを知った。オウルは信じられないというように、黙ってしまう。
オズリオ様は「どういうことだっ!」と私に言った。味方が急に攻撃したので、当たり前の反応だ。
しかし、私は無視して、レオに話しかける。
「レオ、この間の仕返しよ?これで安心したかしら?私は貴方の側にいる。」
「あ、はは………俺は……ミリアを、殺してしまうかと思ったんだ。」
「知っているわ。でも大丈夫よ。私もレオを殺せるわ。」
レオはオズリオ様の手を払い除け、私に正面から抱きついて力強く抱きしめた。やっぱりいつも以上に距離が近い。それとも、私が倒れてしまった事実にかなり怯えていたのかもしれない。あの夜、殿下を連れてきてしまうくらいに。
私はオズリオ様にウインクした。
オズリオ様はレオと私の間に何かあったと理解したようで、ほっとした表情を見せる。
私は、レオの頭をあやすように撫でた。
「不安にさせてしまってごめんなさい。」
「………うん。」
「私は死なないわ。1人にしないから。」
「…うん。ずっと……ずっと一緒だ。」
「ふふっ。殿下が聞いたら嫉妬しそうなセリフね。……もちろんよ。」
私はレオのサンドバッグだ。しかし、今回レオに噛み付かれて私は倒れてしまった。レオは不安になっただろう。頼みの綱である私が役に立たないかもしれないと。私を簡単に殺してしまえると。
だから私は、レオに強さを示すために、わざと噛み付かれた位置と全く同じところに光線を当てた。そして、私もレオをいつでも殺せると暗示した。
友達の肩に穴を開けるなんて普通じゃあり得ない。しかし、私たちの関係はこれで正解なのだ。
レオは私をきつく抱きしめながら「ありがとう」と何度も言った。
私はレオを離して、オズリオ様に向き直った。
「……黙っていてくださいね?」
「それは魔法のこと?それとも浮気のことかな?」
「魔法のことですよ。……え?これって浮気になるのでしょうか?」
「俺とミリアは大体こんな感じだぞ。」
オズリオ様はオウルをバッと見て真偽を問う。そして、オウルは黙ってゆっくり頷いた。
「……なるほど。ライルが殿下とレオを会わせないようにしてる理由が分かった。殿下は苦労するな。」
「……………。」
(そういえば…確かに距離が近いと思うけれど、違和感がない。もしかして…私の意識も、ドラゴンに…魔獣に近くなっているのかも。)
「…ミリア?」
「あ…オズリオ様。申し訳ございません。考え事をしていました。」
「…ならいいが。恋愛観は人によって違うから、ちゃんと殿下と話し合うようにな。」
「はは……気を付けますね。」
「それにしても、さっきの魔法はすごかったな。詠唱もないし、気配もない。地面に穴が空いているところを見ると、威力も凄まじい。これはちょっと防げないな。」
オウルとオズリオ様は分からなかっただろうが、この光線は的確に攻撃位置を捕捉することができる。もし、この攻撃を殿下が見ていたらもっと驚いたことだろう。私の肩と傷と全く同じ位置なのだから。
そして、この魔法の恐ろしいところは、使用する魔力を増やして、光線を大きくすれば、容易に攻撃範囲を広げることが出来るという点だった。ギラの魔力を使えば、王都を覆うことができる。
私は、「これも秘密です。」と言って、レオの肩を修復した。
欠損部分の修復魔法は簡単に出来ないと、ジョイル君を利用して世間に公表している。
しかし、それは嘘で、私の特殊な身体以外は、魔力さえあれば欠損部分の修復魔法は今までと同じように出来た。それは人間もドラゴンも例外ではない。ただただ、色々混ざった自分の身体の修復が難しいだけだ。
オズリオ様は心配するような目で私を見た。
「ミリアは万能すぎるな。強大な力は敵を作りやすいし、利用されやすい。殿下やライルが上手くやるだろうが、気を付けろよ?」
「ご心配ありがとうございます。それで以前の恋愛相談の御礼にちょっとした魔法をお伝えしようかと思ったのですが、どうでしょうか?」
「おお!覚えていたんだな。嬉しいよ。実は楽しみにしていたんだ。」
そうして、私はオズリオ様の時間が許す限り、訓練場で魔法のレクチャーをした。
レオは、メイドに甘いお菓子をねだりに行ったが、オウルはオズリオ様と一緒に真剣に魔法の練習をした。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&評価していただきありがとうございます。
おかげさまで、執筆ペースを落とさずに頑張れています。
もし、まだブックマーク&評価されてない方がいましたら、ぜひよろしくお願いします。
参考になりますので、面白いと思っていただいた話には「いいね」をお願いします。
やっと、書きたかった話を消化できそうなくらいに進んできました。
次話以降も読んでいただけると嬉しいです。




