2章 勧誘失敗
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
更新遅くなってすみません。
私は、毎日がルーティン化していた。
午前中は、公爵邸かエルのところで魔力操作の練習をし、午後から王宮へ行って、魔法騎士団を訪問したり、オズルトの訓練時間に合わせて護衛騎士の勧誘をしていた。
オズルトは、護衛騎士についてなかなか首を縦に振らず、私も苦戦していた。彼の実家や上司に圧力をかけて護衛騎士にするという方法もできたが、私は彼に望んで護衛騎士になって欲しかったので、そうしなかった。
ただ、私の王宮通いが貴族の間で広まり、様々な思惑を持った人間が私に話しかけてくるようになってしまった。
そして今、私は御令嬢達に行き先を阻まれていた。
「貴女、どうしてお茶会に参加しないのかしら?皆に失礼ではなくて?」
御令嬢達を代表して話しかけてきたのは、リフレット伯爵家の御令嬢だった。彼女が社交界でそれなりに発言力を持った御令嬢なのだろう。
彼女の言い分は、こうだった。
1つ、王宮に通えるなら、お茶会にも参加できるはずだということ。
2つ、陛下や殿下に媚を売るのに必死で、貴族との交流を疎かにしているのではないかということ。
3つ、王族に気に入られているからと好き勝手するな、まずは有力な貴族(私)に挨拶をするのが順序というものだということ。
…だった。
確かに、彼女は間違っていない。
社交界で発言力を得るための方法でいうと、彼女の言った方法が正攻法なら、今の私は邪法なのだろう。
しかし、だからといって私は、自分の行動を改めようとは思わなかった。
「申し訳ございません。でも、お茶会に参加したいとは思えないので遠慮させていただきます。不名誉な噂には慣れておりますので、勝手にどうぞ。」
「な!?」
リフレット伯爵令嬢が言葉につまる。
言い返されるだけで言葉に詰まるなんて、存外可愛い人だ。そして、魔力を見る限り焦っている。もしかすると、私をお茶会に連れて来いと誰かに命令されているのだろうか。
彼女は動揺するも、何とか言い返してきた。
「何故、お茶会に参加したくないのかしら?社交パーティには参加されましたわよね?私たちを馬鹿にしているの?」
「馬鹿にしているわけではありませんよ。では、お聞きしますが、お茶会ではどのような話をするのでしょうか?」
「え?それは…最近の流行や噂、好みについて意見を言い合うのよ。」
「…お忘れでしょうが、私は目が見えないのです。流行や好みが分かるわけありません。」
「あ……」
そう。皆、よく忘れているが、私は目が見えない上、手足は義足なのだ。勿論、気を遣われたいわけではないので、そこまで気にしてもらわなくていいのだが、流石にファッションセンスを問われる空間には行きたくない。
ただ、リフレット伯爵令嬢の魔力を見ると、本当に私に申し訳ないと思ったようだ。感情は素直。しかし、表情と言葉は強気だった。
「そうね!私が間違っていたわ。貴女をお茶会に招待しても、私の時間が無駄になるだけ。それじゃあ、勝手にしてちょうだい。」
「ええ、そうさせていただきます。」
「…皆さん、行きますわよ!レノヴァティオ公爵令嬢は、何を言われても良いそうですから!」
「ええ。」
「そうですわね。」
「…はい。」
リフレット伯爵令嬢が踵を返して去っていく。後ろにいた御令嬢達は、私を軽蔑したり、心配したりとそれぞれだったが、皆、リフレット伯爵令嬢の後を追って去って行った。
彼女は、本心を言葉に出来ない性質なのだろう。
ただ、間違ったことを言っているわけではないし、綺麗な容姿に強気な口調、社交界に影響力を持つ身分と財力によって、彼女に従う令嬢は多いのだろうと思った。
王宮にいると、感情が動かず何を考えているのか分からない人、表面上は私を讃えているが、腹の中では憎しみでいっぱいな人等がいる。リフレット伯爵令嬢はかなり可愛らしい部類だった。
私と令嬢達の様子をこっそり見ていた、未来の護衛騎士が後ろから近付いてきた。
私は訓練場に向かう途中で令嬢達に捕まっていたことを思い出す。
「こんにちは。もしかして、私を迎えに来てくれたのかしら?オズルト。」
「いつもの時間に来られないので気になって……いつから気付いてたのでしょうか。」
「最初からよ。私は目が見えないけれど、誰がどこにいるかくらいは分かるのよ。たとえ障害物があってもね。」
「それ…私に言ってもいいのですか?」
「勿論よ。だって、貴方は私の護衛騎士になるのだから、知る必要があるわ。」
オズルトは気まずそうに頭を掻いた。
「…何度言われても、護衛騎士になるつもりはありません。……もう迷惑です。」
「そう?それにしては私と話せて嬉しいみたいだけれど。」
私が訓練場に足を運ぶにつれ、彼は少しずつ遠慮のない物言いになってきた。仲良くなってきた証拠だろう。
そして、私と話す時、彼はいつも内心喜んでいる。
「…っ!喜んでいませんっ!!」
「ふふっ嘘ね。私は相手の感情が分かるの。それに、嘘をついているのかどうかもね。」
「っ!!」
彼は照れたようで、手の甲で顔を隠して目を逸らした。
どこぞのジョイル君とは、また違うタイプでからかいがいのある男性だった。
「……逆に…公女様は何が出来ないのですか…」
テロの日、私はオズルトの前で修復魔法を使った上、レギイラ侯爵の記憶を読み取った。私が魔法で色々できることを彼は知っている。そして彼はそれを誰にも言わなかった。だからこそ彼がどうしても欲しいのだ。
「そうね。…目が見えないから色が分からないわ。ふふっ、オズルトが照れてくれていることは分かるけれど、その顔が羞恥に赤く染まっているのかどうかは分からないのよ。とても残念だわ。」
「……目が見えなくて助かりましたっ!」
「ふふふっ。」
オズルトと話すのはとても楽しい。
彼を護衛騎士にしたい理由は別にあるけれど、一緒にいて居心地が良いと感じられるのならそれだけで十分、彼を選んで良かったと思えた。
しかし、会話を楽しんでいる場合じゃない。私は彼を勧誘しに来たのだから。
「オズルト。私はね、今も抗っているの。……貴方もでしょう?」
「………!」
「実力がないから護衛騎士を受けられない?地位がないから?他に相応しい人がいる?そんなの関係ないわ。」
「…関係ありますよ。」
「いいえ、関係ないわ。だって、実力がなければ実力をつければいい。地位がないならつくればいい。相応しい人?この私が言っているのよ?貴方が1番相応しいと。」
「そんな簡単な話じゃ……」
「簡単な話よ。それに、実力・地位・名誉って、貴方がずっと欲してやまないものじゃないかしら?」
折角、オズルトが訓練場から離れているのならと、私はここぞとばかりに勧誘する。
訓練場だと、他の騎士の目もあるので当たり障りのないことしか言えなかった。このチャンスを逃すのは勿体ない。
「……確かに、私は実力が欲しかった。あの時、公女様が頑張ろうと言ってくれたから今まで諦めず頑張ってこれたんです。でも、これ以上どう頑張れというのですか。護衛騎士になったところで、急に実力が上がるわけじゃない。寧ろ、今以上に馬鹿にされる未来しか見えません。」
「…そう。貴方に必要なのは自信なのね。そして、自信をつけるためには実力がいるということね。」
「……分かったような口をきかないでください。」
「それ、あの時も言われたわね。でも、貴方は私の話を信じて今まで頑張ってきたのでしょう?なら、今の私のことも信じて欲しいわ。」
「……。」
「私の護衛騎士になったら、まず実力をつけてもらうわ。「死にたい」って思えるほど、きつく鍛えてあげる。でも、絶対に死なせないわ。寧ろ、傷一つ残らないようにするわ。これで信じられるでしょう?」
『絶対に死なせない』私はそれをオズルトの前で1度体現している。つまり、私も命をかけて彼を鍛えるという意味だ。
これ以上ない勧誘だと思ったが、それでも彼は首を縦に振らなかった。しかし、彼の心には響いたようだ。
「……考えさせてください。」
とだけ言った。
私は訓練場には行かず、魔法騎士団と殿下の執務室に行って、今日はもう帰ることを伝えた。
帰りに、近衛騎士第一団の方々に会った時に、「今日も振られたんですね。」と声をかけられたのが地味に辛かった。セイルズ様との追いかけっこの一件で、第一団での私のイメージは「妹」となってしまったみたいだ。
その夜、早めの就寝にしようと思い、私はメイドを下げてベッドに入った。
身体に魔力が宿り、レオが現れる。
レオは番に会いに行くと言って、ここ最近ずっと姿を消していた。思ったよりも戻りが早い。
私は、彼の泣き顔を初めてみた。
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あ、ついに100話でしたね。




