1章 なかなか友達に会えない
本日1話投稿です。
お兄様が訪ねてきて数日後、青の日がやってきた。
この世界は、前世と同じで1週間=7日である。曜日は色で分けられており、
月曜日=紫
火曜日=赤
水曜日=青
木曜日=緑
金曜日=黄
土曜日=白
日曜日=黒
となっている。
今日は青の日で、お兄様の言うとおりなら、殿下がやってくるはずだ。できれば関わりたくないし、まだ体調もそこまで酷くなっていないだろうから、今日はギラに会いに行くという口実を作り、殿下から逃げることにした。最近はほとんど会いに行っていない上、聞きたいこともいくつかあったため、早めに出発する。ギラが住んでいる所は山の奥であり、さらに魔法で隠蔽されている。本人曰く、いつでも会いにきてもいいとのことなので、お言葉に甘えて、朝日が顔を出す前に出発することにした。この時間帯であれば、人に会うことはほとんどない。しかし、念のため、ミアの格好で身支度をした。そしてさらに念のため、外に出る前、玄関の向こう側に人がいないか確認する。流石に気配で察知することは無理だが、人は皆、魔力を持っているので、魔力反応がないか確認する。
「え…。」
まず人がいるとは思わなかった。しかし、見知った魔力の反応がある。扉のすぐ隣に立っているようだ。私が外に出るのを待っているのだろう。流石にこのままでは放っておけないと思い、扉を開ける。
「おはよう。早いんだね。」
そこには、前回と同じように黒髪で貴族の格好をした殿下がいた。
「…アシル様、おはようございます。早すぎませんか?」
「どうしても会いたくてね。今日はお出かけだったのかな?」
今の時間はだいたい朝の4:00だ。冬が近いこともあり、まだ周りは薄暗い。よく見ると殿下の手先や鼻先が少し赤くなっている。いったいいつから待っていたのだろう。流石にこの状態の殿下を放って、出かけることは出来なかった。
「いえ。特に予定していたわけではないので大丈夫です。身体が冷えてます。とりあえず中に入ってください。」
「部屋に入ってもいいのかい?」
「すでに一度アシル様は部屋に入っていますよ。それに、今の時間、どこも空いているお店はないですね。」
「それもそうだね。ではお邪魔させてもらうよ。」
部屋に殿下を招き、来客用の椅子に座るよう案内する。この部屋に入ったことのある人は多く、家出してきた子どもや怪我人を受け入れることもあった。それにしても、殿下とは前回、子どもたちと商売をしている時に仲良くなったが、こんなに遠慮のない方だっただろうか。言葉遣いはともかく、態度に遠慮がなくなっている気がする。とりあえず、冷えているだろうし、紅茶の準備をする。そういえば殿下は飲食についてどこまで気をつけているのだろう。一応一声かけることにした。
「飲み物は紅茶でいいですか?」
「あぁ、ありがとう。いただくよ。」
飲んでいただけるようだ。毒味はいいのだろうかと思いながらも紅茶を準備する。
「なぜこんな朝早い時間にいるのですか?訪問するには流石に常識的な時間ではないですよね?」
相手は殿下だが、訪問された側の意見としてはこれくらい言っても大丈夫だろうと思い咎める。今後、こんな時間に訪問されても困ってしまうし、ここで釘を刺さないといけない気がした。女のカンというやつだろうか。しかし、自分も今からギラに会いに行こうとしていたので、人のことを言えないが、これはこれ、それはそれだ。
「どうしても貴女に会いたくてね。朝から玄関の前で待っていればいつか出てきてくれるだろう?」
「この部屋は1週間程度不在にすることもあります。必ずしも私がいるというわけではないので、今後は控えてください。」
「じゃあ今日は運がいいね。出かける予定だった貴女を捕まえることもできたし。次からはちゃんと会いにくる日をあらかじめ伝えるよ。」
(…やってしまったわ。殿下は性格悪いわね。)
朝早くに訪問したのは、私を確実に引き止めるためと、今後は約束をしてから訪問するように仕向けるためだったようだ。流石殿下というべきだろうか。貴族と渡り合うために話題の誘導方法など色々と苦労されているのだろう。その能力をこんなところで発揮してほしくはなかったが…。とりあえず準備した紅茶を手渡す。
「…分かりました。ちなみにいつから待っていたんですか?昨日、寝ていないなんて言いませんよね?」
「貴女が出てくる少し前かな。睡眠も取れているから気にしなくていいよ。」
(嘘ね。魔力が少し反応したわ。)
基本的に外から魔力を見ると喜怒哀楽くらいしか分からないが殿下の魔力は直接操作したことがあるから他の人より感情を読み取りやすい。それでも恋愛感情なんて喜びや悲しみが複雑になるので分からないけれど、嘘をついたかどうかは分かる。
「嘘ですね。それに体調も良くないですよね。少しは本音で話してください。これでは周りが苦労してしまいます。」
殿下は驚いたという表情をしている。
「貴女は私についてとても詳しいようだ。体調が良くなったのもやはり貴女のおかげだったようだね。」
「それを確かめるために来られたんですよね。ですが、一時的な処置です。また体調が悪くなってきたら来てください。」
これで用は無くなったはずと遠回しに告げる。でも次からは約束してから来ると言っているのだから、これも無駄な足掻きなのだろう。
「体調のことは確かに確認したいことだったけれど、1番の目的は貴女と距離を縮めることだよ。」
殿下は椅子に座って紅茶を飲んでいたが、立ち上がって私の目の前に来た。殿下は手を私の頬に触れない位置でとめる。
(物理的に距離を縮めてきたわ…)
私は少しずつ後ろに下り、ついに壁まで追いやられてしまった。殿下の手が私の頬に触れる。
「…とても素敵なそばかすだけど、これは化粧だよね。本当の貴女を見せて欲しいな。」
(なっ…なんで、バレたのかしら?)
「どうして化粧だと思ったんですか?」
「この前は分からなかったけどね。でも今日は分かった。前回とそばかすの位置が違うからね。」
そばかすの一つ一つの位置まで把握している人がこの世にいるだろうか。そんな人がいたら紛れもない変態だ。
「まさかそばかすの位置まで把握している人がいるとは思いませんでした。例え家族であってもそこまで把握している人はいませんよ。」
「私は貴女のことなら何でも知りたいし、貴女にとっての唯一になりたいからね。これくらい普通だよ。」
殿下は右手で私の頬を包む。そして…魔法を発動した。
「洗浄」
魔法によってミアの仮面が剥がされてしまった。
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