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1章 ここから人生設計が狂い始める1

初投稿です。


1章完結に合わせて編集しました。(2021/12/27)

内容は変わっていません。


1章最終話は2日後投稿予定です。

「先生!またね!」

「さようなら〜」


元気いっぱいに挨拶をして、子どもたちが家に帰っていく。


「気をつけて帰るんだよー!」


子どもたちから先生と呼ばれている少女、長い黒髪を緩く三つ編みで編んでおり、瞳は黒褐色、顔は整っていて色白だが、大きめの眼鏡とそばかすと彼女の笑顔が親しみやすさを醸し出している。

シンプルな水色のワンピースで実際の年齢よりも大人びて見えるが、先生と呼ばれるには少し違和感を覚える若さだ。


しかし、この街ではありふれた日常になっていた。



(私は今年17歳。本来なら、お父様が選んだ家庭教師に、私が生徒。それが、正しい貴族令嬢の在り方なのでしょうね。)



それでも、笑顔で帰っていく子どもたちを見ると、私の選択は間違っていなかったかもしれないと安心する。



この国、セレリィブルグ王国は他国と比べて土地は小さいが、豊かな国で、軍事力も強い。ただ、海に隣接しておらず、外交は他国に比べて遅れをとっていた。

しかし、政策は貴族だけではなく、平民のためにも考えられて作られることが多く、移住するには人気の国であった。


そんな国でも貧富の差はあり、十分に教育が受けられないまま働きにいかなければならない子どもたちが少なくなかった。


そんな子どもたちを助けたいと思って、今に至るというわけではない。

少しでも人のために、人を助けるために行動したいと思った結果、私が先生と呼ばれるようになった所以だった。



「さて!今日は月に1回の家に帰る日、ささっと街を見回って準備しないとね!」



私が街を見てまわるのは、1日の終わりの習慣になっていた。今日1日で、何か変わったことがないか、困っている人はいないか、役に立てることはないか、街全体や個人に関わらず確認している。


それに…



「ミアちゃん!この前はありがとう。これ、持っていきな!」


「いいの!?良い色のオレね。とっても美味しそう!私こそいつもありがとう!」

(売れ残りが貰えたり、世間話で色んなことを教えてもらえるからお得なのよね)



オレというのは前世でいうオレンジのような果物だった。私はそれを袋いっぱいにもらう。


私は、今日もいい1日だったと振り返りながらも、まだ楽しみな予定が待っていることを嬉しく思いながら、毎日の習慣をこなしていた。




「おばちゃんの世間話が思ったより長くて遅くなったわ。…一旦部屋に戻って家に帰って…早くしないとお父様に怒られてしまうわね。」



1人暮らしをしている私の心配を常にしているお父様。

少しでも時間に遅れれば、お怒りになるだろう。それが愛情の裏返しだと私は分かっている。胸がくすぐったい。


そんな私を阻むかのように、周りは暗くなり、雨が降ってきた。



(私のわがままで1人暮らしをさせてもらっているし、家族にも会いたい。月1回は顔を見せるという約束事は守らないと…)



私は人に不信感を与えない速度で走った。魔法で姿を消して、思い切り急ぎたいが、雨のせいでそれは叶わない。身体に当たる雫も全て誤魔化すとなると大量の魔力が必要となる。



ガタッ



(ん?何か音が聞こえたような…)



雨が降っているからほとんど音は聞こえない。でも、確かに雨ではない音が聞こえた。


音がした路地裏に目をやる。けれど、暗くて全然見えない。周りに人は、ほとんどおらず、雨もどんどん強くなっている。



(普通ならわざわざ確認に行かないのでしょう。でも…何かあったらではすまないことは、前世の私が証明している…)



本当は早く部屋に戻りたいが、確認しないと、後悔する気がした。非常事態を防ぐための毎日の見回りなのだから。


周りに気をつけながら少しずつ路地裏に向かう。空は暗く、雨も降っている状態だから尚更だ。


雨のせいで魔力を上手く操れないので、いつも以上に慎重に進む。対人戦には自信があるが、急に誰かに襲われる可能性も考慮すべきだ。



「………あ。」

(周りに人はいないようね…目の前の人を除けば…)



暗くて分かりにくいが、目の前にはうつ伏せに倒れている男性がいた。よく見ないとゴミや角材などと間違えてしまいそうだ。

しかも、男性は腰のあたりから大量の血を流している。少し驚いたが、こんなことで慌てる私ではない。



(…お父様に欠席の連絡をしないと…はぁ、なんて言い訳をしようかしら?)



月に1度のお食事会。お父様が私の様子を確認するための日。きっと、とても楽しみにしてくれていただろう。



(怒られることは確かね…それか1人暮らしを辞めさせられるかも…)



急に欠席することはほとんどないけれど、事前に連絡して欠席することはよくあること。日を改めて伺うと連絡すればいいはずだ。



「人命救助だもの。きっと許してくれるはず。」



私は、男性を抱えて大量の魔力を消費する覚悟をする。今は、魔力の消費よりも、時間短縮が優先される。



この時の判断を後悔したことはない。



しかし、この出来事が、私の人生設計を着実に狂わせていくとは、思ってもみなかった。

読んでいただきありがとうございます。

次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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