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亡き王女に捧げる滅亡の物語  作者: 文月 桐秋
王宮編
13/16

13

 決意を新たにした朝凪は、弧星に教えを請うたが、

「武術を習うなら、十束に頼むといいですよ」

 と、言った。まあ、弧星は近衛騎士団の副団長という立場である。近衛騎士全体の統括の一部を担う、本来ものすごく忙しい人だ。

 なので、朝凪は素直にうなずく。


「礼儀作法については私が面倒を見ますから。あの二人はそれに関しては当てになりません・・・・・・」

 弧星はわかるでしょう? という顔で朝凪を見る。

 確かに、自分はできても他人に教えるのには向いてないように思って、朝凪は申し訳なさそうに頷いた。



 その後、武術は十束が教えてくれるようになった。

 そこで判明したのは、弧星が忙しいというより、十束が様々な武器を扱えることが理由だったらしい。


「朝凪、長剣より短剣の方が得意でしょ?」

「そうですね。ずっと使ってたのは短剣なので」

「だと思った。でも、騎士は基本長剣ぶら下げてるから、それをちゃんと扱えるようにならないとね」

「よろしくお願いします」

 朝凪はしっかり頭を下げる。


「・・・・・・それって、隊長の仕込み? たった一ケ月そこらで、そこまで身に着くもの? そういう、言葉遣いとか」

 

 沈黙したまま、朝凪は無意識に手の甲をなでる。

 それを見た十束は、何かを悟ったらしい。いつかの緒都と同じ反応だ。


「隊長、怖い」

 いや、緒都より十束の方が若干恐怖を感じている。


「よし、やろう」

 やや重たくなってしまった空気に耐えられなくなった十束は、木剣を構える。


「好きに打ち込んできて」

「はい」

 朝凪も木剣を構える。が、十束には隙が無い。そのまま動けずにいると、十束がにやにやしながら煽る。


「ほら、若者は真っ向から突っ込んでくるものだよ」

「・・・・・・」

 確かに、このままでは訓練にならない。

 ぐっ、と木剣を握り直し、十束に上段から打ち込む。


 カンッ


 いとも簡単に止められるが、朝凪は構わず、横から、上から、何度も打ち込む。


「だめだめ、重さが全然足りない」

 そう言いながら、十束は受けていた木剣を翻し、朝凪に打ち込んで来る。


 ガン


 一度の打ち込みで朝凪の腕はしびれ、木剣を取り落とす。その首筋にピタリ、と十束の木剣が当てられる。


「僕、隊長の綺麗な剣術も好きだけど、あれじゃ実践ではあんまり役に立たないからねえ。はい、剣拾って、もう一回」

 十束は、厳しく、意外と真面目に教えてくれた。


そして、息が上がってしまった朝凪を休ませている時に、真剣な顔で言った。

「朝凪、僕の事、師匠と呼んでいいよ。さあ!」

 朝凪は一瞬固まる。


「・・・・・・師匠」

 躊躇いながらも、素直に師匠、と口にした朝凪に、十束は感動を覚えたらしい。


「君、いい子だね!」

 更に、頭も撫でられた。


「ところで、朝凪は何で姫様の暗殺やめたの?」

 朝凪は、十束の顔を凝視する。

 この人はいつも唐突で、他人なら聞き辛いことも平気で聞いてくる。


「元々、抜ける事を考えていたので。悪くない話だと思ったからです」

「でもさ、君、東方の出でしょ? 君の一族を苦しめた国の王族だよ? 姫様」

「物心ついた時には蝙蝠にいたので、自分の出の事はよくわかりません。あ」

「?」

「あの時、思想による暗殺なら止められないと、姫様が言っていた事と関係ありますか? それ」

「わー、姫様。殺されそうって時によくそんなこと言うなあ。ま、でも君のその容姿をみたら大抵の連花の貴族は身構えるよね」

「そうなんですか?」

「黒髪、紺青の目。ばっちり、東方、虎狼(ころう)族の血がよく出てる」

 正直、そう言われたところで朝凪は故郷を知らない。


「よかったの? 言われるがままに騎士見習いになっちゃて」

「いいんです。姫様の為にやることは決まったので」

 真っ直ぐ前を向く朝凪を、十束は憐れみを込めた目で見つめる。

 その視線に気づいた朝凪は、十束を不思議そうな顔で見返す。


「いや、朝凪の中で姫様は聖女か何かに見えてるのかな、って。あの人、結構残酷だよ? 蝙蝠壊滅させる命令出したの姫様だし」

 十束は意地悪く言う。風花は、組織の構成員を生かして捕らえろとは一切命じなかった。


「・・・・・・確かに、逃げ場がなくなったな、とは思いましたけど」

 朝凪の返答に十束は意外そうな顔をする。


「朝凪って、じつは結構賢い子? それだけ自分で考えられるのに大人しく組織で暗殺者やってたの?」

「だから、抜ける事は考えてましたよ」

 さすがに踏み込まれすぎて、朝凪が十束から引き始める。


「わあ、ごめんごめん。もう何も聞かない。次、短剣の訓練しよう!」

 慌てて十束は朝凪を引き留め、訓練の再開を告げる。


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