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亡き王女に捧げる滅亡の物語  作者: 文月 桐秋
王宮編
12/16

12

 久々に護衛という本来の役目に戻った伯千は、主である風花と、まったりお茶の時間を満喫していた。

「それで? 十束と何かあったの?」

 首をかしげて、風花が問いかける。


「それはもう、色々です。まず、姫様からのご指示が書かれた指令書を燃やしたらそれはもう凄い剣幕で詰め寄られた挙句、剣をむけられ・・・・・・」


「・・・・・・後で十束に手紙を書いてあげればいいのかな、それは」


「涙を流して喜びますよ」

 つい先程、伯千が護衛として部屋に残ることになった際の十束を思い浮かべる。


『なんで伯千なのですか、姫様! 僕も護衛します!』

『だめです、十束。その前にやることがあるでしょう』

 弧星が十束をひっつかんで部屋の外へ連れ出す。

 まあ、あんなに血の匂いが残っている状態で姫様のお側に置いておくわけにはいかないだろう。

 もっとも、姫様が明日は十束にお願いする、と言ったらあっさりご機嫌で部屋を出て行ったが。


「あと、向かってきた相手を全員殺してしまったでしょう? あっちには元締めに近い構成員がいたんだから残しておいてもらって色々聞きだそうと思っていたのに」

 顔をしかめて、現場の惨状を思い出しているようだ。


「十束もさすがに余裕がなかっただけではないの?」

「ケガひとつしていなかったんですよ。余裕だったに決まっています」


「まあ、確かに一人くらい残してくれるとありがたかったけれど、生きていたとして、欲しい情報が手に入るとも思えないから、そこはあまり怒らないであげたら?」


「姫様は十束に甘すぎます。ついでにあの朝凪とやらにも甘いです」

 榛色の髪、藤色の瞳をしたこの青年、顔立ちは整っているが元々童顔なせいで、他の騎士からはそれをいじられることもあるらしい。普段その目は真っ直ぐで、清廉さを感じさせるのだが、今日はその瞳が拗ねている。


「十束は有能だけど、本能に忠実な所があるから、今回は伯千に色々と押し付けすぎたかな?」

 苦笑いしながら風花は伯千を見やる。


「お任せいただけるのは大変光栄だと思っていますけど」

「適材適所。十束は大人数を指揮するのには向いてないから」


「そう言われると、まあ、納得せざるを得ない気もしてきますけど・・・・・・」

「朝凪がちゃんと騎士になったら楽できるはず」


「そうですか? ああ、その朝凪ですが、彼、東方の血を引いていますよね。だから姫様に近づいてきたのではないのですか?」


 連花王国を築いた中心の民族は比較的色素の薄い人間が多い。一方、黒髪は王国の東を中心に生活している民族に多い。彼らは連花王国に征服され、満足のいく暮らしはできていない。故に、独立の機会を窺い続けている。だから、王族を害する動機が存在する。伯千の心配はそこにあるのだろう。


「朝凪にちゃんと聞いた。思想によって来たのなら私に彼を止める術は無かったから」

 伯千の懸念は不必要なものだと、風花は言う。


「わたしはずる賢いからね。朝凪に戻る場所がなくなればここに居るしかなくなると思った。権力を使って一人の人間の人生を縛った。わたしに必要だからという理由だけで」

 感情の宿らない、十二歳の少女らしからぬ表情で風花は呟く。

 伯千は、度々そういう風花の顔を見てきた。その顔を見るたび、伯千は無力感に苛まれる。自分ではそんな風花の顔を晴らす術を持っていないことを悟っていた。


「姫様が朝凪に甘い理由は何となくわかりました」

「そう?」

「十束の事はもうどうでもいいです。姫様が愚痴を聞いてくれたので」

「ならよかった」

 ふわり、と風花は笑った。


 丁度、伯千好みの紅茶が飲み終わった。


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