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王家の説明回です。
奥宮には国王・凍雲を頂点に、凍雲の子を主とする三つの王家が存在する。
ただし、子供たちは既に王子、王女の称号は失っており、その称号は孫にあたる子供たちに生まれ順に与えられている。
「なので、風花姫はご兄弟が王太子殿下のみでも第三王女殿下と呼ばれるのです」
弧星は丁寧に説明を続けていく。
凍雲の長子である麻霧が主のチェルフロレス王家。与えられた館は奥宮の南に位置する桜の館。麻霧と妻の十六夜、第一王女・六花、第二王女・不香の二人の姫が住まう。
凍雲の第三子、彩雪が主のクリザンテイム王家。与えられた館は菊の館。彩雪と夫の深羽、第二王子・氷雨が住まう。
王を除き、現在最も地位の高い王家が風花のいるヴィブルム王家。王太子・氷刃を主とする、兄妹二人きりの王家。与えられた館は奥宮の中心近くにある藤の館。本来の主は凍雲の第二子・真雲であったが、妻の篠香と共に四年前に亡くなった。
「何となくおわかりでしょう? 二つの王家には配偶者の実家である一級貴族家や彼らの息がかかった貴族が背後にいます。お二人の母君のご実家は絶えてしまわれましたので、王太子殿下と姫様には後ろ盾になる貴族がいません。それに、背後に貴族がいるのは私たち騎士団の人間も同じです」
騎士になるのに必要なのはまず家柄である。そして、それなりの武術の腕。多少の指揮官経験など。
家柄で選ばれる。すなわち騎士の背後には貴族が存在する。貴族の方も、利権の為に王族に取り入ろうと騎士を通じて接触してくる。そして、さらなる権力を求めて都合の良い王をたてようと工作するものである。
直接蝙蝠に依頼したのはいずれかの貴族であろう。だが、朝凪が事前に得ていた奥宮の情報は王族か騎士が関わらなければわからないものが多かった。
「話が逸れましたね。つまり、私たち騎士も実家の意向には逆らえないと言う事です。騎士の大半は三男、四男。決して家を継げない者です。しかし、連花王国は分家を許可しません。新たに貴族の地位を得ることはないのです。だから、実家から追われれば、貴族ではなくなり、騎士であることも許されない」
「つまり、家の決定次第で姫様の元から離れることもある?」
「そうです。だから姫様はご自身に与えられた権力を使って貴方を騎士にしたのです、朝凪」
「私が貴族ではないから・・・・・・」
「そうです・・・・・・家に縛られ主を裏切る可能性のある私たちを軽蔑しますか?」
様々な感情をないまぜにした赤銅色の瞳を見て、朝凪は黙って首を横に振った。
そうですか、と言った弧星はまだ複雑な表情をしていた。
そんな弧星を見ていたら、なんとなく姫様の考えていることが分かったような気がする。きっと、そういうしがらみから弧星たちを解放したかったのではないだろうか。いざというとき、憂いなく自分の元から離れられるように。その為に朝凪を引き込んだのではないだろうか。
確信がなかったから、口にはしなかったけれど。
それなら、やるべき事は明確だ。
「弧星様、お時間の許す限り、私に騎士のすべてを教えてください」
少年の顔に覚悟が宿る。
蝙蝠から抜けたいと思っていた。自身のやっていることが他人から見たらとてつもなく後ろめたい事だと理解した時から、ずっと。
でも、そう簡単にやめられることではなかった。
そんな時、姫様は剣を向けられているのに、言ってくれた。
『報酬が目的なら、わたしを殺したときにもらえる額よりいっぱい払ってもいい。なんなら安定したお給料がもらえる仕事も紹介する』
と。
思わずその言葉に飛びついていた。普段なら絶対に無視してそのまま刃を振り下ろしていただろう。
あの時の姫様の目は、朝凪の抜けたいという思いを見透かしているようだった。この人なら、抱いていた思いを現実にしてくれると、思わされた。
結果、姫様の命令で連花王国内の蝙蝠は壊滅した。
行き場をなくした朝凪を騎士団に縛り付けることが目的だったのかもしれない。
けれど、蝙蝠に代わる居場所をくれた。少なくともヴィブルム王家の騎士たちは暗殺者だった朝凪を受け入れてくれた。そして騎士になる者として教育までしてくれる。
他の王家の騎士に多少嫌がらせを受けたとしても、姫様が差し出してくれた手を取った事を後悔することはないだろう。
いずれ、彼らが姫様を裏切ったとしても、朝凪は受け入れよう。だから、いずれその時が来たら、安心して欲しい。自分だけは決して姫様から離れないと誓おう。




