君に会うために、私は空を降りた
こんにちは飽那です。まだまだ拙い文章かとも思いますが、読んでいただけると幸いです。
病院へ向かう。
君に会うために。
君がもう長くないのは知っている。
知っているのに、私は合うのを辞められない。
きっと最後は辛いとわかってるのに。
君も、私も──。
「今日も来たよ!どう?大丈夫そう?」
「うん。大丈夫だよ。」
君は私を心配させまいと嘘をつく。
私もわかっているのだ、大丈夫じゃないことを。
「ねえねえ、今日はいつまでいられるの?」
「今日は3時から検査だから、それまでいられるよ。」
「ふふっ。今日は昨日より一緒にいられる。嬉しいな。」
「そうだね。ボクもうれしい。」
検査のたびに死へと近づいていくことを実感しているだろう君は、毎日をどう感じているのだろうと思う。
きっと、時間が止まってほしいと感じるはずだろう。
できれば私が変わってあげたい。
一緒な苦痛を味わってあげたい。
でも、それは叶わない。
もどかしい気持ちで、私は毎日君に会いに行く。
よっぽどのことがない限り、君に会いに行かなかったことは無い。
あの日、君と会った日。
今より元気だった君は、私を助けてくれた。
私の心を溶かしてくれた。
君は私を助けてくれたのに、なんで私は君を助けられないんだろう。
ただただそう考えることを繰り返す。
たとえ私が医者になって君を助けたいと思っても、そのころ君はいないだろうし、まず私には絶対に治せない。
それほどまでにひどい病状なのだ。
3時前になったので、別れを言う。
「また明日。」
「うん、また明日。待って、るよ……。」
病院内を歩いているとき、話し声が聞こえてきた。
「ねえねえ、335号室の男の子知ってる?」
335号室は彼の病室だ。
何だろう……。
「明日まで生きられないかもしれないらしいわ。」
「えっ……。まだ中学生なのに……。」
それを聞いて、飛び出せずにはいられなかった。
長くないことは知っていても今日明日だとは思っていなかったからだ。
あの、別れの時の顔、早く君の元へ。
「ねえ!」
ノックもせずにドアを開ける。
室内には、誰もいなかった。
窓は開いている。
ベットには私宛の手紙。
下から、悲鳴が聞こえた。
その手紙を片手に、下へ降りる。
嫌な予感、嫌な予感、嫌な予感。
下へ降りてその惨状を見た私の顔はどんなのだっただろうか。
ただ呆然と立ち尽くしている私は、その場に駆け付けた警察に家に帰された。
私宛の手紙、きっと警察に渡さないといけないのだろうけれど私は渡さずにずっと手元に持っていた。
君が私にくれたものを知らない人に渡したくなかった。
手紙には、ごめんねという言葉とありがとうという言葉、また会えたらなという言葉もあった。
そこで、思う。
また会えたらな。
そうだ。
また会いに行けばいいんだ。
君は私に会いに来てくれた。
私も昔、入院していた。
友達もいなくて、寂しい思いをしていた。
そんな時、同じ部屋に入った君。
君は私とたくさん話してくれた。
私は救われた。
君は私の救世主だった。
でも、そんな君の病状は悪くなって、その代りとでもいうように私の病状はよくなって。
次は私が会いに行く。
そう決めたら私の足は病院へと向かっていた。
まだ警察もいる。
君の病室へは立ち入れないから、屋上へ行く。
病院の人にはたまったものじゃないと思うけど、どうでもいい。
君に会うために。
ただそれだけの気持ちで。
フェンスを越えて屋上の端に立つ。
快晴の空。
風が気持ちいい。
そこから、叫ぶ。
「いま、会いに行くよ!」
そうして、飛び降りる。
空を落ちていく。
また会える、会いに行ける。
そして、身体は床に打ち付けられた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。誤字脱字があったら教えていただけると嬉しいです。アドバイスや感想も送って下さったら幸いです。