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救世主魔王 魔勇者ベリオン  作者: レイス
第1章 魔勇者の資金稼ぎ編
8/49

第8話 魔勇者世界に憎悪する

第1章スタートです。今回は、あくまで移動回です。

 草原となったかつてのアユムの死に場所を、二人の人間が歩いている。一人は、屈強な男性。左の顔部分には仮面を付け、表情があまりうかがうことができない。もう一人は、十歳前後の少年。黒一色の服を着、髪も真っ黒と、まるで夜が人型になっているかのような人間だった。


 この男達は、かつて世界を救った英雄でありながら、人間上層部により切り捨てられた勇者アユムと、そのアユムが倒した最強の魔族の戦士ブライが融合した魔人ベリオン。そして、隣にいる少年は、ベリオンを誕生させた魔族の神、魔神ルシフである。


 「・・・お前、どこまで付いてくるんだ?」


 「ああ。僕は、君に陰ながら助言する役として同行するつもりだよ。」


 「大丈夫なのか?神が世界に極端に干渉して?ヒュームの運命操作よりヤバいんじゃないのか?」


 「大丈夫。今君の目の前にいるのは、幻影だから。それも、君にしか見えない特別な奴だよ。だから、世界に干渉はできない。」


 「・・・いつ入れ替わったんだ?まったく気付かなかったぞ?」


 「まだ君は、神と比べると弱いからね。気付かなくて当然だよ。」


 ルシフがからかうように言う。ベリオンは、特に不快な様子はなく、それ以上追及することはしなかった。彼が次元の違う怪物であることは、ベリオンは既に分かっていたからだ。


 「・・・さて、ステータスの確認は終わったから、次はスキルを確認でもしようか。」


 「スキルか。・・・アユムもブライも、魔法はあまり得意ではなかったな。レベル2か3ばかりだった・・・。」


 ベリオンは、苦々しそうに呟く。


 「ふふふ。まあ見てみなよ。驚くから。ああ、スキルの確認は・・・。」


 「ステータスでできる。アユムはそうやって確認していた。【ステータス】!」



名前:ベリオン Lv:200 種族:魔人 称号:魔神の使徒 反逆者

物理スキル

【剣技Lv10】【槍技Lv10】【斧技Lv10】【棒技Lv10】【弓技Lv10】【体術Lv10】【武芸の達人Lv1】


魔法スキル

【火魔法Lv5】【水魔法Lv5】【風魔法Lv5】【土魔法Lv5】【光魔法Lv5】【闇魔法Lv5】

【回復魔法Lv3】【強化魔法Lv6】【防御魔法Lv2】


補助スキル

【TP消費1/10】【物理スキル威力増加大】【MP消費半減】【獲得経験値増加超】【成長率増加超】【状態異常無効】


ユニークスキル

【ステータス】【聖剣使い】【強靭な肉体】【魔剣使い】【神剣使い】【アナライズ】【ステータス偽装】【アイテム鑑定】



 「!?これは・・・!?」


 「驚いたかい?君達が融合したことによって、スキルも二人の覚えていたものが両方使えるようになっているんだ。さらに、種族やその人個人の使える特殊なスキル、ユニークスキルも両方使えるようになっているよ。あとは、【アナライズ】のように、プレゼントにあげたスキルもいくつかある。」


 スキル。人間や他の種族、魔物が使用する技や魔法、性質のことである。これにもレベルがあるものがあり、レベルがあるスキルは、高ければ高いほど習熟し、より高度な技や魔法を使うことができるようになる。1~3が下級、4~6が中級、7~9が上級、最高の10が極級と呼ばれ、10までいきつく者はほとんどいないと言われている。事実、アユムが勇者として活動していた時期でも、レベル10まで達していたのはアユム達だけだった。通常は、レベル7までいけば達人と呼ばれている域なのだ。


 レベルのないスキルにも、効果の高低がある場合がある。補助スキルと呼ばれる、直接使用できないスキルがある。このスキルは、後ろに小や大などが書かれているものは、それに応じて所有者を強化したり、消耗を抑えたりできる。だが、この補助スキルは、使用できるスキルに比べて習得が難しく、所有者は少ない。これを補うために、補助スキルを装備時のみ得られる装飾品が開発されたと言われている。


 さらに、ユニークスキルという、種族固有のスキルや、その個人しか使うことのできない特殊なスキルもあり、強力なユニークスキル持ちは、重宝された。アユムの聖剣を使える適正もユニークスキルの一種で、【聖剣使い】と呼ばれている。ブライの【魔剣使い】も同様である。


 「・・・アユムとブライが同時に覚えていたスキルのレベルは統合されているようだな。アユムもブライも、魔法は下級魔法くらいしか使えなかったが、中級レベルになっている。融合前に中級までいった魔法は、アユムが光、ブライが闇くらいだったな。それが、回復と防御を除けば中級レベルか。これは驚いたな。」


 「それだけじゃないよ。特定のスキルを極めたり、決められた複数のスキルを極めたことによって覚えられる上位スキルもあるよ。ほら、【武芸の達人】とかね。」


 「・・・ユニークスキルの【神剣使い】もか?」


 「まあね。本来なら、あり得ないものなんだけど、聖剣使いと魔剣使いがあれば、それも可能だよ。」


 「・・・しかし、ステータスは創造物で最強でも、スキルには穴が多い。これは、色々習得しなければな。楽しみだ。」


 ベリオンは、神を殺す以外にも鍛える楽しみが増えたようで、喜んでいた。


 「・・・さて、そろそろこの草原を抜けるけど・・・その前に言っておかなければいけないことがいくつかある。」


 「言っておかなければいけないこと?もう、ずいぶん聞いたと思うが?まだあるのか?」


 「あるよ。まず、アユムが死んでから現在までの時間差だけど、十一年経っている。その間に世界は激変した。王国はついに全世界を掌握し、帝国となっている。人間が他の種族を支配し、他の種族は奴隷か、劣等民と呼ばれて搾取されている。」


 「他種族を劣等民扱いか。いいご身分だな、人間どもは。」


 「だから、君が人間以外の種族だと知られると、色々まずいんだ。だから、魔人だとバレないようにしてほしい。」


 「分かった。気を付けよう。なるだけ人間らしく振舞おう。アユムの記憶を利用させてもらうとしよう。」


 「とはいえ、人間同士でも身分の差による格差が激しくなっている。平民の生活は、町のよっては逼迫ひっぱくしている所もあるようだよ。辺境の村になると、もっと酷い。いろんな名目の税が課されて搾り取られている。逆に、貴族や皇族は、贅沢三昧だ。そういった連中と結びついている大商人も、あくどく儲けてる。」


 「・・・聞いていて胸糞の悪くなる話だな。同族でも差をつけたがるか。」


 「そして次。かつてアユムが暮らしていた場所だけど、今では村ができている。あの後、孤児院も何もかも焼き払われて、焼け野原にされたんだ。そこに、悲劇の英雄の故郷復興と称して村を作らせたんだ。・・・もっとも、こんな僻地の村じゃ、何の特産品もできないからね。あまり豊かな村じゃないようだ。」


 「悲劇の英雄か。・・・自分達で殺しておいてよく言う・・・。」


 「で、一応最後だけど。君を殺した連中は、今では領主にまで上り詰めた者までいるようだ。あと、君の仲間を傷付けた人間も、結構いい地位に就いているよ。マギだったかな?彼女を追い出した人間は、皆魔法学校の要職に就いている。本来なら、マギが就くはずだっただろうにね。」


 「・・・。」


 ルシフから聞かされた現在の世界情勢に、ベリオンは不快感を感じていた。それは、大事なものを根こそぎ奪い取られ、大事なものを穢され続けていることに対する、アユムの部分の怒りと憎悪だった。


 今の世界は、アユムが目指していたものと180°違うものだった。悪人が私服を肥やし、権力を玩具にする一方で、優しく一生懸命生きる者が苦しめられ、搾取される。まさに、地獄といえるものだった。


 だが、ブライの部分の方も、憤りを覚えていた。ブライは別に、アユムのように弱者救済を唱えるような男ではない。強い者が弱い者を従えるのを当然と考える、弱肉強食論者である。だが、この世界は、ブライの思想とも相容れなかった。上にいる人間達は、強かったから上にいるのではなく、強い人間の手柄を横取りして上にいるにすぎないのだ。それは、アユムの記憶を見ていれば明らかだったが、ルシフの言葉でよりそれを確信した。無論、知恵があるから上にいるとも言えるが、既にその知恵も枯れ果てたと、ブライの部分は判断した。


 今、ベリオンは、この世界がアユムにとっても、ブライにとっても吐き気がするような世界であると感じていたのだ。


 「・・・俺は、アユムとは違う。手放しな弱者救済など真っ平だが、自分の意志を持ち、強く生きようとする者の味方だ。俺は、俺なりの救済を行うだけだ。」


 「それでいいよ。僕は、僕達を滅ぼしてくれればそれで構わない。君が救世主となろうと、魔王となろうとね。」


 「ふん。神様の言葉とは思えないな。・・・さて、それではかつてのアユムの村に行くとしよう。」


 二人は草原を抜けていく。この付近にあるという、アユムの故郷だった村を目指して・・・。

次もまた移動回か散策回になります。


スキルが一つ抜けていました。

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