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救世主魔王 魔勇者ベリオン  作者: レイス
第1章 魔勇者の資金稼ぎ編
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第45話 魔勇者異常発生を解決する(後編)

 「がはっ!?」


 キングベアーからの攻撃を受け、フロストは膝を付く。既に、鎧は原形を留めていないほど壊され、身体は傷だらけで、夥しい血が流れていた。キングベアーとの戦闘は、それだけ長時間に亘って続いていたのだ。


 (・・・あり得ない・・・ここまで強いキングベアーなんて・・・!)


 キングベアーとの交戦経験があるフロストは、このキングベアーの異常な強さに戦慄した。確かにキングベアーは強力な魔物だったが、フロストなら単独でも倒すことが可能だった。だが、目の前のキングベアーは、とてもフロストが単独で倒せるレベルではなかった。まるで、Aランクの熊系魔物エンペラーベアーのようであった。


 (こいつは・・・間違いなくキングベアーだ・・・!・・・なのに何故・・・!?まさか・・・強化されているのか!?・・・あり得ない!熊系の魔物にそんなことはできないはず・・・!)


 フロストは、キングベアーの異常な強さが理解できなかった。何かしら強化されているだろうと推察はできたが、何故そうなったまでは分からなかった。


 「フロストさん!今、回復を!」


 ヒーラーが、回復魔法をかけようとするも、いきなり立ち眩みを起こし、膝を付いてしまう。


 「・・・魔力切れ・・・!?」


 恐れていた事態に、ヒーラーは絶望する。


 「・・・逃げるんだ・・・!」


 フロストは、ヒーラーにここから逃げるよう促す。


 「い・・・嫌です!」


 ヒーラーは、それを拒む。彼女は、フロストの仲間ではない。だが、ここで逃げ出すのは、冒険者としての彼女の誇りが許さなかった。


 「リーダー!」


 「今助ける!」


 そこに、パーティメンバーが、彼を助けようとキングベアーに向かおうとする。だが、その前に、キングベアーより若干小柄-それでもブラックベアーより大きかったが-のストロングベアーが立ちはだかり、彼らをフロストの許へと行かせなかった。


 「くっ!どけ!」


 「邪魔だ!」


 フロストの許へと行けず、メンバーは焦る。そうこうしているうちに、キングベアーはその大きくて太い腕を振り下ろし、フロストに止めを刺さんとしていた。


 「駄目!」


 ヒーラーは、せめて自身が盾となり、フロストを守ろうとする。だが、彼女がフロストの所に行くことはなかった。突如として、彼女の側を何かが駆け抜けていく。


 「!?」


 それと同時に、キングベアーの腕が、フロストに振り下ろされる。フロストは、自身の死を確信し、目を瞑る。だが、いつまで経っても死は訪れなかった。


 「・・・?」


 フロストは、恐る恐る目を開ける。そこには、キングベアーの腕を小指で受け止めるベリオンの姿があった。


 「!?べ・・・ベリオン!?」


 「これほどの相手にここまで持ち堪えるとは・・・優秀な戦士だ。」


 「・・・どうしてここに・・・!?君は・・・ゴブリンの所に・・・!」


 「話は後だ。こいつは俺が倒す。」


 そう言うと、ベリオンはキングベアーの腕をチョンと押す。キングベアーは遠くに吹き飛ばされてしまう。


 「!?」


 あまりに信じられない光景に、フロストは愕然とする。一方の吹き飛ばされたキングベアーも、何が起きたか分からないような顔をしていた。


 「さて・・・剣ばかり使うのも芸がないな。お前達は体術だけで戦ってやろう。」


 「!?」


 ベリオンの宣言に、フロストは耳を疑った。確かに、戦士系のクラスは力が強い。だが、武器を使った戦いと、素手での戦いは全く違うのだ。Bランク冒険者の自分でも、素手で戦ったとしたら、同ランクの魔物と戦うのは難しいのだ。ベリオンの発言は、明らかに舐めプレイ宣言だった。


 (・・・無茶だ・・・!確かに、ベリオンの力が凄いのは分かった・・・!だが、だからといって体術で戦えるのとは別問題だ!しかも、強化されているであろう相手だぞ!危険すぎる!)


 「ベリオン!やめるんだ!君の本来の戦闘スタイルで・・・!」


 「ガアー!!」


 その時、落ち着きを取り戻したキングベアーが、ベリオンの方へと向かって行く。キングベアーは、ベリオンを敵とみなし、攻撃を仕掛けてきたのだ。


 「!ベリオン!」


 「・・・お前は勘違いをしているな。俺は確かに剣が得意だが、他ができないとは言ってないぞ。」


 「!?」


 ベリオンは、フロストの警告を聞き流すと、正拳突きの構えを見せる。キングベアーは、ベリオンに飛び掛かる。


 「ガアー!!」


 キングベアーの牙と爪が、ベリオンに迫る。だが、それがベリオンに届くことはなかった。


 「・・・はっ!」


 ベリオンは、キングベアーの懐に入り込むと、胸のあたりに拳を叩き込む。キングベアーの全身に、衝撃が走る。


 「グガッ!?」


 キングベアーは、口から血を吐き出すと、その場に崩れ落ちた。


 「!?」


 フロストは、その光景に愕然とした。文字通り、体術でベリオンは、キングベアーを倒したのだ。ただの一撃で。


 「・・・信じられない・・・一撃で・・・どうやって・・・!?」


 「衝撃拳だ。敵の身体に衝撃を伝え、内臓を破壊する体術の技だ。・・・加減をしくじると、魔物の身体を粉々にしてしまうが・・・うまくいったようだな。いい感じだ。」


 「・・・ベリオン・・・君は・・・!?」


 「・・・おっと。話は後だ。ストロングベアーくらいは片付けておこう。お前は、支給品のポーションでも使って休んでいろ。」


 そう言ってベリオンは、ストロングベアーの向かっていく。それをベリオンは、武器も使わず体術のみで圧倒していく。頭部への蹴り、首の骨を圧し折る、投げ技で投げ飛ばす、ものの一分もしないうちに、ストロングベアー達は全滅していた。


 「・・・マジかよ・・・!」


 「素手でBランクの魔物を倒しちまった・・・!しかも、一撃で!」


 「リーダーやフレムよりずっと強い・・・!」


 そんなベリオンの姿に、冒険者達は愕然としていた。


 しばらくして、この一帯の魔物の掃討は成功し、冒険者達はようやく一息つくことができた。ベリオンは、倒したキングベアーの死体を眺めていた。そこに、フロストがやってきた。傷は、支給品のポーションで治したために消えていたが、鎧はボロボロのままだった。


 「・・・ありがとう、ベリオン。君のおかげで、僕達は死なずに済んだ。冒険者を代表して、心から礼を言うよ。」


 フロストは、ベリオンに深々と頭を下げる。


 「気にするな。・・・おい、まさか逃げられると思っているのか?」


 「?」


 唐突に、ベリオンは誰もいない所に話しかける。フロストは、ベリオンの行動に戸惑う。


 「・・・ベリオン?どうしたんだ?」


 「ああ、お前には知る権利がある。」


 ベリオンは、足元の石を投げる。そして、本日三度目のフードの男を見つけるのだった。


 「!?誰だ!?」


 「ミラン!」


 「分かっている!」


 分かっていたかのように、ミランは、男を拘束する。ベリオンは、男の許へと向かう。できるだけ、威圧するかのように。


 「・・・本当にワンパターンだな、お前らは。少しはバレているという風に思わないのか?」


 「あ・・あり得ない・・・!こんなこと・・・あり得るはずが・・・!?」


 「・・・言ってることもワンパターンか。芸のない。」


 「・・・ベリオン。こいつは誰だ?」


 フロストは、ベリオンにこの見知らぬ男の説明を求める。


 「今回の異常発生は、人為的に仕組まれたものだ。こいつは、それを起こしていた一味だ。」


 「!」


 「貴様・・・何故それを・・・!?」


 フードの男は、ベリオンの言葉に動揺する。それに気にすることなくベリオンは話を続ける。


 「今回、異常発生していた場所に一人ずつ、こいつの仲間が隠れていた。これで四人目だ・・・。」


 「!まさか・・・他の奴らは捕まったのか!?」


 「ああ。どいつもこいつもワンパターンでつまらなかったぞ。・・・さて、ミラン。次が最後だ。フロスト。こいつを連れて、集合地点に戻ってくれ。ただし、生きたままだ頼むぞ。始末するのは、こいつらが全員揃った時だ。」


 「・・・分かった。こいつには色々聞きたいことがあるけど・・・こんな状況だ。尋問は皆と一緒の時にやるとしよう。」


 「頼むぞ。ああ、生きて話ができれば、どんな状態でも構わないからな。」


 ベリオンは、そう伝えると、ミランと共に最後の縄張りへと向かう。残されたフロスト達は、ベリオンへの感謝の表情から一転、蔑んだような表情でフードの男を見ていた。




 「ええい!ボスはどこだ!」


 ゴドールは一人、魔物達の中を槍を振り回して進んでいた。他の冒険者達は、武器のリーチの関係と技量のために遠巻きで魔物を仕留めるくらいしかできなかったため、ゴドールに多くの負担がいっていた。


 (ボスさえ倒せば・・・俺達の勝ちだ・・・!・・・だが、未だにボスの姿が見えん!・・・ええい!)


 長時間の戦いで、ゴドールも疲弊していた。ダメージも負っていた。だが、進むのをやめない。ここで止まれば、後ろにいる他の冒険者達に被害が出る。それに、ここまで来た以上、後退はもはやできなかった。


 (どこだ・・・どこにいる・・・!?)


 そんなゴドールに他の魔物とは比べ物にならないほどの速さで一体の魔物が迫る。その魔物は、ゴドールの顔目掛けて、鋭い爪を突き立てようとする。


 「!」


 間一髪気付いたゴドールは、顔を逸らして直撃をかわず。微かに頬を切ったものの、何とかゴドールは死の免れた。


 だが、自身を襲って来た魔物に、ゴドールは戦慄した。


 「・・・Aランクの魔物・・・カイザーバードか・・・!」


 ワイルドバード系列最上位の魔物とされる、カイザーバード。こんな所に出る魔物ではない。そして、自身が敵う相手ではない。先ほどの攻撃も、かわせたのが半ば奇跡だったのだ。今度は確実に殺されるだろう。


 (・・・ここまでか・・・!・・だが・・・!)


 ゴドールは、玉砕覚悟でカイザーバードに挑もうとする。だが、次の瞬間、カイザーバードは、地面へと落ちていた。


 「!?」


 何もしていないでカイザーバードが倒されたことに、ゴドールは驚愕する。だが、それだけではなかった。なんと、他の魔物達も次々に地面へと落ちていったのだ。


 「・・・何が・・・!?・・・!これは・・・!」


 よく見ると、魔物達の身体には、矢が刺さっていた。それが死因だと、ゴドールはようやく気が付いた。


 「・・・誰だ!?この班に弓使いはいたが、ここまで見事な腕の奴はいない・・・!」


 ゴドールが周囲を見渡すと、遥か遠くに見知った男が弓を構え、目にも止まらぬ速さで射ていた。側にはまた別の男がいて、弓を射る男に矢を渡していた。その男も、ゴドールは知っていた。


 「!ベリオン・・・!・・・それに・・・ミラン!?どうしてここに!?ゴブリンの討伐はどうしたんだ!?」


 あり得ない人物の救援に、ゴドールは困惑する。ゴドールからすれば、こんな所に二人がいて援護しているなどおかしいことなのだ。


 だが、その疑問も、ベリオンの凄まじい弓の腕前に霧散することになる。ベリオンの弓術は、今まで自分が見てきたどの弓使いよりも優れたものだった。


 (・・・あり得ない・・・ベリオンは戦士のはず・・・!それが、どうしてあそこまで弓が使える!?戦士も弓を使う者がいるが、お世辞にも精度がいいとは言い難い!だが、奴はなんだ!?精度も弓使いと遜色ない・・・いや、それ以上だ!)


 ベリオンの加入により、優勢だった魔物達は数を減らしていた。まだ、予断を許さぬ状況であったが、それでも互角なくらいの戦力差にはなってきた。


 しかし、矢には限界がある。ついに、矢は尽きてしまう。すると、魔物達は、今まで押していた冒険者達ではなく、突如乱入してきたベリオンを狙い殺到した。今までの恨みを晴らそうとするかの如く。その中には、カイザーバードの姿があった。


 「!しまった!カイザーバードがもう一体!逃げろ!ベリオン!」


 ボス級の魔物が二体など前例がないため油断していたゴドールは、ベリオンに逃げるよう促す。先ほどは不意打ちだったからこそうまくいっただろうが、今度はそうもいかないと、彼は考えていた。


 だが、その心配は杞憂であった。


 「・・・こちらに来てくれて助かった。おかげでまとめて相手ができる。」


 ベリオンは、ダゴンを手にすると、魔力を込め、斬撃を放つ。魔物の群れは、一瞬でバラバラになってしまった。カイザーバードも例外ではない。死した魔物達は、地面に落ちていく。


 「・・・な・・・!」


 目の前の光景が理解できず、ゴドールは唖然としていた。ボスであった二体のカイザーバードの死により、他の魔物達は戦意と統率を失い、散り散りになって逃げていく。


 「今だ!追撃だ!」


 「!あ・・・ああ!追撃するぞ!」


 ベリオンから追撃を指示されハッとなったゴドールは、冒険者達に残りの魔物の追撃を指示する。ボスを失い、さらに多くの仲間を失った魔物達は、十分も経たないうちに全滅した。


 「・・・ベリオン。助かったぞ。お前がいなければ、どうなっていたか・・・。」


 ゴドールは、ベリオンに感謝の意を伝える。


 「いや、お前達が強かったからだ。だからこそ、俺は助けに来れた。」


 「そういえば・・・お前、自分の担当はどうした?お前達は、ゴブリンの担当だったはずだが?」


 「それは片付いた。今頃、同じ班の面々は集合地点にいるはずだ。」


 「!片付いたのか!?・・・そうか・・・よかった・・・。・・・。」


 自分達を助けるために、自分の持ち場を離れたのではと考えていたゴドールは、既に片付けていたとの言葉に、安堵した。だが、同時に二人に対して、勝手に持ち場を離れたことを注意せねばと思った。自分達を助けるためとはいえ、作戦を乱したように感じたのだ。


 「・・・助けてくれたことは感謝する。・・・だが、勝手に持ち場を離れたのは、班長として感心できんな。お前達の勝手な行動で、班の和を乱したことに、何かしら罰則を負わんと駄目だぞ。」


 「ゴドール・・・この状況じゃ仕方ないだろう。それに、そんなことを言えば、他の班もここも、全滅していたぞ。」


 ゴドールに抗議するミラン。だが、ベリオンはミランを制する。


 「いや、ゴドールの言うことは正しい。何かしらの罰則は受けるとしよう。」


 「・・・意外と真面目だな、お前。」


 「・・・?待て。今なんと言った?他の班もと言ったが・・・まさか・・・!」


 「ああ。他の班も救援に行った。俺がいなければ、全滅ないし、壊滅していた。もう済んだがな。」


 「!?一人で・・・異常発生を食い止めたというのか・・・!?しかも、全部の!?」


 さすがにゴドールも、にわかには信じられなかった。異常発生を一人で止めるなど、常識的に考えてあり得ないからだ。


 「!ゴドールさん!あれを!」


 「!あれは・・・!」


 冒険者の一人が、空を指差し、それを見たゴドールは驚愕する。それは、青色の煙で、それが四つ上がっていた。


 「・・・あれは、状況を表すための狼煙のろし!しかもあの色は、成功を伝える青色!・・・本当に・・・!?」


 「ここも、もう大丈夫だろう。狼煙を上げたらどうだ?」


 「・・・あ・・・ああ・・・。」


 ゴドールは、困惑した様子で狼煙の準備を開始する。ミランもそれを手伝う。五分後、青色の煙が立ち上った。


 「・・・俺達の任務は終了だ!これより集合地点に撤収する!」


 ゴドールの撤収宣言に、冒険者達は歓声を上げる。だが、ベリオンはそんな彼らに目もくれず、誰もいない場所へと歩いて行く。


 「・・・これで五人目。いい加減に芸のない隠れ方はやめろ。」


 そう言うと、ベリオンは誰もいない場所に拳を振り下ろす。すると、鈍い音とと共に、フードの男が姿を現し、その場に崩れ落ちた。


 「ぐっ!・・・貴様・・・どうして俺の居場所を・・・!?」


 「ただの透明化の魔法に何を期待している?そんなものをかけただけで隠れた気になっているとは・・・。」


 ベリオンは呆れた様子で、男を拘束する。


 「今回は自分でやるんだな。」


 「ああ。最後だからな。」


 「・・・ベリオン、ミラン。・・・そいつは誰だ?」


 「こいつは・・・。」


 ベリオンは、ゴドール達に男の正体を話す。冒険者達は憤慨して、ゴドールが制するのも聞かず男を殺そうとするも、ベリオンに説得されて刃を収めた。だが、それだは彼らの気は収まらないだろうと、ベリオンは殺さない程度に男を好きにしていいと伝え、自分はミランと共に休憩することにした。そして、男の悲鳴が聞こえなくなり、ゴドールが彼らの気が済んだと伝えにきたのを確認してから、集合地点に戻るのだった。

次回、犯人達を断罪します。

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