第37話 魔勇者支部長から直接頼まれる
「・・・俺に調査に参加しろだと?」
カミーラの予想外の言葉に、ベリオンは思わず聞き返す。
「はい。あなたには、町に来る魔物の迎撃ではなく、調査の方に参加してもらいたいのです。」
「何故だ?俺はまだ、Fランク冒険者だぞ?参加基準を満たしていない。」
「あの時も言いましたが、あなたのような規格外な実力の人間を遊ばせておくようなことをする気はありません。ランクはFでも、実力的にはC以上の人間に後方で下がって取りこぼしを倒せなんて言うのは無駄です。異常発生した魔物の排除を任せた方が有意義だと判断します。」
「・・・随分と評価してくれているな。悪い気はしない。」
「では、引き受けてくれますね?」
「ああ。雑魚狩りよりよっぽど面白そうだ。調査依頼を受けるとしよう。」
元々迎撃依頼に不満を抱いていたベリオンは、調査依頼参加を引き受けることにした。
「ありがとうございます。・・・それで、ベリオンさんはどの魔物の縄張りの調査に向かいますか?」
「どの縄張りか・・・。別にどこでもいいが、強いて言うならゴブリンだな。あそこで俺は、異常発生の痕跡を見つけたからな。」
「分かりました。では、ベリオンさんはゴブリンの縄張り組に配置しますね。」
カミーラは、書類に書き込む。内容は、冒険者の割り振りについてである。
「・・・ちなみに今、どの魔物の縄張りにどれだけの冒険者を配備するつもりだ?」
「現在、トレントの縄張りにはフレム達【烈火】を筆頭に五十名、グリズリーの縄張りにはフロスト達【氷結】を筆頭に五十名、ワイルドバードの縄張りにはゴドールさんを筆頭に五十名、ゴブリンの縄張りにはベリオンさんとミラン達【無音の猫】を筆頭に五十名、ウルフの縄張りにはCランク冒険者達で固めた五十名ですね。」
「ミランも一緒か。それは助かる。ミランの索敵能力は抜群だ。頼りになる。」
「褒めても何も出ないぞ。」
「・・・だが、五十人か。規模が分からん以上、正確な戦力を配分するのは難しいと思うが、冒険者だけでは少しキツイのではないか?小さな町ならいざ知らず、これほど大きな町なら、衛兵に協力を求めればいいのではないか?」
「・・・残念ながら、町の兵力を借りることはできませんでした。」
ベリオンの提案に対し、カミーラは苦々しそうな様子で否定する。
「?何故だ?異常発生の恐ろしさを知らぬ者などいないだろう。」
「それが・・・。」
「・・・町の兵士を出すわけにはいきませんな。」
立派な椅子に座った髭を蓄えた肥満体の男が、カミーラに偉そうな視線を向けながら告げる。
「何故です、町長?異常発生が起きれば、このネイバーもただでは・・・。」
「これだけの情報では、本当に異常発生なのか分かりませんな。そんな不確かな情報を鵜呑みにして兵を動かすなどできません。いいですかな?兵士を動かすのはただではない。金がかかる。もし、無駄足ならば、どれだけの損害になると思うのです?その損害を、ギルドは補填してくれるのでしょうかな?」
「・・・それは・・・。」
「それに、魔物退治は冒険者の仕事。町にはBランク冒険者の【氷結】と【烈火】がいる。彼らにやらせればいい。」
「・・・もし、今回の異常発生が多重発生なら、彼らでも防ぎ切れません。町にも確実に被害が出ます。そうなれば、あなたはどう責任を取るつもりですか?」
「多重発生?何を馬鹿なことを。そんなことあり得ない。寧ろ、競合を起こして異常発生が起こらないというのが常識でしょう。ならば安心ですな。がはははは!」
町長はカミーラの話を全く取り合わず、下品な笑い声を上げる。
「おっと、もうこんな時間か。私はこれから、客人と会わなければならないのでこれで。」
そう言うと、町長は部屋を出て行く。残されたカミーラは、悔しそうに町長の後姿を睨むのだった。
「・・・そう、町長は言い残しました。」
カミーラは、ベリオンに町長とのやり取りを話した。話をする彼女の顔は、とても悔しそうであった。
「・・・何だそれは?本当に異常発生、しかも、多重発生なら町にどれだけの被害が出ると思っている?そんなことも分からんのか?」
「・・・あの男は、町の被害より金の心配しかしない男なのです。・・・酷いと思うことは多々ありました。ですが、これほどとは思いませんでした・・・。」
「・・・くそが!役に立たないくせに権力だけは振りかざしやがる・・・!」
カミーラとミランは、吐き捨てるように言う。町長に対する不満と憤りがにじみ出ていた。
「・・・なるほど。では、この町を守れるのは、俺達冒険者だけということだな。」
「はい。・・・当然、厳しい戦いになると思われます。ですが、町を捨てて逃げるわけにはいきません。この町の人達には、我々もよくしてもらっています。それに、戦わずに逃げたとなれば、冒険者全体の信用に関わります。」
「一応、近隣の町の冒険者にも呼びかけてはいるが・・・異常発生が事実なら、早急に対処しなければ危険だ。来てくれるまで待つのは得策ではない。」
「つまり、この町の冒険者だけで、異常発生に対処しなければならないわけか・・・。無謀だな。」
「ですが、やらなければ町が滅ぼされます。・・・ベリオンさん。この町に来たばかりのあなたにこんなことを言うのは酷かもしれませんが・・・お願いです、力を貸してください。」
カミーラは、ベリオンに深々と頭を下げる。
「・・・頭を上げろ。俺は、仕事を引き受けると決めた。なら、頭を下げる必要はないだろう。」
「・・・ベリオンさん・・・。」
「では、今後の予定を詰めていくとしよう。話してくれ。」
ベリオンの言葉に、カミーラの目尻には涙が浮かんでいた。ベリオンは、それに気付いていたが、あえて無視すると、彼女に今後どうするかを尋ねた。
「・・・はい!」
カミーラは、ベリオン達に調査に関する指示を出す。それを聞いた彼らは皆、頷くのだった。
ウルフの縄張りが抜けていましたので追記しました。




