第33話 魔勇者駆け出しパーティの実力を見る
「よし、訓練の前に、お前達の腕前を簡単に見せてもらおう。」
訓練場にて昨日の新人パーティと合流したベリオンは、彼らの大まかな実力を知りたいと告げる。
「ここならお前達も全力を出せるだろう。それを見て、俺からアドバイスをしたうえで訓練をする。まずは、前衛の実力を見せてくれ。お前達二人で模擬戦をやってもらおう。」
「分かりました。それじゃあロン。」
「ああ、いくぜ、ログ!」
ログと呼ばれた剣士と、ロンと呼ばれた盾持ちは、向かい合って剣と盾を構える。ただし、ログの持つ剣は、最初に会った時のロングソードではなく、片手でも扱えるショートソードだった。
「ちゃんと自分に合った武器にしたようだな。」
「はい。ベリオンさんの言う通りでした。こっちの方が、使いやすいです。」
「あれは、今のお前にはまだ早いからな。使うにしても、もっと筋力と実力を付けてからだ。・・・それでは、始めてくれ。」
「はい!」
ログは、ロンに切りかかる。シンプルに正面からの攻撃。素人でもかわすことは容易だろう。当然、ロンは盾で攻撃を受け止める。
「まだまだ!」
ログは気にせず、ガンガン攻める。それを盾で受け止めるロン。傍から見れば、攻めているログが優勢に見える。だが、攻撃が通らないのだから、全然優勢ではなかった。
(・・・まだ無駄は多い。だが、攻撃は正確だ。的確にいい所を狙っている。全くの素人ではないようだな。だが、如何せん正面からの攻撃に偏りすぎだな。)
ベリオンは、ログの技量を素人よりは優れているが、まだ未熟と判断した。
一方、ロンの方はというと、最初こそは余裕の様子で受け止めていたが、徐々に疲れが見え始めたきた。
(・・・攻撃の衝撃まで逃がせていないな。反応はいいようだが、これでは長時間の盾役は無理そうだ。)
「どうした、ロン?息が上がっているぞ?」
「だ・・・大丈夫・・・だ・・・!」
だが、次の瞬間、ロンは疲れからか足がもつれ、倒れてしまう。ログの剣が、ロンの喉元に突き付けられる。
「・・・参った。」
ロンは両手を上に上げ、降参を宣言する。
「・・・どうですか、ベリオンさん?」
ログは、自分達の戦い方がどうだったかベリオンに尋ねる。
「・・・そうだな。まずはログだが、お前は腕前は、素人にしてはいいものだ。レベル2はあるだろう。」
「!分かるんですか!?」
「だいたいはな。経験を積んだ者なら、相手のおおよその技量が分かるものだ。それと、お前の攻撃は正確だった。今のお前なら、あの時のゴブリンくらいなら、他のメンバーを守りつつ撤退できるな。・・・だが、まだ無駄が多い。力の入れ方がなっていない。それに、馬鹿正直に正面からの攻撃を多用しすぎだ。それでは強い敵には対応できないだろう。そういった問題点を改善する方向で教えていこうと思う。」
「はい!」
ベリオンに短所を指摘されるも、同時に長所も指摘されたログは、嬉しそうに返事をする。
「次はロン。お前は、反応は悪くない。攻撃に素早く対応している。その点は合格だ。・・・だが、あの時も言ったが、攻撃の受け方が悪い。だから、すぐに疲れてしまう。これでは盾役として不適格だ。」
「・・・はい・・・。」
ログとは対照的に、元気のない声で返事をするロン。
「・・・まあ、これに関しては、鍛錬で敵の攻撃を受け流す感覚を身に着けるしかない。場数をこなして感覚を覚えろ。俺が相手をしてやる。」
「は・・・はい!」
ベリオンから直接教えてもらえると言われ、ロンは俄然元気になり、力強く返事をするのだった。
「さて・・・お前達二人は魔法だったな。なら、俺が教えられることはないが・・・。」
ベリオンは、残りの二人の女冒険者-魔法使いはロナ、神官はロミという-を見る。
「一応、魔法の腕を見てみたい。見せてくれないか?」
「いいですよ。では、まずは私が。」
「ああ、使う魔法はレベル1でも使えるファイアショットにしてくれ。あくまで威力を確認するだけだ。」
「分かりました。」
ロナは、訓練場に置かれている木人に対峙すると、手に持つ杖を向け呪文を詠唱する。ロナの杖の先に、魔力が収束し始める。だが、その様子にベリオンは顔をしかめる。
(?今、詠唱の前に入れた一呼吸・・・あれは、エルフ式の呼吸法ではないか?それに、魔力の集まりが悪いような・・・?)
「ファイアショット!」
ロナの杖から、火の玉が放たれる。放たれた火の玉は、木人に直撃する。木人は、若干焦げ目ができたものの、原形を留めていた。
「!?」
「ど・・・どうですか?」
「・・・ああ・・・威力が弱く感じるな。」
「・・・そうですよね。私、魔法学校でも落ちこぼれで・・・。付いていけなくなったから冒険者になったんです。」
「だ・・・だから気にすることないって!」
自分の魔法の弱さを自覚しているのか、ロナは元気なく俯く。そして、それをロミが慰める。
「・・・。」
(いや、レベル2の威力ではないだろう、これは!アユムの記憶によると、マギと会った時も彼女はレベル2だったが、同じファイアショットでもこれより威力があった!・・・どういうことだ?)
ベリオンは、ロナの魔法の弱さに困惑していた。レベル2ともなれば、基本的な火魔法であるファイアショットでもあの程度の木人なら焼き尽くせるくらいの威力がある。これは、異常であった。
(だが、彼女は魔法使いとしての適性が低いようには見えない。・・・やはり、考えられることは、詠唱前にした呼吸法だな。あれは、エルフの使う呼吸法だ。人間が行っても効果は得られないはずだ。事実、魔力の集まりが悪かった。)
魔法は、単に魔力を持ち、呪文を唱えれば使えるというものではない。呪文を唱える前に特殊な呼吸をする必要があるのだ。これがうまくできなければ、魔法は効力を発揮しないのだ。詠唱を必要としない無詠唱の魔法でも同様である。
(これはどういうことだ?彼女は魔法学校にいたはずだ。そこで呼吸法も習うはずだ。マギがそうだったように。何故エルフ式の呼吸法を使っている?)
「・・・あの、ベリオンさん?・・・私・・・何か不味いことでもしましたか?」
ベリオンが難しそうに考えているのを見たロナは、自分が何か仕出かしたのではないかと思い、恐る恐る尋ねる。
「!あ・・・いや、何でもない。・・・ただ、俺にはお前の資質がないから威力が低いとは思えんのだ。」
「え?・・・でも、私、学校にいた時も全然魔法が上達しなくて・・・。」
「・・・教師の教え方が悪かったのではないか?」
「そんなことないです!他の子も私と同じ授業を受けていましたけど、皆私より強かったんです!」
「・・・他の生徒は人間か?異種族はいなかったのか?」
「はい、皆人間です。・・・というより、人間以外の種族が学校に入ることなんてできません。」
「!・・・そうか。・・・そうだったな。すまない。俺は、最近まで山奥にいたから世の中のことに疎いのものでな。」
「大丈夫です。先輩の冒険者に聞きましたから。」
「そうか。・・・。」
(・・・しかし、この魔法の行使には問題があるのは事実だ。だが、どうして彼女は駄目で、他の人間が使った場合は強くなる?・・・分からんな。一度、試した見た方がいいと思うが・・・今の俺は、戦士で通している。魔法まで使えると知られれば、色々面倒なことになる。・・・何かいい手はないか・・・?)
ベリオンが考えていたその時、訓練場に冒険者達が入ってくる。その中には、魔法使い風の女性がいた。
「!そうだ!あの冒険者達に協力してもらうとしよう。」
「え?あの人達にですか?」
「ああ。やはり、魔法のことは魔法使いに聞いた方が早い。構わないな?」
「はい。大丈夫です。」
ベリオンは、入ってきた冒険者達の許へと向かい、訓練に協力してほしいと頼んだ。彼らは快く了承し、ログ達パーティの訓練を手伝うことになった。




