第30話 魔勇者依頼を達成する
「・・・?何だ?何の騒ぎだ?」
ギルドに戻ったベリオンとミランは、ギルド内の様子がおかしいことに気付いた。冒険者達は、同僚や他の冒険者と何やら難しそうな会話をし、職員達も慌ただしく動いていたのだ。
「・・・何か起きたようだな。報告ついでにミレイに話を聞いてみるか。」
「ああ。」
二人は、受付にいるミレイの許へと向かう。受付では、ミレイが忙しそうに書類を書いていた。
「戻ったぞ。報告したいことがある。」
「あ!ベリオンさん!それにミランさんも!無事だったんですね!・・・まあ、ベリオンさんとミランさんの腕前なら、心配していませんでしたけど・・・。」
「それよりミレイ。これはいったい何だ?」
「はい。・・・実は、異常発生の兆候が見られたんです。」
「ああ。それなら俺達も遭遇した。ゴブリンが異常発生の兆候を・・・。」
「ゴブリン?・・・まさか・・・ゴブリンもですか!?」
ミレイの顔色が、見る見るうちに青ざめる。
「?どういうことだ?ゴブリンもとは?」
「・・・実は、近隣の魔物を討伐していた冒険者から、ウルフの異常発生の兆候があったと報告があったんです。」
「ウルフ?」
「ある冒険者の一団が、ウルフの縄張りでハイウルフの群れと遭遇しました。」
「ハイウルフの群れだと!?あり得ない!」
ミレイからの報告に、ミランは驚愕し、それをすぐに信じることができなかった。
通常、ハイウルフはウルフの群れのリーダーとして君臨する。そのため、群れに一体しかいない。だから、そのハイウルフが群れを作るなど、普通ではあり得ないことなのだ。
「はい。ですから、ウルフの異常発生だと考えられていたのです。・・・ところが、他の冒険者から、別の魔物も異常発生の兆候がありと報告があったんです。」
「!」
これには、ミランばかりかベリオンも驚愕した。通常、異常発生が複数の魔物で発生することなどあり得ないからだ。寧ろ、複数の魔物で発生した場合、競合を起こして数が減り、異常発生は起こらないのが常識だった。これは、人間だけでなく、魔族の常識でもあった。
「幸い、まだ死者は出ていませんが、負傷者が多数出ています。特に、GやFといった低ランクの冒険者が。ですから、他の冒険者の方々も、今後どうなるか不安になっているんです。」
「・・・なるほど。だから、さっき俺達に無事だったと言ったのか。」
「はい。複数の魔物が競合を起こさず一斉に異常発生を起こすなど、今まで確認されていませんでしたから・・・。」
「ウルフ以外にどんな魔物に兆候が見られた?」
「トレントとグリズリー、ワイルドバードの報告がありました。」
「・・・もう一つ追加が必要だ。さっきも言ったが、ゴブリンもだぞ。」
「・・・異常発生がこんなに・・・こんなの前代未聞です・・・。」
ミレイの顔色が、さらに青くなる。もうここまでくれば、冒険者の対処できる範疇を超えているのだから、青くなるのも仕方がなかった。
「・・・分かりました。ご報告、ありがとうございます。支部長には、私の方から報告しておきます。」
「頼む。」
「・・・ああ、それと、一応現段階で倒したゴブリンの首を持ってきたんだが・・・一応確認してはくれないか?」
「え?首?」
「これだ。」
ベリオンは、無造作に革袋からゴブリンの首を取り出す。
「!?これ、ホブゴブリンの首ではないですか!?」
「ああ。普通のゴブリンがミランと組んで六十五体。ホブが二十五体だな。」
「!?ホブが二十五!?・・・確かに、それは確実に異常発生です!ホブが十体を超えるなんておかしいです!」
「ミランの言ったとおりだな。・・・ところで、ゴブリン退治のノルマだが、ホブはカウントされるか?」
「え?あ・・・はい。カウントされますよ。ホブの場合、通常のゴブリン二体分としてカウントされるんです。」
「二体?・・・となると、五十体分に相当するのか。・・・!そうなると・・・。」
「通常のゴブリン六十五体、ホブゴブリン二十五体で、百十五体になりますね。・・・おめでとうございます!依頼達成です!」
ミレイは、暗い状況ながらも、ベリオンに依頼を達成したことを笑顔で伝える。
「・・・結果的に、ホブを狩ったのは正解だったな、ミラン。」
「・・・ああ。」
嬉しそうなベリオンに対し、ミランは少し、困惑気味だった。




