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救世主魔王 魔勇者ベリオン  作者: レイス
第1章 魔勇者の資金稼ぎ編
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第29話 魔勇者駆け出しパーティに物申す

 「・・・嘘だろ・・・?あの数のゴブリンを一人で・・・?」


 「・・・しかも、ホブをあんなアッサリ倒した・・・!一体じゃなくて、あんなに大勢を・・・!」


 「ゴドールさんに勝ったってミランさんの話・・・。」


 「・・・本当なんだ・・・。」


 後ろで見ていた四人の駆け出し冒険者は、ベリオンの強さに絶句していた。いくら彼らが経験が浅いとはいえ、あれだけの数のゴブリンを一人で相手にするなど無理だと分かる。先ほどまで、自分達は四人がかりでも数の暴力になすすべなく圧倒されていたのだから。


 さらに、上位種であるホブゴブリンの部隊をも一人で全滅させたのだ。彼らは、ミランが言った言葉が事実であると認めざる得なかった。


 「・・・。」


 だが、当のミランは、厳しい表情をしていた。彼は、今回のゴブリンの様子に違和感を覚えていた。


 (・・・おかしい。ゴブリンは確かに多産であっという間に増える。だが、ホブゴブリンとなれば話は別だ。上位種は、滅多に生まれない。それが、何十体も部隊を組むなんて普通はないぞ。)


 そう、上位種のゴブリンは、なかなか生まれないのだ。そして、それが部隊を作るなど、普通は考えられないことなのだ。


 「・・・ベリオン。討伐証明部位を回収したら、依頼は一旦中断だ。この件は、ギルドに報告する。」


 「?どういうことだ?」


 「ホブゴブリンが部隊を作ることなど普通はあり得ない。ホブは、どんなに多くても、群れに二体くらいしかいない。それがこんなにいるなど、異常だ。」


 「・・・そうなのか。まさか、異常事態だったとはな。」


 (・・・そういえば、アユムの知識では、上位種は簡単には出てこないとされていたな。魔族の場合、意図的に上位種を発生させて修行に使っていたからな。)


 ベリオンは、これが異常事態であったことを今更ながら実感した。人間と魔族の融合体であるベリオンは、二つの種族の常識を有していたが、戦っている時は、魔族の常識に引っ張られていた。だから、ミランに指摘されるまで、これが異常であると気付かなかったのだ。もし、ミランに言われなければ、ベリオンは単に強めの敵の群れが出てきた程度にしか認識しなかっただろう。実際、そうとしか考えていなかったのだから。


 (これは、改善が必要だな。俺が今いるのは、魔族ではなく、人間の中なのだ。今後、こういった異常事態を見逃さないよう気を付けなければな。)


 ベリオンは、今後は注意が必要だと肝に銘じるのだった。


 「・・・ひょっとしたら、これは異常発生スタンピードの兆候かもしれないな。お前も知っているだろう。最近、異常発生の兆候があると。」


 「知ってはいるが・・・それは、トレントではないのか?俺が町に来る際、大量のトレントに襲われた。」


 「?そうなのか?そうなると、異常発生はトレント?・・・いや、でも異常発生でなければ、ホブゴブリンがこんなに大量に現れるのも説明が・・・。」


 ベリオンからの言葉に、ミランは困惑する。ベリオンの言う通りなら、異常発生しているのはトレントのはずである。だが、それではホブゴブリンがこんな大量に発生していることの説明が付かないのだ。ホブゴブリンが大量に発生するとしたら、異常発生以外にないのだ。


 「・・・まあ、一旦戻るのは賛成だ。異常事態なら戻って情報を提供するよう、言われているからな。」


 ベリオンは、倒したゴブリン達の首を刎ね、それを革袋の中に入れていく。


 「・・・あの・・・。」


 そんな時、パーティの剣士がベリオンに声をかける。


 「安心しろ。お前達の倒した分は取らない。」


 「いえ、そうじゃありません。」


 「なら何だ?」


 「・・・強いんですね。あんな強いゴブリンも簡単に倒して。どうやってこんな強さを?」


 「単純に鍛錬を積んだことと、あとは経験だな。俺は、死ぬほど師匠にしごかれた。そして、ヤバい魔物と戦わされた。だから、慣れている。」


 「はあ・・・。」


 ベリオンからの予想外の答えに、剣士はやや困惑する。ゴドールに勝つほどの腕なのだから、才能云々の話が出てくると思っていたからだ。それが、努力と経験による賜物だと言うのだから、意外だったのだ。


 「それに比べて、お前達は明らかに経験不足だな。少しだけ、お前らの戦いが垣間見えたが・・・あれは何だ?お前達、模擬戦でもしていたのか?」


 「そ・・・そんなつもりは・・・!」


 「お前だけじゃない。後ろにいるメンバー全員聞け。仮にもお前達は、ゴドールから合格の太鼓判を押されたのだろう。なら、あんなみっともない戦いをするな。」


 「・・・。」


 ベリオンに指摘され、彼らは何も言えなかった。これが、ベリオンの強さを見ていないのなら、彼らは何かしら文句の一つも言っただろう。ランクは一つ上とはいえ、自分達と同じ新入りなのだ。駆け出しは、よく同期をライバル視して、同期の忠告を聞かないことも多い。彼らもその例に違わないタイプだった。


 だが、目の前でレベルの違う戦いを展開していたベリオンを見ていたために、彼らは何の反論もできなかった。彼の戦い方からすれば、自分達の戦いなど、お遊戯会に見えて当然だと実感していた。


 「まず前衛だ。盾持ち。お前はただ攻撃を受けていればいいと思っているようだが、それでは駄目だ。盾持ちは、単に攻撃を受け止めるだけじゃない。敵の注意を惹き、他の仲間に攻撃が行かないようにするのが仕事だ。あと、攻撃の受け方も悪い。あれではダメージが全部入ってしまう。うまく攻撃をいなして、被ダメージを減らせ。そうすれば、もっと長い時間盾役ができる。」


 「・・・そうだったのか・・・。」


 盾持ちは、ベリオンの言葉に、目から鱗が落ちる想いだった。彼は、単に盾で攻撃を受け止めていれば、それだけでいいと考えていたのだ。


 「剣士。お前は武器の選択を誤っている。何だ、その剣は?お前が使うには少々重い剣だろう。何故それを選んだ?」


 「・・・単純に攻撃力だけで選んだんです。そうすれば戦いやすいと思って・・・。」


 「どんなに強くても、自分に合っていない武器など選んでも無意味だ。使いこなせないで戦力を低下させるのが関の山だ。ゴブリンにさえ軽くあしらわれていたのがその証拠だ。あと、金も無駄になる。」


 「・・・はい。おかげで他の装備に手が回りませんでした・・・。」


 「武器は性能で選ぶな。自分に合っているかで選べ。仮に性能で選ぶにしても、その武器を使える実力を付けてからにしろ。」


 「・・・分かりました。」


 「・・・さて、前衛はこれくらいだな。次は後衛だ。」


 ベリオンは、今度は後衛の魔法使いと神官に話を振る。


 「は・・・はい!」


 「お前達は、ただの案山子か?見捨てて逃げるでもなく、支援するわけでもない。何故ただ単に突っ立っていた?」


 「・・・それは・・・。」


 二人は、何も言い返せなかった。気が動転して、完全に思考停止していたのだ。ベリオンの言葉に反論などでできようもない。


 「前衛が抑えている隙に、攻撃魔法が使えるのなら攻撃して援護しろ。支援魔法が使えるのなら前衛を強化しろ。回復魔法が使えるのなら癒して立て直させろ。そうすれば、ホブはともかく、通常のゴブリンに後れを取ることはない。掃討は無理でも、撤退はできたはずだ。・・・それとも、お前達は、魔法は何も使えないのか?」


 「い・・・いいえ、そんなことは・・・。」


 「わ・・・私は回復魔法がレベル1で、彼女は火魔法レベル2です。」


 「なら使え。魔法を使わん魔法使いと神官など、手足を縛られた戦士を同じだ。何の役にも立たない。」


 「は、はい!」


 「・・・あと、今回のようなラッキーは絶対に期待するな。次にこんな事態になれば、今度は死ぬと思え。お前達は、死なない演習や訓練をしているわけじゃあないんだぞ。命のやり取りをしているのを忘れるな。」


 「は、はい!」


 「・・・まあ、最初にも言ったが、何事も経験だ。この経験を糧に、次に繋げることができればそれ以上言う気はない。俺からは以上だ。」


 ベリオンはそう告げると、首のいっぱい入った革袋を担ぐ。


 「では、戻るとしよう。・・・お前らはどうする?俺達は一旦戻るが、まだゴブリン退治を続けるか?」


 ベリオンは、四人にどうするか尋ねる。


 「・・・俺達も戻ります。一度、パーティで話し合いたいと思います。」


 「そうか。なら、付いて来い。ミラン、構わないな?」


 「問題ない。後輩の面倒を見るのも先輩の務めだ。」


 「じゃあ行くぞ。はぐれるなよ。」


 ベリオン達は、町に戻るべくこの場を立ち去るのだった。

ベリオンなら、このパーティ五秒で殺せます。

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