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救世主魔王 魔勇者ベリオン  作者: レイス
第1章 魔勇者の資金稼ぎ編
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第26話 魔勇者ゴブリン狩りを行う

 「・・・もうすぐ、ゴブリンが縄張りにする一帯に着く。」


 ミランと組んだベリオンは、彼の知るゴブリンが縄張りとする場所へと向かっていた。ミランは、この町の周囲のことを熟知しており、どこをどの魔物が縄張りとしているかベリオンに説明した。


 「この町の周辺にいる魔物は、ウルフ、ゴブリン、トレント、キラーモールにグリズリー。あと、鳥系の魔物のクロウやワイルドバードだな。」


 「トレントとグリズリー以外は、数こそ多いが強力な魔物ではないな。」


 「だが、油断は禁物だ。弱いからこそ、数の暴力で押してくる。だから、その魔物の縄張りを知ることは、大勢に囲まれるリスクを減らすことに繋がる。」


 「・・・お前と組んで正解だったな。そういう方面の知識はないからな。助かる。」


 「おいおい、この程度で感謝してもらっては困る。ここからだ。」


 ミランはそう言うと、ジャンプして木の上に跳び乗る。


 「・・・さて、ゴブリンはどこかな・・・?」


 ミランは、木の上からゴブリンがどこにいるのか探ろうとする。


 (・・・さすがは猫族。並外れた跳躍力だ。ステータス以上に、こういった能力は素晴らしい。普通の人間なら、登る必要があるからな。)


 「・・・!いたぞ!ここから北に100mくらいの場所に、五体ほどいるな!」


 「北100mだな。分かった。」


 ベリオンは、グレートソードを構えると、ゴブリンのいる地点に静かに近付いていく。


 そんなベリオンを見るミランは、ベリオンの動きに感嘆していた。


 (・・・あんな重い剣を持っているはずなのに、足音も静かで動きに隙が無い。・・・やはり、ただ者ではないな。)


 やがて、ベリオンはゴブリンの集団と接触する寸前の所まで来た。


 ゴブリンとは、人間の子供程度の背丈の人型の魔物で、力は弱く、知能も低いが、武器を扱う程度の知能はあり、多産で一体見つければ十体は周囲にいるとされている。単体では一般人でも武装すれば殺せるほどで、ウルフと同じく最弱の魔物の代名詞である。だが、数を活かせば脅威度は跳ね上がり、油断した冒険者パーティが全滅した例もある。


 ベリオンは、敵が気付く前に終わらせるべく、一気に近付く。圧倒的なステータスによる速さは、ゴブリン程度では視認することなどできず、ゴブリン達はベリオンが近付いたことにも気付くことなく、首を刎ねられていた。


 「・・・まず五体。」


 「・・・驚いたな。あっという間に五体の首を刎ねるとはな。」


 ゴブリンを始末したベリオンの許に来たミランは、その手際の良さに驚いていた。


 「いい位置にいたからな。だから、全部の首を刎ねることができた。」


 (・・・いい位置にいた、か。あれは、その位置に来たタイミングで仕掛けたからできたことだ。おまけに、俺もあいつが接敵して攻撃したことが分からなかった。・・・凄まじい男だ。)


 ミランは、ベリオンの凄さに、ただただ感心した。こんなこと、中堅どころか高ランク冒険者でもできる者はそういないからである。


 「・・・さて、このゴブリンはどうするか・・・。」


 「ゴブリンは、素材にはならない。肉も食えないからな。持っている武器が辛うじて売れるだろうが・・・こいつらの装備は売り物にならないな。」


 ミランは、ゴブリンの所持する装備を手に取り、やれやれといった様子で弄る。皆、ボロボロで錆び付き、とても売り物になるとは思えなかった。


 「まあ、害虫のような奴らだから、倒したことを証明するものを持っていけば、追加報酬がもらえるがな。」


 「よし、ならこいつらの首でも持って帰るか。」


 「・・・本気か?」


 ベリオンの提案に、ミランはドン引く。普通、ゴブリンの討伐証明は、耳や指を切り落として持っていくのだから。


 「ああ。素材を入れる用の袋をたくさん買っておいたからな。安かったぞ。これだけ買って、銅貨一枚だ。質も悪くないのにもったいないな。」


 ベリオンは、ゴブリンの首を革袋に入れていく。それを見ていたミランは、いろんな意味で唖然としていた。


 「・・・さて、次はどこにいるだろうな?また、木に登るのか?」


 「いや、その必要はない。」


 ミランは、地面に耳を当てる。


 「・・・少し遠いが、ここから東に500mほどの場所に十体ほどいるな。」


 「耳がいいとは聞いていたが・・・まさか、そんな芸当もできるとは。」


 「耳の良さと身のこなしが、俺達猫族の武器だ。索敵と奇襲ならお手の物だ。」


 「では、今度は奇襲のうまさを見せてもらおうか、先輩。」


 「ああ。Dランク冒険者の実力を見せてやる。」


 二人は、ゴブリンがいるとされる場所に向かうのだった。




 「・・・いたな。お前の言う通り、十体だ。」


 木の陰に隠れ、ベリオンとミランはゴブリン達の様子を窺っていた。ミランが告げた通り、数は十体いて、周囲を探っているように見えた。


 「何か探しているように見えるが・・・俺達にはまだ気付いていないようだな。」


 「ここは、奴らが気付かないギリギリの地点だ。これ以上近付けば、確実に見つかる。気付かれたところで大した被害にはならないが、仲間でも呼ばれたりしたら面倒なことになる。」


 「ならば、気付かれる前に全部始末するのが最善か。・・・できるのか?」


 「あれくらいなら問題ない。・・・今度は俺一人でやる。見ていろ。」


 ミランはそう言うと、不意に姿が消える。


 (・・・これは・・・スキル【隠密】が発動したな。隠密行動を取った際、効果を発揮するスキル。なるほど。並の敵なら容易に奇襲を仕掛けられるな。)


 しばらくして、ゴブリン達の首元から夥しい血が噴き出し、地に伏していく。すべてのゴブリンが倒れた後、その場にはミランが、手に血の付いたダガーを持ち、立っていた。


 「・・・もういいぞ、ベリオン。」


 「・・・あっという間だったな。さすがはDランク。」


 ベリオンは、ミランの腕前を称賛する。ミランは照れ臭そうに顔をかく。


 「いやいや。俺よりお前の方が手際がよかった。まだまだだ。」


 「いや、俺の倍の数をこんな短時間で仕留めたんだ。お前の方が凄いだろう。」


 ベリオンが言うことは、お世辞でもなんでもない。ステータスは並外れているが、ただ強いだけの自分では、敵に気付かれずにこれだけの数を仕留めるのは難しい。だからこそ、隠密行動に長けているミランの腕前を称賛したのだ。


 「そうか?お前なら、コツさえ掴めばすぐに俺を追い抜くと思うな。」


 ミランは、ゴブリンの耳を切り取りながらそう言う。


 「そうは思えんな。そこまで至るには、技術もそうだが経験も必要だ。それに、資質もだ。俺は、戦う以外の資質には欠けているみたいだからな。お前のようにはなれんよ。」


 ベリオンは、ゴブリンの首を切り落としながらそう言う。ミランは、そんなベリオンの言葉を買い被りすぎだと笑っていたが、ベリオンは本心からそう言っていた。


 「・・・さて、回収も済んだし、次の場所に・・・。」


 その時、突然悲鳴のようなものが聞こえてきた。


 「!?今のは!?」


 「・・・向こうからだ!声の主は、女のようだ!」


 「向こう・・・行商人がゴブリンにでも襲われたのか?」


 「・・・いや、距離的に街道じゃない。森の中だ。おそらく、冒険者だな。」


 「冒険者・・・。ここにいるということは、俺と同じゴブリン退治の依頼を受けて来たわけか。・・・悲鳴を上げるということは、油断でもしたな。雑魚で知能が低いとはいえ、数がいれば脅威だというのに・・・。」


 「急ぐぞ!俺は、木を伝って行く!お前は俺に付いてきてくれ!」


 「分かった。」


 ミランは再び木に跳び乗ると、声をした方に向かっていく。彼は、前に生えている木の枝に跳び乗るを繰り返し、先へと進んでいく。


 そんなミランに、ベリオンは並走する。重い剣を持っている上、足場の悪い森の中を、まるで整備された道を走っているかのようにである。しかも、ベリオンの方が、スピードが速く感じた。


 (・・・あんな装備と足場であの速さ・・・。仮に俺が敵で、あいつから逃げようとしても、絶対に追いつかれるだろうな。確実にあいつの方が速い。・・・敵でなくてよかった。)


 ミランは、ベリオンの走りを見、彼が敵でないことに心底安堵していた。

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