第21話 魔勇者勝利を驚愕される
「ベリオンさん!無事だったんですね!」
訓練場から戻ってきたベリオンを、アイク達が迎える。その表情から、相当心配していたようである。
「ああ。無事に合格したぞ。」
「さすがはベリオンさんだ!合格すると信じてたぜ!」
「でも、試験官の名前を聞いて肝が冷えたぜ。あんな強い人を試験官にするなんて、ギルドも意地が悪いな。あんなのと戦って合格もらうなんてできっこないって。」
「まったくだ。でも、ベリオンさんなら大丈夫だと思ってたけどな。」
(・・・どうやら、あの試験官は相当有名だったようだな。まあ、関係ないか。)
ベリオンは、カウンターの前に行くと、受付嬢にゴドールからもらったものを見せる。
「無事に合格した。これが、合格証だ。」
それは、金色の金属のプレートだった。プレートには大きく、『合格』と彫られていた。
「・・・え?・・・この合格証・・・まさか・・・?」
ベリオンの見せた合格証を見た受付嬢は、驚愕の表情を浮かべる。それを見た周囲の冒険者達も、ざわざわと騒ぎだしていた。
「?どうした?何か問題でもあるのか?」
「・・・これ・・・試験官に勝利した際に出される【特別合格証】なんですけど・・・。・・・まさか・・・ゴドールさんに勝ったんですか?」
「ああ。それがどうした?」
「!す、すみません!ちょっと待ってください!」
受付嬢はそう言い残すと、どこかへ行ってしまう。一人残されたベリオンは、何が何なのか分からず、困惑した。
「・・・何故あの受付嬢は慌てていた?試験官に勝ったくらいでどうしてあそこまで慌てる必要がある?」
訳が分からず、アイクに理由を尋ねるベリオン。だが、当のアイク達もまた、唖然としていた。
「・・・まさか・・・合格って、判定じゃなくて、勝って合格した・・・?」
「嘘だろ?・・・合格とは聞いたけど、まさか勝ってなんて・・・!」
「いくらベリオンさんでも、勝って合格なんて無理だと思ってたのに・・・!」
「マジかよ・・・!?」
「!?・・・どうした?」
アイク達の反応に困惑するベリオン。すると、冒険者の一人が、呆れとも戸惑いともいえる様子でベリオンに声をかけてきた。
「お前・・・知らないのか?【豪槍】のゴドールを?」
「?知らん。俺は、幼い頃から外界から離れて修行していたからな。世間のことなど知らん。その・・・【豪槍】・・・とはなんだ?」
「【豪槍】のゴドール。この町を拠点とする冒険者の中で、三強と呼ばれている実力者だ。冒険者ランクはCだが、実力ならBクラスだって言われてる。様々な強敵をその槍で倒してきた強者で、いろんな功績を立ててきたんだ。彼に憧れて冒険者を志す奴もいるくらいの有名人だぞ。」
「なるほど・・・この町で一番強い冒険者の一人か。それを倒してしまったから、あんなに慌てていたわけか。」
冒険者にランクがあることは聞いていたが、今のベリオンには、ゴドールのランクが高いのか低いのかどうか分からなかった。だが、冒険者達の反応を見て、それなりに高いのだと推察できた。
「・・・あんた、本当にゴドールに勝ったのか?」
「ああ。信じられないなら、直接本人に聞けばいい。」
「・・・。」
ギルド内の空気が変わるのを、ベリオンは感じた。今までの明るい雰囲気とは全く逆の、動揺や困惑といったものである。
「・・・まさか、【豪槍】にまで勝つなんて・・・。ベリオンさんどれだけ強いんだ・・・?」
「ウルフの群れといい、トレントの大群といい、ベリオンさん規格外すぎるだろう?」
アイク達まで、ベリオンの想像以上の強さに若干引いていた。
(・・・そんなに大ごとなのか?別に、冒険者でなくても、強い者はいくらでもいる。そんな人間が試験を受ければ、こうなってもおかしくないと思うのだが・・・?)
当のベリオンは、周囲が困惑する理由が分からず、別の意味で困っていた。
「ベリオンさん!」
その時、受付嬢が戻ってきた。
「支部長が会いたいと言っています。来てください。」
「支部長?」
「ここの冒険者ギルドの責任者です。冒険者ギルドの支部は、本部から派遣された人物が支部長として統括しています。」
「つまり、このギルドの一番偉い人間か。それが何故、俺に会いたいと?」
「理由は、直接会えば分かります。どうぞ、こちらへ。」
受付嬢に案内され、ベリオンは支部長のいる場所へと向かうのだった。




