第19話 魔勇者冒険者ギルドへ行く
「・・・驚きました。まさか、ベリオンさんがそんなレアなユニークスキル持ちだったなんて・・・。」
悪徳店主の店から出た後、アイク達は、ベリオンが意外なスキルを持っていたことに驚いていた。
「種族固有のユニークスキル以外は、神に選ばれた人間にしか与えられないっていうレアなスキルなのに・・・。それを持っているなんて、さすがです。」
「腕も立つし、アイテムの鑑定もできるなんて、ベリオンさん絶対に大物になれるな。」
「・・・でも、どうするこれ?」
「そうだな・・・。俺達が使える店なんて、どこもあんな感じで安く買い叩かれるしな・・・。」
「悔しいけど、あの店が一番高く買い取ってくれるんだよな・・・。」
ベリオンのことを褒めるアイク達だったが、素材を売る店がないことを思い出し、気が沈んだ。
「せめて、中民が使える店が使えればな・・・。」
「・・・中民か。・・・でも、俺達が中民になるのなんて、夢のまた夢だぜ・・・。」
「・・・あとは・・・。・・・ベリオンさん、冒険者に興味はありませんか?」
「冒険者か?興味はある。この町に来たら、なろうと考えている。」
「なら、冒険者になってから売った方がいいですよ。冒険者ギルドなら、正規の価格で買い取ってくれますから。」
アイクは、冒険者となってから素材を冒険者ギルドに買い取ってもらえばいいと提案した。
「・・・だが、時間がかからないのか?それに、お前達の用事もあるだろう。」
「試験は、簡単な実技試験だけらしいですから、一日もかからないそうですよ。それに、俺達の用事は、用事といっても急ぎではないので大丈夫です。」
「・・・そうか。なら、そうするとしよう。冒険者ギルドはどこだ?」
「案内しますよ。こっちです。」
アイク達は、ベリオンを冒険者ギルドへと案内する。ベリオンは、まだ見ぬ冒険者という存在に、胸を躍らせていた。
「ここが、冒険者ギルドです。」
アイク達に案内されたベリオンは、町の中央にあるひと際大きな建物の前にいた。
「・・・他の建物よりデカいな。」
「ここのギルドは、王都にあるギルド本部に匹敵するほどの規模らしいですよ。つまり、それだけ大勢の冒険者が所属しているということです。」
「ここで、試験を受けるのか。」
「そうらしいです。・・・もっとも、俺達はあくまで人伝に聞いただけですから、詳しいことはギルドの職員に聞いてみないとですが。」
「そうか。なら、入るとしよう。」
ベリオンは、ギルドの扉を開ける。
ベリオンが中に入ると、ギルドの中にいた人間達が、一斉に視線を向ける。彼らは、装備はバラバラで統一感がなく、年齢も種族も同様だった。
「・・・誰だ、あいつ?見ない顔だな。」
「たぶん、冒険者になる試験を受けに来た奴だな。あの身なりからして、村人だな。大方、中民狙いだろう。」
「・・・可哀そうな奴。冒険者になれば身分が上がるからって、誰でもなれるわけじゃないのにな。」
「いるんだよな。冒険者になればいい暮らしができると思って受ける奴。」
「・・・何者だ、あいつ?・・・身なりは村人だが、隙がないぞ?」
「おいおい・・・。あんな貧相な装備しかないなんて、どこの貧乏村の人間だ?」
「・・・ヤバそうだな・・・。」
ベリオンの耳に、周囲の人間の会話が聞こえてくる。大半が、好機と憐憫だったが、中には、ベリオンに対してただならぬ何かを感じたのか、警戒するものもいた。
ベリオンは、周囲を見渡しながら、冒険者達を見る。彼らは、今まで見てきた村人や町人よりも強いように感じた。
(・・・ここにいる人間は、全員レベル10以上だな。さすがに一般人よりは強い。)
[よく分かるね。]
(詳しい強さまでは分からん。だが、だいたいの強さは、雰囲気やしぐさで分かる。長い間、戦いの中に身を置いてきたからな。)
[なるほど。強者のオーラってやつかな?]
(そんな感じだな。・・・さて、あそこが受付のようだな。)
ベリオンは、奥にあるカウンターに向かう。カウンターの向かいには、職員と思しき女性が立っていた。
「冒険者ギルドへようこそ。何か御用でしょうか?」
女性職員は、営業スマイルを浮かべ、ベリオンに丁寧に尋ねる。
「・・・冒険者になりたいのだが。」
「冒険者への登録ですね。その場合は、試験を受けてもらいます。」
「内容は何だ?」
「試験官との模擬戦となります。試験官に認められれば、勝敗に関係なく冒険者となれます。」
「勝敗関係なく?勝たなくていいのか?」
「あくまで、冒険者になるための資質と心構えを見るための試験ですから。」
「そうか。・・・分かった、すぐに試験を受けたい。」
「では、もうしばらくお持ちください。現在、試験を受けている方が一人いますので、その方が終われば・・・。」
その時、受付嬢の言葉を遮るかのように大きな音がした。
「・・・今の音は?」
「・・・訓練場で行われている模擬戦ですね。おそらく、試験を受けている方が、壁に叩きつけられたのでしょう。」
「・・・慌てている様子がないということは、これは日常茶飯事ということか。」
ベリオンは、周囲の冒険者達と受付嬢の様子から、これも冒険者の日常なのだと推察する。彼らは誰も、驚いた素振りを見せていなかったのだ。
「はい。試験になれば、よくあることです。・・・あ、どうやら終わったようです。」
すると、奥の通路から、職員と思われる二人の男性は、ボロボロになった男性を担架に乗せ運んできた。二人はさほど焦る様子もなく、男性を医務室と書かれたプレートの付いた部屋に運んでいく。
「・・・あれは、不合格か?」
「はい。実力がない人間では、冒険者としてやってはいけませんので。」
「確かにな。魔物退治を生業とするなら当然か。」
「・・・あの、あんな光景を見てもまだ、冒険者の試験を・・・。」
「受けるに決まっている。そのために来た。」
「・・・分かりました。では、この書類にサインをお願いします。」
受付嬢は、ベリオンに書類を手渡す。
書類には、試験の際に怪我をしたり、最悪死亡しても、ギルドは責任を負わないといった旨が書かれていた。
「・・・分かった。」
ベリオンは、書類にサインを記入する。
「ベリオンさんですね。では、これより訓練場に進んで試験を受けてもらいます。奥の通路を進んでください。」
「分かった。・・・お前達はどうする?」
ベリオンは、自分に付き添ってくれているアイク達に尋ねる。
「俺達は、別に冒険者になる気はないのでいいです。ここで待っていますね。」
アイク達は、冒険者になる気はないと言って、ここで待つことにした。
「・・・では行ってくる。」
ベリオンは、訓練場へと通じる廊下へと消えていく。その姿を見た冒険者達は、ある者はベリオンの合否を賭けたり、無謀だとせせら笑ったり、生きていればいいなと冷ややかな視線を向けたりしていた。
だが、その中でも二人の男は、他の冒険者とは違った視線をベリオンに向けていた。
一人は、青いプレートアーマーを着た水色髪の青年で、側には身の丈程ある青い大剣が置かれていた。
もう一人は、赤い軽装の鎧を着た赤髪の青年で、腰に剣を差していた。
「・・・。」
「?どうしたんです、リーダー?」
「・・・あの男、ただ者じゃないな。」
「あの男・・・。ああ、あの村人。」
「ただの村人とは思えないな。」
「・・・フロスト。俺は一旦席を外すぜ。」
赤髪の青年は、フロストと呼んだ水色髪の青年にそう告げると、訓練場へ続く廊下へと向かう。
「・・・フレムも気付いたか。なら、僕も行くとしよう。」
フロストは、側に置いてある大剣を手にすると、フレムと呼ぶ赤髪の青年の後に続くように、廊下へと向かう。それを見た周りの冒険者達は、顔を見合わせるのだった。
死ぬのはどっちなんでしょうか?




