第17話 魔勇者町に驚く
「何とか着いたな。」
「無事に着けてよかった・・・。あの時は、生きた心地がしなかったぜ。」
「これも、ベリオンさんのおかげだ。」
「ベリオンさん、ありがとうございます。おかげで全員、無事に町まで着けました。」
村を出立してから三日後、ベリオン達は無事に、隣町へと到着した。
「・・・これが・・・隣町・・・?」
だが、ベリオンは驚愕していた。隣町は、アユムの記憶にある町の姿と様変わりしていたのだ。
アユムの記憶にある隣町-ネイバーの町と呼ばれていた-は、町とは名ばかりの田舎町で、大きな建物は教会と町長の家を除けば数軒くらいしかない町であった。だが、現在の町は、周囲を高い城壁で囲まれ、建物の屋根の部分が少し見えるだけだった。
(・・・アユムの記憶とずいぶん違うな。十一年も経っていれば、町も変わるだろうが・・・これは変わりすぎだろう・・・。)
「・・・デカいな・・・。」
「ベリオンさんは、こんな大きな町は初めてですよね。・・・あ、失礼。町自体初めてでしたね。」
「いや、気にするな。・・・ところで、この町は、なんという町なんだ?」
「この町は、ネイバーの町です。昔は、今よりも小さな町だったんですが、近隣の森の魔物の素材が上質で高く売れることが判明したことで、冒険者が多く集まり、ここまで大きな町になったんです。今では、冒険者の町と呼ばれるほどです。ああ、他にも似たような町はありますが、ここは比較的新しい町で、まだまだ発展しています。」
「・・・冒険者の町か・・・。」
アユムの記憶に、そのように呼ばれている町が二つほどあった。まさか、ネイバーの町までそうなっていたなど、ベリオンは思わなかった。
(この町は、特産物も特に何もない町だったが・・・。あの森の魔物のおかげでここまでになったというわけか。皮肉なものだ。)
「でも、中民には住み心地のいい町ですけど、俺達下民には住みにくい町なんです。俺達が使える施設は、制限されていると父さんから聞きましたね。宿とか、酷いんですよ、本当に。」
「・・・宿以外も酷いのか?」
「ええ。店も、胡散臭い店しか使えません。」
「そこまで言われると、どんなものか逆に興味が湧くな。」
「見ない方がいいですよ。・・・俺達だって、用事がなければこんな町、行きたいとも思いません。」
アイクは、嫌そうな顔で町を見つめる。相当嫌な目に遭ったであろうことは、容易に想像できた。
「アイクさん、そろそろ行きましょう。あと、番兵に森でトレントの大群に襲われたって、報告しないと。」
「そうだな。ベリオンさん、そろそろ町に入りましょう。」
「うむ。」
ベリオン達は、町に入るために城門に向かう。城門の前には、兜を被った番兵が見張りをしていた。見たところ、若い兵士のようだった。
「!アイクさんじゃないですか。」
アイクの姿を見た番兵は、まるで顔見知りのような感じで話しかけてきた。
「ああ、今日はリックさんが当番の日だったか。運がいいよ。君の先輩じゃ、色々嫌味を言ってきて、通るのに時間がかかるからな。」
「ははは・・・先輩達にも参ったものです。」
「・・・アイク。この番兵は、顔見知りなのか?」
「はい。彼は、リックさんと言って、この町の番兵の中で一番若いんです。他の番兵と違って、俺達と普通に接してくれるんです。」
「初めまして、リックです。」
リックと呼ばれた番兵は、ベリオンに深々と頭を下げる。
「ベリオンだ。・・・アイク、さっきお前は、普通に接してくれると言ったな。・・・他の番兵は、そうではないのか?」
「ええ。・・・ここだけの話ですけど、彼の先輩達は、俺達が来るたびに、嫌味ばかり延々と言うんです。しかも、説教臭く。で、通る許可を出すのが何十分後、下手をすれば一時間後だった時もありました。」
「・・・そこまでいけば職務怠慢だな。誰も咎めんのか?」
「咎めませんよ。・・・上司も詰め所で笑っている始末ですから。」
「・・・。」
(・・・何だそれは?部下のサボりを見て笑っているとは・・・。それでも上司なのか?)
ベリオンは、そんな上司の行動に呆れた。部下が問題を起こさないように教育するのが上司だというのに、問題を起こしても何も言わないなど、上司も仕事をしていないのではないかと思ったのだ。
(・・・アユムの記憶にも、そんな人間がいたようだが、こんな人間がまかり通っているとは・・・。不愉快な話だ。)
無能な人間がのさばっていられる現状に、ベリオンは不快感を募らせていたが、今はアイク達の前ということもあり、表情には見せなかった。
「リック、早く通してくれよ。俺達も、用事が色々あるんだ。」
「早くしないと、先輩達来るだろ?」
アイクの仲間達が、リックを急かす。
「はいはい。じゃあ、今から手続きをしてきますね。村人五人で出しますね。」
「ああ・・・ベリオンさんは、村人じゃないんだ。なんでも、山の中でずっと暮らしていたらしい。」
「へー・・・。でも、町に住んでいない人は、原則、村人として扱われますから・・・。」
「構わん。今は、村人でいい。早く入りたい。」
ベリオンは、自分もアイク達と同じ扱いで構わないとリックに言う。
「分かりました。では、手続きをしてきますね。」
リックは、詰め所の方に入っていく。しばらくして、何か書類のようなものを持って、リックは戻ってきた。
「どうぞ。これが、町に入るための許可証です。これがないと、町の外の人は、町に入れません。」
「・・・なるほど。」
「ああ、それとリックさん。俺達、森を通っている時、トレントの大群に襲われたんだ。」
「トレントの大群!?トレントって、群れをなす魔物ではないはずじゃ・・・?」
「最悪、異常発生の予兆かもしれない。一応、伝えておく。」
「分かりました。私の方から、上に伝えておきます。」
「ありがとう。」
「では、よいご滞在を。」
城門を通り、町へと入っていくベリオン達を、リックは深々と頭を下げ、見送るのだった。




