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救世主魔王 魔勇者ベリオン  作者: レイス
第1章 魔勇者の資金稼ぎ編
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第13話 魔勇者村長の本心を知る

 「・・・何故、その話が嘘だと分かる?」


 ベリオンは、村長に理由を尋ねる。今まで、お人よしの男性と思って会話していたベリオンだが、彼の雰囲気が変わったことで、どれほどの人間か見極めるために会話をすることにしたのだ。


 「・・・ベリオンさん。お話しても構いませんが、この話は、他言しないでいただきたいのです。」


 「他言無用・・・。」


 「もし、領主にでも知られれば、村が取り潰されるかもしれない話です。当然、話した父さんや俺ばかりか、村の人間も殺されるでしょう。」


 「・・・それは大ごとだな。分かった。他言はしない。単なる興味の範疇で聞こう。」


 「ありがとうございます。」


 村長は深々と頭を下げると、ベリオンに理由を話し始める。


 確かに、彼らも最初は国の発表を信じていた。無理もない。恩人が暗殺されたのだから。だから、その話を鵜呑みにし、当時は他種族排斥に協力的だった。この村を復興した際も、この地に忌まわしい他種族を入れては穢れると言い、勇者を弔うと称して、他種族が流れ着いてきたら即殺害し、領主に首を献上していたのだという。


 「・・・つまり、他種族を見つけただけで殺害していたわけか。相当な憎しみだな。」


 「情けない話ですが、私達にとって、勇者様は本当に希望だったのです。それを奪った奴らが許せない。・・・今思えば、異常でしたが、当時はそればかりが頭にあり、冷静な判断ができなかったのです。それに、領主様もこの村には、税の面などで様々な便宜を図ってくれていました。悪く言えば、特権にどっぷり浸かっていたのです。」


 「どうやって冷静な判断を取り戻した?」


 「・・・きっかけは偶然でした。村の近くにある草原。そこに、小さな穴があったのです。」


 (・・・あの草原の穴か・・・。確か、アユムが引き取っていた子供達の死体を焼き払うために使われたはずだ・・・。)


 「・・・あの穴から、大量の白骨が見つかったのです。・・・最初は獣かと思いましたが、それらは全て、人間の子供の死体だったのです。」


 何故こんな所に死体があるのか。疑問を感じた村長と村人達は、領主に白骨のことを報告した。だが、領主からの言葉に、彼らは耳を疑った。


 「・・・領主様からは、このことは忘れて、他言するなと言ってきたのです。・・・大量の金貨が入った袋を手渡して。」


 「・・・なるほど。あそこの死体は、見られては不都合なものだったわけか。」


 「はい。いくら、学のない我々でも、あの死体は見られてはまずいものだったことは分かりました。ですが、どうしてもその子供達のことが気になり、密かに調べてみました。・・・その結果、あの死体は、勇者様が引き取った孤児達であることが分かりました。」


 「よく分かったな。ただの白骨から、そこまでよく導き出したな。」


 「穴をよく調べてみました。そして、穴の中に埋まった、日記をいくつか見つけたのです。」


 「日記・・・。」


 その日記には、勇者に助けられ、孤児院に引き取られたこと、いろんな種族の子供がいて、皆家族のように楽しく暮らしていること、勇者が自分で稼いだお金だけでは足りず、自分達も一緒に仕事を手伝っているが、それも悪くないこと、勇者の仲間の人達がいて、色々遊んでくれていることなど、幸せな内容が書かれていたのだ。


 「その日記を読むうちに、私達は、国の発表がおかしかったことに気付き始めました。勇者様のお仲間が、孤児院にいて子供達と暮らしていたことなど、私達は知りませんでした。国の発表では、勇者様はたった一人で多くの孤児の面倒を見ており、国からの援助があっても経営が厳しく、貧しい暮らしをしていたと言われていました。」


 「しかも、勇者様は、どんな種族も分け隔てなく接し、皆家族のように暮らしていたというのも知りませんでした。俺達も、勇者様は人間の英雄としか捉えていなかったんです。引き取っていた孤児も、皆人間だとばかり思っていたのです。国もそう発表していましたから。」


 「・・・その日記の内容は、お前達の知る勇者像とかけ離れていたというわけか。」


 「その日記を密かに入手して数日後、領主様の配下の者が来て、忌まわしい穴なので埋めてしまうと言い、穴は崩落させられて埋められましたが・・・私達はその前に、色々なものを入手しました。それらは、国の発表を覆しかねないものばかりでした。」


 (・・・穴の中は焼き払われたと思っていたが・・・埋めるなどして残ったものも意外とあったというわけか。・・・それを見たことで、彼らは真実に気付いたというわけか・・・。)


 [勇気があって頭のいい子達だったんだね。アユムの引き取った子供達は。]


 (ああ、驚きだ。)


 ベリオンは、アユムの記憶にある子供達が、単に守られるだけの存在ではなかったことに、驚くと同時に喜んでいた。


 「それからも色々調べ、分かったことがいっぱいありました。他種族への侵攻は、勇者様が殺される前から計画され、行われていたこと。それに、勇者様が猛反対されていたこと。さらに、裏切ったとされる仲間達も、褒美や待遇は悲惨でしたが、勇者様と良好な関係をずっと築いていたこと。勇者様を殺したとされるナイは、名目は団長でしたが、実質一般兵と変わらず、危険な仕事ばかりさせられていたこと。・・・苦労しましたが、これほどまでの事実を掴むことができたのです。」


 「この情報から、国が言っていたことは嘘だったと思うようになったわけか。」


 「はい。・・・他種族との戦いを望んでいなかった勇者様を、彼らが暗殺させるなどあり得ません。自分達の首を絞める行為です。それに、仲間が裏切ったという話も、まったく信憑性のないものでした。寧ろ、勇者様を妬むより、扱いを改めない国の方に怒りをぶつけるのが当然の状況だったのです。」


 「そこまで気付いて、我々は自分達の仕出かした過ちに気が付いたのです。勇者様の死で、冷静さを失い、よからぬ者に扇動された・・・。情けない話です。」


 「・・・だから、嘘だと言い切ったのか。」


 「それから村は、他種族の排斥をやめ、保護するようにしたんです。ベリオンさんの泊まっている宿の店主、ライネルさん。彼は、冒険者をしていたんですけど、怪我のせいで引退して、この村に逃れてきたです。亜獣人では、町で満足に生活できませんから。」


 「もっとも、それによって、領主様からの便宜はなくなりましたが・・・。ですが、今までが異常だっただけで、これが本来の村の扱いなのです。我々は、今までの罪滅ぼしとして、それを受け入れたのです。それに、私達は、この村を復興し、勇者様の魂を弔うためにここにいるのです。勇者様を殺した国の援助に甘えては、弔いになどなりません。」


 「今更ながら、勇者の遺志を継ごうと思ったというわけか。」


 「そんな上等なものではありません。・・・ただのエゴですよ。・・・その感謝状と同じように。」


 「・・・この感謝状も、もう偽物だと気付いているわけか。」


 「!ベリオンさんは、それが既に偽物だと分かっていたのですか?」


 「・・・ああ・・・なんとなく・・・だがな。」


 まさか、自分がアユムとブライの融合体で、アユムの記憶からあれが偽物だと分かったと言えるはずもなく、ベリオンははぐらかす。


 「・・・ならば、分かるでしょう。この村の復興も、他種族を匿うようにするようになったのも、結局は自己満足なのです。本気で勇者様を助けたいと思うのなら、自分自身で勇者様に直接金を手渡せばいいだけです。孤児院の経営に最初から協力すればいいだけです。・・・そんな簡単なこともできない私は、結局自己満足がしたいだけの人間なのです。・・・だから、あんなものに騙されるのです。」


 「・・・あえて残しているのは、戒め、か。」


 「ははは・・・そんな上等なものではありませんよ。今更捨てても、何か言いがかりを付けられそうだからです。・・・ですが、そう捉えてくださるのはありがたいですな。」


 村長は、自嘲気味に微笑む。ベリオンには、その微笑みが、まるで泣き顔のように見えていた。

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