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救世主魔王 魔勇者ベリオン  作者: レイス
第1章 魔勇者の資金稼ぎ編
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第10話 魔勇者ウルフの群れを一掃する

 「くるぞ!全員、武器を構えろ!」


 剣を持つ体躯のいい青年を筆頭に、村人達は、鎌や農具といったもので武装し、ウルフの襲撃に備える。


 しばらくして、ウルフの群れが村人達の目に入る。数は、十匹をゆうに超え、下手をすれば倍以上いるだろう。そして、先頭を走るウルフは、他のウルフより一回りほど大きく、強そうである。


 「!数が多いぞ!ニ十匹・・・いや、もっといるぞ!」


 「しかもあれ・・・ハイウルフじゃないか!?」


 「まずいぞ!ハイウルフになんて勝てるわけ・・・!」


 ウルフの想像以上の数、そして、一般の人間に敵う相手ではないハイウルフの出現に、村人達は怖気づく。だが、剣を持つ青年は、諦めていなかった。


 「狼狽えるな!俺がハイウルフを仕留めれば、まだ勝算がある!ハイウルフさえ仕留めれば、他のウルフ達は逃げ出す!」


 「・・・そうだ!アイクさんは村で一番腕が立つ!アイクさんなら・・・!」


 「行くぞ!アイクさんを援護するんだ!」


 剣を持つ青年-アイクと呼ばれていた-に鼓舞され、村人達はウルフの大群に向かって行こうとしたその時、彼らの背後から、凄まじい速さで飛んでいくものがあった。それは、ウルフにぶつかると、ウルフを吹き飛ばす。


 「!?」


 倒れたウルフの頭には、深々と矢が突き刺さっていた。


 「だ・・・誰だ!?」


 アイクは後ろを向く。そこには、弓を構えたベリオンと、大量の矢を持つ宿の受付娘の姿があった。


 「!?ライネルさんの娘!?・・・の隣にいるあいつは誰だ?」


 「!旅人さん!?アイクさん!彼は、さっき村に来た旅人さんだ!」


 「旅人!?・・・しかし・・・どうして旅人が・・・?」


 突然のことに困惑する村人達。ベリオンは、そんな彼らなど意に介さず矢を放ち、一匹、また一匹と、ウルフを仕留めていく。




 (・・・【アナライズ】!)


 戦闘開始前、ベリオンは村人達のステータスと、敵であるウルフのステータスを確認した。


 (・・・村人のレベルは、剣を持っている奴・・・アイクと書かれているな。そいつがレベル5で、それ以外は、最大で3だな。ステータスが低いのは、村人故か・・・。・・・だが、ウルフ達も、ハイウルフのレベル6より高い奴はいないな。これなら問題ない。)


 ベリオンは、ウルフ達を次々と矢で射抜いていく。そのスピードは、尋常でないくらい速かった。あっという間に、ウルフは全滅し、ハイウルフだけになっていた。


 「・・・凄い・・・!お客さん、本当にお強いんですね!」


 受付の娘は、ベリオンの凄まじい腕前に歓喜した。彼女の父は、引退前は腕のいいアーチャーで、遠くの獲物でも仕留める百発百中の腕前だった。だが、彼の腕前は、そんな父を凌ぐものだったのだ。


 「敵が弱すぎるだけだ。ハイウルフ達をも従えられるようなさらに上位のウルフなら、ああもいかんだろう。」


 「・・・でも、どうしてハイウルフを仕留めなかったんですか?お客さんの腕なら・・・。」


 「・・・この村の危機は、この村の人間が本来解決すべきだ。これは、俺の寝食を守るためにやったにすぎん。一番の大物は、彼らがやらねばならない。」


 ベリオンはそう言うと弓を下ろし、構えを解く。


 (・・・さて、村一番の戦士とやらのお手並みを拝見することにしよう。)




 「・・・あの数のウルフを・・・こんなアッサリ倒すとは・・・!」


 アイクは、謎の旅人ベリオンの腕に脱帽した。自分も腕に覚えがあるが、この数のウルフを、こんな短時間に全滅させるなど不可能だからだ。それを苦も無くこなす彼に衝撃を受けるのは当然だった。


 「!アイクさん!ハイウルフはまだ諦めてない!最後まで戦う気だ!」


 一方のハイウルフは、仲間を殺されたことに激怒している様子で、憎悪に満ちた瞳で村人達を、ベリオンを睨んでいた。


 「・・・旅人さんにこれ以上迷惑はかけられない!お前の相手は俺だ!皆は手を出すな!あんなのにやられたら、間違いなく即死だぞ!」


 アイクは他の村人に手を出さないよう制すると、ハイウルフに勢いよく切りかかる。ハイウルフはそれをかわすと、ベリオンに向かって行く。


 「くっ!俺は眼中にないっていうのか!舐めやがって!」


 アイクは剣を投げつける。剣は、ハイウルフの背中に突き刺さると、ハイウルフはバランスを崩す。


 「今だ!」


 アイクは、腰に差していた短剣を抜き、ハイウルフに切りかかる。しかし、ハイウルフはそれをかわすと、アイクの身体を食い千切ろうと牙を突き立てる。それを短剣で防ぐアイク。それから十分近い死闘の末、アイクの短剣が、ハイウルフの首筋を掻き切り、ハイウルフは息絶えた。


 「はあ!はあ!はあ!・・・やった・・・!」


 アイクは、息を切らせてよろよろと立ち上がる。足元には、ハイウルフの死骸が倒れていた。


 「・・・やったぞ!ハイウルフを仕留めたぞ!」


 「凄い!さすがはアイクさんだ!」


 「アイクさん!やったな!」


 村人達は、ハイウルフを仕留めたアイクに駆け寄る。アイクは、かなり疲れた様子ながらも、周りの祝福に笑顔を浮かべていた。


 「・・・かなり際どかったが、なんとかなったようだな。しかも、先ほどの戦いでレベルも上がったか。」


 そんなアイク達の様子を、ベリオンは眺めていた。腕前は今一つだったが、ボスを倒すことで、ウルフ達が引き上げることを知っており、真っ先に排除しようとしたことや、仲間に攻撃を禁じることで、下手にハイウルフを刺激させず、自分にだけ意識を集中させて、仲間への被害を減らすことを考える判断力と胆力。なかなか優秀だとベリオンは判断した。


 「・・・お客さん、アイクさんのレベルが分かるんですか?相手のレベルを知ることなんて・・・もしかして、ユニークスキルを持っているんですか?」


 「さあな。だが、無事に倒せてよかったな。」


 「旅人さ~ん。」


 そこに、アイク達村の若者が、ベリオンの所にやって来た。


 「・・・旅人さん。この度は助けていただいて、ありがとうございます。」


 アイク達は、ベリオンに深々と礼をする。


 「気にするな。俺の今夜の寝床が壊されたくなかっただけだ。」


 「助けてもらったのは事実です。お礼としては少ないでしょうが、このウルフ達の毛皮は、全て旅人さん、あなたへの報酬に差し上げましょう。」


 「ハイウルフの毛皮は、お前が仕留めたものだ。俺は、雑魚を片付けたにすぎん。ハイウルフ以外なら受け取ろう。」


 「いいえ、あなたがいなければ、俺は死んでいました。いえ、この村の者達も皆死んでいたでしょう。ならば、このウルフ達全部を報酬としても寧ろ安いもくらいです。どうか、受け取ってください。」


 「・・・そうか。なら、遠慮なくもらうとしよう。」


 ベリオンは、このアユムのいう青年も気に入った様子で、自然と笑みを浮かべていた。

序盤の敵程度では相手になりませんね

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