土龍(蚯蚓)
『どなたが魔王様でしょうか?』
「ふふふ、あはは・・・。」
冷静な様で母様もダメだ。
家族を守らなきゃと思い、あの子たち、前世の私の子孫達が呼ぼうとしたが、誰一人飛んで来ない。という事は、この魔物は危険では無いのだろう。
交渉でどうにかなるのだろうか?
「私が魔王です。家族に手を出さないで下さい。」
父様とクロは壁と障子にそれぞれ刺さってますけど。
『申し訳ございません。黒猫から妙な妖力を感じたので撃たれる前に迎撃してしまいました。』
父様は・・・いつもの不憫?
『お役に立てるかは判りませんが、畑を耕すのが得意です。』
「どうして、私なの?魔王なら叔母様もなのに。」
『あの方は親族でしたか。昔お願いしたのですが、「私じゃ貴方と契約できないみたい。」と言われてしまいまして、先日の誕生を聞いた際に急いでここに参りました。』
「お瓜・・・契約するなら少し考えてくれ」
壁から声が聞こえて来た。
あ、父様無事でしたか。
「無事では無いんだがな。お前は平気だろうが・・・。」
父様は家族の方を指差そうとしたが誰一人いない方に指を差していた。
「・・・」「・・・」「あははは・・・」
『(白目で泡を吹いてる)』
「昆虫系統の魔物は苦手な人のが多い。因みに俺もこの大きさのは・・・。」
・・・そうなの?
『そうですよね・・・』
とりあえずは、私の迷宮に入って貰って一部の区域で農業をしてもらおう。
でもこの大きさだと入り口を通る事は・・・
悩んでいるとクロが復帰した。(ミミズからは目を背けてる。)
『早く契約して送還するっス。条件聞いて互いに合意すれば契約は成り立つっス。』
『私としては寝床と安全が補償されていれば良いのです。』
「採用します。私の迷宮で畑仕事をお願いします。」
契約(口約束)をして「送還!」と叫ぶと巨大ミミズはどこかへと消え去った。
「登録はすぐに行う。その際に土の竜として登録する。姿の方はクロ介がどうにかしてくれると思う。巨大なミミズだとほら・・・ご近所さんの目とかあるしな?」
『いやっスよ!犬共に頼むっス。アイツら変化できるっスから!』
「クロ介、セリカに繋いでくれ。手当は出す。」
『それ位なら良いっスよ。今回は事態が事態っスから。』
「セリカ、聞こえるか?うちの家族が動けなくなった。城と神社の方に伝達を頼む。ジュンコはどうしたかだって?ジュンコもだ。済まないが、今日一日負担をかける。魔物が現れた。被害状況はうちの家族だけに留まる。
肉体的損傷2名、此方は2名とも一日中休めばどうにでもなる。俺とお瓜以外が精神的摩耗が酷く、暫く駄目そうだ。」
父様は後処理を始めた。
その夜の家族会議
「お瓜は今どうしてる?」
『店で明日の仕込みしてるっス。』
「そうか。なら、丁度いい。クロ介、朝も言ったがアレの姿を変えることは可能か?」
『できるっス。姿見るのも嫌なんで、犬共に頼んで変化を獲得させようとしたっスけど、オウリさんと契約した事によって制約付きとはいえ、ドラゴンへの変身を可能にしたみたいっス。』
「それじゃ、竜で通す事は可能なんだな?」
『可能っス。ただアタシは関わりたく無いっス。』
「あれ?もう夜ですの?」
「私達は一体・・・?」
「何かを見た様な気がするのだけれど・・・?」
『・・・知らない方が幸せっスよ。』
「そうだな。」
次の日、お瓜は朝食の際にミミズは小型の竜として家族に紹介した。