柿と杮
珍しくレインさんがお店にやってきている。
『オウリさん、上機嫌っスね?』
そんな事ないですよ?
「見せ物通りに芝居小屋が建って明日から芝居が催されるらしいんだが、一緒に行かないか?黒猫も一緒でいいから。」
『(断るっスねー。)』
え?(嬉しいけど)お店が・・・。
『(嬉しそうっスね・・・)』
『たまには休んで息抜きも大事っスよ?(と言えと国中から念話で圧をかけられてる。)』
息抜きですか。そうですね。お店は夕方からにしましょう。
明日はよろしくお願いしますね、レインさん。
次の日、店の前でレインさんを待っていると前世の子孫達がやってきた。
「おはようございます母様、今日はお店開けないんですか?」
「珍しいですね、お祖母様が他のことを優先するなんて。」
息抜きですよ。
「ふーん、曽祖母さんが、息抜きね。」
「一日経ったけどお尻がまだ痛い。グス」
玄米だけ泣き顔だけど、心なしかみんな、にやけている。
「ペットの猫はうちの宿で預かりましょうか?」
『誰がペットっスか!?(コイツら全部、知ってやってるからタチが悪い。)』
大丈夫ですよ。レインさんもクロを連れてきて良いって言ってくれてますし。
『アタシは眠いんで寝るっス。』
「おはよう、おうり。」
レインさんがやって来たが、いつの間にか子孫達は居なくなっていた。
「それじゃ、行こうか。」
レインさんが手を差し出してくれたのでその手を取り歩き始めた。
芝居小屋に到着すると屋根に猿がいた。
「妖怪杮落としだな。」
杮落とし?
「ああ、新しい建物が出来て初開場する際に出てくる妖怪だ。」
変な妖怪ですね。
「ウッキー!」
猿は木片を投げてきた。
『痛たぁ!』
木片は私の頭にいるクロに直撃した。
「ああやって屋根に登って、木片を投げてくる。」
1匹だけ柿投げてませんか?
「あ、本当だ。」
捕まえられないですかね?
「やってみるか。」
『結局、芝居見ないで変な猿捕まえただけっスよね?』
捕らえた猿は私と契約した状態になった。
「おうりが笑顔ならそれで良い。」
『はぁ、それで当人達が満足なら構わないっスけど・・・(どうやって報告しようかな。)』
その夜、従魔登録書を読んだ虎狼郎の反応は・・・
「妖怪柿落とし申?杮じゃないのか?」
『それで、あってるっス。』
「そうか・・・なぁ、」
『トラさんが思ってる通り特別な個体っスよ。』
「そうか・・・うちの娘はなんやかんやで【魔王】してる気がする。」
『そうっスね。』