ウサギ?
玄米と柘榴兎の話をした日の夜
店の暖簾を片付けようとすると1羽の兎がやってきた。
『オウリさん、コイツっスよ、例のウサギ。』
玄米の所から脱走したっていう兎ですね。
『厳密に言うと人工金剛石卯鷺、炭素と兎と鷺で構成された柘榴兎っス。』
え?構成された?それって合成獣じゃ?
『そうっスよ、あのアマ対象の生物の詳細はきっちり話やがれ!』
クロ、語尾。
『・・・っス。』
お腹空かせてるみたいですし、これでも与えてみましょう。
『何与えたんっスか?』
卯の花。
他の子達(特にメボウキ)の餌で与えてる物です。
『自家製の豆腐使った時に出るおからっスね。
一応先に言っておくっスけど、コイツは体の形はウサギだけど、構成は炭っスよ。炭を食べさせるっス。』
『・・・食べてるっスね。』
あれ?鷺の要素なくない?
ぱっと見た感じ鷺の要素が見当たらない。
『アタシもそう思ったっスよ?よくよく調べたらカエルなんかも食べるみたいっスよ。』
あー食性の方に要素を混ぜたんですか。
ウサギは私の足元に来て頬擦りを始めた。
『懐いたみたいっスね。』
ウサギは私達の前に炭を置いた。
お!くれるんですか?
ありがとう。
これで炭火焼きとか燻製とか、七輪でお魚もいいですね。
『コイツ、人工とはいえど、宝石生み出せるっスよ?なのに宝石より炭で喜ぶのオウリさん位っスよ。』
良いんですよ。宝石じゃ調理は出来ませんから。
『そうっスか・・・。依頼の報告書や組合に出す書類(従魔契約関連)作成するんで先に晩御飯食べてほしいっス。』
あれ?クロが仕事優先なの珍しいですね。
『何か、(オウリさんのせいで)仕事がたまってく気がするんで、できる時にやっておこうと思っただけっスよ。』
そう?それじゃ、先に夕食頂きますね。
「それで、今度は何と契約したんだ?」
クロは虎次郎とフランに報告をした。
『カーバンクルに似たキマイラっス。』
「かーばんくるに似た、きまいら?・・・そんなの存在するの?」
『フランさん、あの、マッドサイエンティスト、米斗玄米が創り出した生命体っス。』
報告書を受け取った虎次狼とフランはため息をつくしかなかった。
「玄米ちゃんと、しっかりお話ししなきゃ駄目みたいね。」
「やりようによっては国どころか世界が滅びかねないな。」
『そうっスね。今のところ人懐っこい生き物だから何ともないっスけど・・・。』
「逃げた個体はもういないんだな?」
『スライムが1匹不明らしいっスけど、女神の方で何とかしたらしいっス。』
「すらいむね・・・。ちなみにどんな能力なの?」
『聞いた話によると捕食した相手の遺伝子情報を取り込んでスキルや姿を得るみたいっスね。』
「そう・・・明日、ヨネト・ゲンマイを城に呼び出しましょう。」
『フランさん、顔は笑ってるけど、怖いっス。』
次の日、玄米は城に呼び出されお尻が腫れ上がるまで叩かれたらしい。