身代り山未(虎次狼視点)
「ただいま〜。」
俺はいつもの様に組合の仕事を終えて我が家に入る。
「お帰りなさい、あなた。」
「お帰りなさいですわ。」
「お帰りなさい、父様。」
妻と2人の娘が出迎えてくれた。
という事は今日はお瓜が料理してるのか。
しかし、お瓜は囲炉裏に座っている。
あれ?厨には誰がいるんだ?
「お帰りなさい、父様。」
あれ?お瓜が2人いる。
囲炉裏に座っているお瓜の頭の上に居る黒猫に聞くしかないな。
これはどういう事だ?
『身代り山未。卓状山の入り口で仲間になりたそうだったんで連れて帰ってきたっス。あ、山未ってなってるっスけど、ヤギじゃなくて山の羊っス。』
クロ助がそう言うと、囲炉裏にいるお瓜は7色に輝く毛を持つ羊に姿を変えた。
通常は身代り羊という名で、風来者に化けて仲間割れさせたり他の魔物に化けて威嚇してくる魔物だ。卓状山には生息はしてないし、毛並みは単色で色によって位階が変動する。まさかな・・・。
『御察し通り、変異種っスよ。最上位の黒色より強いっスよ。』
誤魔化して登録は無理そうだな。
『そうっスねー。毛が虹色に輝いてるっスからね。』
「父様、今日は羊鍋にしますね。」
お瓜がそう言い放つと、羊はビクビクしていた。
時々、この子が怖い。
『アタシも怖いっスよ。』