茄子と胡瓜
「お瓜ちゃん、お城まで来てもらえる?」
母様の声が頭の中に響く。
「門の前に胡瓜と茄子の馬と牛みたいなのがいて入れないのよ。」
魔物なら父様を始めとした風来者の方々がどうにかしてくれるのでは?
「既に依頼して、横で伸びてるわ。」
『トラさんで倒せないとかどんだけ強いんっスか?』
「そういうわけで、お瓜ちゃんとクロちゃん来て貰える?」
クロの妖術で城門まで行くと体が胡瓜の馬と茄子の牛がいた。
近くには伸びた父様と介抱している姉様達と母様がいた。
「破魔の矢が入らなかったですわ。アレは何ですの?」
『魔物や動物じゃなくて精霊っスね。胡瓜精霊午、茄子精霊丑。どちらも特殊な個体っス。』
『オウリさんと契約したがってるみたいっスね。』
『契約者を子孫の所まで送り届けてくれるらしいっス。ちなみに乗っている間は無敵っスね。』
「精霊は神様の使いよ?本来なら【勇者】に付き従う筈。お瓜ちゃんは仮にも【魔王】よね?」
いいえ、料理人ですよ、母様。
『詳しい情報を見るんで、ちょっと待って欲しいっス。・・・子々孫々に大切にされた者の前に現れる精霊の馬と牛。子孫の元へ送り届けてくれる。食べるとバチが当たる。役目を終えた後、半紙などにくるんで、塩で清めてあげると還す事が出来る。』
「精霊は役目を終えると、勝手に帰るはずなんですが・・・」
『契約して変異したっスね。』
え?まだ、契約してないんですけど・・・。
『9:1契約っスね。位階が低い弱い魔物なんかだと偶に起こる現象っス。』
9:1?
『魔物側が無条件で従う意志を見せる契約っス。』
「精霊は稀ですね。」
ジュンコ姉様、そうなんですか?
「精霊さんは気難しいの。だから最高でも対等な契約になるの。」
へえーそうなんですか。
「お瓜ちゃん、このままだとお城に誰も入れないから還してあげて。」
『はい、塩と半紙。』
クロから受け取った半紙で包んで塩を振りかけると温かな光が発生して消え去った。
それでどこに還ったんですか?
『それは勿論、オウリさんの家っスね。』
その後、帰宅すると住居側の玄関の所にお盆の時に作って置いてく茄子の牛と胡瓜の馬が置かれていた。