寅?
「あ、お瓜ちゃん。お頭から話は聞いてますよ。御神木に行ってください。昨日から、やたらと強いトラが居着いているみたいです。」
組合の建物に入るとセリカさんが情報をくれた。
「あら?お瓜ちゃんがここに来るのは珍しいですわね。」
情報をもらって建物から出ようとしたらウタコ姉様が入ってきた。
「ウタコさん、うまく行きましたか?」
「ええ、あのトラが民家の方へ逃げないように封印術を試したところですわ。」
ウタコ姉様は、被害が出ないように組合から虎の封印を請け負ったようだ。
御神木に行くと屏風が置いてあった。
屏風には虎の絵が描かれている。
『あの封印術は破られるっスよ?』
「クロちゃん、私が気合入れてやったから大丈夫ですよ?」
そうですよ、ウタコ姉様の封印術は国で1番なんですよ?
『国どころか世界屈指っスよ。但し、相手が悪いっス。』
相手が悪い?
『アレは例の馬鹿が生み出した悲しき生命体っス。結界くらい、すり抜けたり破壊する事くらい余裕っスよ。」
ねえ、何でクロは玄米に辛辣なの?
『それは・・・』
クロが話そうとすると屏風から黄色い液体が染み出てきた。すると屏風の中にいる虎は居なくなっていた。
暫くすると屏風から染み出た、黄色い液体は虎の姿へと変わっていった。
何あれ?
普通の虎じゃないの?
『あの虎が、馬鹿科学者の元から逃げたキマイラっスよ。種族は酪農寅、スキルは液体化、特徴は木か主人の周りを走り回ると自身の命と引き換えにバター風味のマーガリンになるっス。』
え〜1回だけなんだ。
可能なら契約して食材を提供して貰おうと思ったのに・・・。
「うわ・・・」
何故かウタコ姉様は引いている。
くろーん技術だっけ?それを使えば増やせるよね?
科学者である玄米なら可能だと思う。
実際に合成獣を産み出したわけだし。
『うわー・・・』
クロが遠い目をしている。
「お瓜ちゃん、危ない!」
虎は私を中心に、ぐるぐる回るとまーがりんを残して消滅してしまった。
そんな・・・連れて帰って増やしてもらう計画が・・・。
「ねえ、クロちゃん、あの虎、お瓜ちゃんの周りを回って命を引きかえに能力を使ったて事は・・・。」
『ウタコさん、察しが良いっすね。そうっスよ、あの虎はオウリさんの迷宮に居るっスよ。』
え!?
「そうなりますね。あの虎は主人の周りを回ると、まーがりんとやらになるんですわよね?そうしたら、お瓜ちゃんは主人とみなされてますわよ?」
『オウリさん、魔王の配下の魔物は特殊でやられても主人さえ生きてれば時間経過で蘇生できるっス。』
それじゃあ、まーがりん取り放題?
『蘇生まで時間かかるっスから必要な時にしてあげるっス。あの虎は戦力にもなるし。』
こうして、配下の魔物ができた。
「魔物なら組合で登録しなきゃ駄目ですわよ?」
そうですね。
「そんで、申請書か。それにしてもまた変わった魔物だな・・・。似た様な魔物は・・・居ないな。もう開き直って変異種で登録するか。」
報告を受けた虎次狼を始めとする組合の面々が頭を抱えたのは言うまでもない。