蝗害2
田畑は見事に食い荒らされていた。
「お待ちしておりました。お瓜様。」
田畑の前に依頼主らしき地主の老人とレインさんがいた。
レインさん、どうしてここに?
「お館様曰く、黒猫殿は役に立たないだろうとの事で、護衛として遣わされました。」
『・・・(白目)』
クロは昨晩からこんな調子で役に立ちそうにない。
厳密には道中は大丈夫だったんだけれど・・・。
見かねた母様がレインさんを護衛として寄越したそうだ。
「風来者が来ると聞いていたが、お瓜ちゃんが来るとは・・・。いつ風来者に・・・いや、フラン様や虎ならあり得るか。」
地主の老人はぶつくさという。
「依頼は聞いていると思うが、ここはすでにやられていてな。この先にある奥の畑に発生している虫の駆除だ。無理そうなら引きなさい。私はあそこの切り株で一休みする。」
行きますよ、クロ。
クロ?
クロは頭の上に乗っていない。
切り株の近くで何かを握りしめてひっくり返っていた。
クロが握りしめていた紙を見ると、こう書いてあった。
"地主は眠らせておいたっス。2人で本気で蝗害に取り組むッス。"
あ、やっぱりクロ行きたくないんだ。
「それでは、参りましょうか。お瓜様。」
それより、2人っきりなんですから、「様」はいりません。
「いや・・・黒猫殿が居ますよね?それに仕事中ですし・・・。」
この子は気にしないで良いんです。
それに・・・
「zzz・・・。」
地主の老人は近くの切り株で寝てしまっている。(クロが眠らした。)
レインさんは照れ臭そうに手を差し出した。
「行こうか、お瓜。」
はい。
手を差し出してくれたのでその手を握る。
お瓜とレインが畑の方へと行き見えなくなると地主の老人は目を開け起き上がった。
「これで良いのだな?」
『ご協力感謝するっス。』
「若いのぉ。あの2人の先が楽しみじゃ」
『そうっスね。末長く爆ぜれば良いっス。(蝗害の対策に行かないで済むならそれに越した事はないッス。)』
「お主、その身体、絡繰人形じゃろ?本体はどこかで眠っておるな?それなら直接触るわけでもないのに・・・余程行きたくないんじゃな・・・。」
『そうっスよ。見るだけでも嫌っス。』