幕間:見合い(レイン視点)
城に行くと、親方様から呼び出しがあった。
上様の部屋に通されて数分が経つと上座に家老である父親と上様が現れた。
「門番のレイン、面を上げなさい。」
「はっ。」
「好いている女子はおりますか?」
はい?
上様の話が見えない。
「・・・所帯を持つ気はないですか?」
はい?
上様は藪から棒に変な事を言い始めた。
何か嫌な予感がする・・・。
「いいえ。まだ元服したばかり故、そのような事は考えておりませぬ。」
無難にそう返す。
「ふむ、特定の相手がいないなら私の娘と見合いをして頂きたいのです。」
上様の娘となると姫であり、いずれは家督を継ぎこの国の主人となる者だ。
そんな方と見合いだなんて正直面倒な話だ。
昨日までならならそう思ったが・・・。
「昨日、お瓜と親しそうに会話していたという報告がありました。間違いないですね?」
・・・。
「お瓜と見合いをして欲しいのです。」
俺としては願ってもない事だが、前世で夫婦だっただけで今世でもなれるなら・・・いや、それは違うかな?
「お瓜・・・様とですか?・・・お断りさせて頂きます。」
今世のお瓜・・・姫様には関係のない事。
姫様が好意を寄せた男と添い遂げて欲しい。
だからこそ一瞬迷って返答した。
「そうですか。嘘はいけないですね。」
親方様は嘘を言われるのを何よりも嫌う。
いっその事、素直に拒否した方が、機嫌は悪くならない。
「親方様の個人的な頼みだから良いものを・・・親方様、レイン・・・この愚息に見合いをしろと命じて下さい。」
黙って上座に座っていた父親が怒鳴り始めた。
いつもの様に厳しく言っている様だが、親父の口元はニヤリと笑っていた。
ん?・・・親父ィ!お前も共犯か!
「そうですね、命じましょうか。門兵レイン、風来者の虎の三女、お瓜と見合いしなさい。良いですね?」
・・・くっ、この阿保城主とバカ親父・・・。
「・・・承知致しました。」
上様の命令ならば仕方がない。
此処で下手に揉めれば一族に迷惑がかかってしまう。
普段は権力を使わないのにこういう時に限って権力を使ってくる・・・。
「あの子の店の前にある宿屋で休暇人の間という所を会場にしています。今日の任は解きますので今から行ってきなさい。宿までは遠いので、我が家の蔵への転移門の使用を許可します。」
俺が廊下に出ると親父が嬉しそうに上様に話し始めた。
「上手くいきましたな、親方様。」
「後は、当人達次第ですね。」
まだ、俺は廊下に居るんだが・・・。
急いで転移門に行き虎次狼宅の蔵へ転移した。蔵から出ると宿屋が見えた。
宿から雀の鳥人族の少女が出迎えてくれた。
「女将のヒビと申します。レイン様ですね。休暇人の間の利用ですね。お連れ様がお待ちになっておられます。」
案内された休暇人の間の襖を開けると・・・。
「私の家族がご迷惑をおかけしました・・・。」
綺麗な土下座をするお瓜様がいた。
「いや、オウリと・・・。」
オウリと過ごせるなら悪くない。
照れ臭くてしっかりと言えなかった。
『アタシは暫く寝るっス。ラブコメは程々にっスよ。』