③
エールという名の酒を飲んで、良い気分になったカルロスが言うには、この世界には幾つかの国があり、ここルーク王国は勇敢な騎士団と聡明な魔導師団を持つ事で有名な大国らしい。
その中でもウィンチェスター家は、代々著名な魔導師や伝説的な賢者を輩出してきた魔法の名門だという。
「いいか、ユーゴ。おまえは誇り高いウィンチェスター家の跡取り息子だ。俺みたいに格好良くてダンディな魔法使いになるんだぞー。」
「あらあら。」
赤ら顔で息子に話しかけるカルロスにアリアが苦笑する。
「ほら、夜になったらドミニクさんがお越しになるんですから、程ほどになさって下さい。」
そういうとアリアは、カルロスの腕を持って外に連れていった。
「ユーゴー、立派な魔法使いになるんだぞー」
外からもカルロスの声が聞こえてくる。
全く、困ったお父さんだ。
だけど、何だか憎めない。
アリアも、いつも優しく微笑んでしっかりとカルロスを支えてる。
正に良妻賢母って感じだな、良いお母さんだ。
二人の姉も優しくて可愛らしい。
次姉ジェシカは少しお転婆みたいだけど。
転生してまだ一ヶ月と経っていないけど、どうやら僕はこの家族が好きになったみたいだ。
父カルロスが喜ぶのなら、今回の人生では立派な魔法使いとやらを目指してみよう。
そう、前世で大好きだったおばあちゃんの為に速読を頑張ったように。
こうして、僕の新しい人生が始まった。




