②
少し話を整理しよう。
僕は都内の公立高校に通う二年生、趣味は読書で特技は速読。
好きなものは、本全般とラーメン。
嫌いなものは、運動全般と金田。
両親と生意気な妹の四人家族。
だった筈なんだけど……。
「ね、この子。いま私を見て笑ったわよ。」
「違うわよお姉様、私を見て笑ったのよ。ねー、赤ちゃん。」
「こら、貴女達。ユーゴはまだ産まれたばかりなんですからね。あまり周りで騒がしくすると驚いてしまうわよ。」
「「はーい、お母様。」」
「ははは、いいじゃないかアリア。ユーゴは我がウィンチェスター家の跡取り息子だ。聡明な男はそんなことで驚いたりしないさ。な、ユーゴ。」
「キャッキャッ」
「おおお、見てみなさいアリア。ユーゴが俺を見て笑ったぞお!」
「もう、アナタまで。」
そう、今の僕はユーゴという名の赤ちゃんで、この人達が僕の家族らしい。
この僕の目の前で親馬鹿全開のニヤケ顔をしているのが、父のカルロス。
そして、それを呆れた顔で見ているのが母のアリア。
さっきまで僕にちょっかいを出していたのが二人の姉、リリーとジェシカ。
家の名前はウィンチェスター。
まだ詳しいことは分からないが、家の雰囲気や彼らの身なりを見る限り、程よく裕福な家庭みたいだ。
初めは混乱していたが、時間が経つにつれて、少しずつ冷静に考えることが出来るようになった。
どうやら僕はあの用水路で溺れ、一度死んでしまったようだ。
そして、信じがたいけれど漫画等で頻繁に登場する"転生"というものをしてしまったらしい。
更に信じがたいことに……。
「アナタ、申し訳ないんですけど石炉に火を起こして戴けないかしら。」
「よしわかった。」
:種火はサラマンドラより奪われし宝であるとピプラストスは雄弁に述べた:
石炉の薪に火が着いた。
「ありがとう、アナタ。」
「お父様、ドミニクおじ様がいらっしゃったわよ。」
「ん、ドミニクか。入って貰いなさい。」
「はい。おじ様、どうぞ。」
「ありがとう、リリー。カルロス、息子が産まれたそうだな。おめでとう。」
「ありがとう、ドミニク。」
「アリアもご苦労だったな、うちの家内も後で祝いに来るそうだ。」
「まぁ、いつもありがとうございます。」
「では、失礼させて貰うよ。」
「おい、もう行くのか。折角だ、息子の顔を肴に一杯やろう。」
「そうしたいのはやまやまなのだが、今から近衛騎士団の集まりがあるんだ。」
「そうか、ならば仕方ないな。」
「ありがとう、また夜にでもゆっくりと寄せて貰うよ。魔導師カルロスの息子に剣と杖の加護多からんことを。」
「ありがとう、騎士ドミニク。」
そう、どうやらこの世界は。
ファンタジー物の大定番、剣と魔法の世界らしい。




