表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブックシェルフ

境界の呪歌

SANチェックいる?



始めに石があった。

次に血と肉ができた。

ほむらが空を覆い、大地を繋ぎとめた。

風が吹き、穢れを清め魂が廻った。

冷えた大地に雨が降った。

雨は命を流し巡らせる。

石と血肉と魂を生命が包み込み、獣となった。

獣は大地の歌である。

歌は巡り廻り大地を覆う。

響く音は大地を縊り、世界を穿つ。

穴より出づるのは悍ましき虚無。

虚無は混沌の対極である。

虚無に呑まれれば何もない。

混沌はこの世界である。

世界には何もない。

あるはない、ないはある。

無は存在しない。

存在はある。

まやかしはない。

忘却はない。

喪失はない。

すべては巡り廻る。

ないはある。

あるはない。

闘争はある。

悲嘆はある。

歓喜はある。

喝采はない。

響き渡る歌曲に意味はない。

貴賤はない。

天の歌は神である。

神は全能である。

全能は全能故に失敗もする。

成功しかしないものは不完全である。

全ての可能性は等しく同価値である。

価値はまやかしである。

完全とは単一でのみ存在する。

完全とは孤である。

許されざる大罪。

天の焔が大地に根付いた。

戦禍は焔である。

焔は空の篝火。

導きの光は当人には届かない。

狂信は毒である。

足音は崩壊する。

痛みは焔になる。

酔夢に浸るのは悪漢。

代償は破滅の泡沫の夢。

星は地に堕ちては輝かない。

天性は相応しき場にてのみ輝く。

怪魔ありて天を穢す。

魔性は場を選ばない。

光はない。

闇はない。

願いはない。

望みはない。

妖満ちて地を惑わす。

風の歌、焔の歌、尽きぬ命の歌。

潰えた希望の歌。

絶望は石に宿る。

悪意は志に宿る。

流れ廻るは生命の理。

理は使命。

使命は天命。

天命は必ず訪れる終焉。

至命は巡り、移り変わる。

個は幻。

孤は現。

現の夢こそ幸福な幻。

存在とは移り変わるもの。

我執は苦の源。

執着は迷い。

惑迷は混乱。

天の杯から零れ落ちるは冥川の雫。

忘却と常若の清水は輪廻の呼び水。

外殻を形作るは心裏の瑕疵。

表裏は入れ替わり、攻守は反転する。

表も裏も等価である。

法則はない。

等則はない。

同一ではない。

愛とは執着である。

恋とは欲望である。

憎悪とは反転した愛である。

積み上げた執着の石は視界を遮り道を塞ぐ。

未知は可能性、不可能性。

奈落の天井に光はない。

崩壊は終焉。

時はない。

あるはある。

ないはない。

過去は存在しない。

未来は存在しない。

今だけが実存する。

時は虚像の投影。

記憶はまやかし。

実存は意識の陥穽。

惑乱の根源。

存在、非存在は本質的に等価である。

自我は幻影。

積み上げた法則の導く機構。

その取捨選択こそが個性である。

選択はそれまでの選択の作用である。

全ての法則、全ての機構を把握しているものはいない。

全知はない。

虚偽の幻想。

すべては勘違いである。

滑稽故に法則はない。

共感とは誤解である。

世界は誤解で周知される。

相互理解は相互不理解である。

己が誤解していることを承知せずに理解はできない。

光は世界を巡る。

廻る。

巡る。

最果てに届く光は星である。

星は軌跡を描き、時を導く。

再会はない。

境界は一定しない。

星辰は境界を照らす。

鏡の祭壇。

刻まれた印は切り落とされる。

波を呼ぶ笛が響き夜が落ちる。

夜と昼の境界に魔は満ちる。

魔は悪ではない。

選択こそが悪である。

魔は欲に宿る。

欲は生である。

生に意味はない。

大地の歌はただ響き続ける。

天の歌は既に途切れた。

音価は高く低く重なり合って届く。

沈黙は占有。

共鳴は鏡写し、夢見る神の雫。

有限の試行では届かない。

無限は神の業である。

全ては巡り廻る。

獣の業はこの世の地獄。

地獄は人間じんかんにこそある。

業は人の間を巡る。

世は押しなべて詮もなく、是非もなく、ただ流れるのみ。

ここは業の吹き溜まり。

魔の集積場。

地獄の顕現を待つ場所。

呼び覚まされしは阿鼻叫喚。

今、別れを告げよう。

終焉の刻がきた。

幼少期に決別を。

さようなら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ