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一心同体の魔人 ─魔剣と少女、Duoが奏でる冒険譚─  作者: Ayuwan
6章 水の精霊編 猛る猛獣と麗しき花嫁
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50話 戦王レオンハルト

よろしくお願い致します。




                   ◇◇◇ 


   



「………」


「お~い、バルドゥのおじさ~ん。さっきからずっと何考え込んでんの? 目がすっごく怖いよ?」


 そう言いながら、カレンが私の視点の先で大きく手を振る。


「うん? おお、すまん。少し考え事をしていた……」


 そして頭に思い浮かんだ禍々しい魔導士の姿を、追い払うかのように頭を振った。


 封印が解かれた時、その場に放たれた我ら獣人の数はおよそ二百体……その中に王と姫君の御姿はなかった。既に御二方は、転生という形でこの世界に現存なされているという。

 我々はその後、封印から逃れ、隠れ忍んで生活を営んでいる生き残りの末裔や、新たに誕生した獣人の部族達に呼び掛けて戦力を掻き集めた。今、この場にいるダンやカレン、ソニアもその時に応じて集まってきた者達だ。今や我ら獣人族の戦力としての数は、五百は優に超えるだろう。


 そして我々は、転生者となった王を見つけ出し、再会を果たした。


 王は転生を成されてから、当時の記憶を失っておられたようだが、今回の封印を解かれる事によって、その記憶をお取り戻しになられたようだった。

 今は我らが王の指示に従い、その御命によりこの地、ティーシーズ教国に攻め行っているミッドガ・ダル戦国と共闘する事となった。


 目的は未だ敵の手中にある、姫君の生まれ変わりでもある水の巫女奪還。そして憎き我らが敵ティーシーズ教国の滅亡。


 ふっ……そうだ、どれだけ禍々しくても構わぬではないか。我らが王の望みは復讐を果たす事。その為ならば、例え負の感情に染められ、邪悪の手先と成り果てようと最早──構わぬ!





                   ◇◇◇ 





「それにしても、えらく待たせるもんだな……」


 天幕の柱に凭れ掛かりながら、座り込んでいるガスパーが、大きく伸びをしながらそう呟く。


「確かに、些か時間が掛かっているようですな。バルドゥ様、如何されます? こちらから呼び掛けましょうか?」


「ふむ……いや、もう一時、待つ事としよう。あちら側にも何かと事情があるのだろう。それに今の我らに王と連絡を取れる手段が、あの魔導士しかないのも事実……ならば、今は待つしかない」


 ファビオの問い掛けに、バルドゥがそう答える。それに対してカレンが不満の声を上げた。


「ええ~~っ、もう飽きちゃったよ!──あ、そうだ。だったらさ、バルドゥのおじさん。私、ソニアちゃんと、ちょっと外に散策に行ってもいい? ってか別に構わないよね? 私達の王様って言っても実際、あんまり実感湧かないしさ。それに私達なんて、その場にいてもいなくても大差ないっしょ。だから、いいよね?」


「おいおい、カレン、さすがにそれはないだろう?」


 カレンの突然の提案に、ソニアが諌める声を上げる。


「ねえ、お願いだからさぁ、大丈夫。そんなに遠くには行かないつもりだし、なるべく早く帰ってくるようにするから。ね? バルドゥのおじさん」


 両腕を組んで、柱に凭れながら立っていたバルドゥが、仕方がないといったような口調で答える。


「……まあ、いいだろう。若いお前達にはこういった時間は少し苦痛と感じるのだろうな。それに同じ一族とはいえ、無理を言って協力して貰っている訳だしな。ソニアが付いてるのなら、ひとまずは安心だが、とにかく充分に気を付けろ。この場所は何処か得体が知れない。そんな気がするからな」


「やったーっ! ありがとっ、バルドゥのおじさん。さあ、行こう。ソニアちゃん!」


「お、おい、カレン!」


 カレンが歓喜の声を上げ、ソニアの手を引いて彼女を立たせる。


「申し訳ありません、バルドゥ殿、王の面会迄には間に合わせますから、少し行って参ります」


「ああ、別に気にしなくていい。もし間に合わなくとも、我々が王の指示をしっかりと仰いでおくさ。お前達は好きにすればいい。だが、くれぐれも油断はするなよ、無事に帰ってこい。私が言う事はそれだけだ」


「ありがとうございます。では──」


 カレンに手を引かれたソニアは、そう言葉を残し、ふたり天幕から出ようとする。そんな時、ふと何かを思い出したように、カレンが立ち止まった。

 そしてゆっくりと振り向く。


「そう言えばさあ、ダン。あんたも一緒に行かない?」


 その声を聞いたダンが、床にあぐらをかいたまま、手を大きく振りながら答える。


「……ああ、悪りぃけど、今回はやめとく。折れた左腕がまだ完全に治りきってなくて、ギスギス疼くんだわ─って、ああっ! しまった!!」


「……ぷぷっ、あんたって、腕折ってたんだ。あんな華奢な女相手に……くすっ、あはははっ!」


「ぐぅ、うっせえーっ、笑うんじゃねえ! あのエルフの女、メチャクチャおっかねえんだぞっ! 俺だから左腕だけで済んだものの、おめえならきっと、今頃は背中に羽を生やして、頭に光の輪っか浮かせて、天に向かってその身体を浮かせてるだろうさっ!!」 


「はいはい、負け惜しみなんて言わないの。それにしても、エルフなんかに負けるなんて……ぷっ」


 ダンを横目で見ながら、必死で笑いを堪えるカレン。最後にその口からこそっと言葉が溢れる。


「クマの癖に……」  


「……だから、クマ言うな……」





                   ◇◇◇





「で、こんな所に私を連れ出してきて、どうするつもりなんだ、カレン?」


「そんな事、聞かなくても、ソニアちゃんは分かってるでしょ……?」


「まあ……そうだな……」


 今まで自分達がいた、天幕から大分離れた森林の中、その奥の朽ちて倒れた一本の木に、カレンとソニアが並んで腰掛けていた。


 ───


「ソニアちゃん、私もね、こう見えても、あれから色々と悩んじゃってんだ……もうソニアちゃんとふたり、部族から抜け出して、どっかで楽しく暮らそうか、何てさ」


「カレン、お前……」


「確認になるけど、ソニアちゃん。私はあの黒い剣士と出会ってから、私達、部族の教えが正しいとは言い切れなくなった。私達がするべき事は、復讐なんてそんな忌まわしい事なんかじゃないって。でも、今まで私が生まれ育ってきたこの部族の事を、簡単に裏切る事なんてできない。バルドゥのおじさんや、ファビオさん、ガスパーさんだって、とても良い人だし、私達も仲間だって思ってる。だから、もう少しこの場所にいて、見極めようと思うんだ。何が正しくて何が悪いのか。私、ううん、私達、ふたりに取って、するべき目的を見付け出す為に……」


 静かに、それでも訴えるように、そう言うカレンに対して、ソニアはやさしい声で答える。


「私はいつも姉上と共にある。だから、何処までも私は貴女に付いて行く。これからもよろしく頼む、カレン」


「ありがとう。ソニアちゃん……」


 互いに目を閉じ、隣に身体をぴったりと寄せ合うふたり。しばらくして


「じゃあ、そろそろ戻ろうか、カレン、帰り道は覚えているか?」


 そのソニアに言葉に、暫し固まるカレン……そして。


「……えーっと、どうやって、きたんだっけ?」


 カレンの返事に頭を抱えるソニアがいるのだった。



 ─────



 カレンとソニアは、森林の中を進んで行く。方向感覚が完全に麻痺し、最早、元来た道を引き返しているのか、奥に進んでしまっているのかさえ、分からなくなってしまっていた。獣人として最も有効な優れた嗅覚も、森林の奥深くとあっては全く用を足さない。


「どどど、どうしよう、ソニアちゃん!!」


「……しーーっ、カレン、向こうの方で、何か音が聞こえないか?……いや、聞こえたような気がするのだが……」


「……??」


 カレンの手を引きながら、背の高い雑草の生い茂った周囲を見回すソニア。


「こちらの方からだ。慎重に行くぞ、カレン……」


 何かに向かって行くソニア、カレンは手を引かれその後を付いて行く……しばらくして


「この水が激しく打ち付ける音。これは滝か……?」


 やがて、森林が途切れた少し広い空間、そこに林に囲まれるようにして、崖の上から下方へと激しく流れる水を打ち付ける滝の姿が、ふたりの目に飛び込んできた……それと同時に


「!?……カレン、身を伏せろっ、誰かいる……」


「え?……って、ホントだ。誰かいる……」


 ふたりは地面に屈み込み、ひっそりと滝の方へと視線を向け、様子を伺う。


 崖上からごうごうと音をたてながら、激しく滝の水が打ち付けられ、水しぶきが舞い上がっている。

 そんな滝の浅瀬の中に、ひとりの男が立っていた。その男の後ろ姿を、ふたりが目の当たりにする。


 ただ、その男の出で立ちは、些かの奇妙さを感じさせた。


 下半身には重厚な漆黒の重鎧(フルプレート)を取り付けていながら、その上半身は両肩が剥き出しとなる白い薄手の下着のようなものを一着、身に着けているだけだった。


 そして黒い長髪をしたその男は、少し腰を落として前屈みになりながら、自らの腰に帯びている長剣の柄へと手を添えていた。


 ───


「……誰だろ? やっぱこの砦の兵士かな」


「おそらくはな、だが、このただならぬ気配。こいつは只者ではないぞ……」


 ふたりは茂みの中、身を潜めながら、そっとその男の様子を伺う。


 柄に手を添えた男の、比較的細身だが、見事に引き締まった広背筋に、思わずその目を奪われる。そんな中、一羽の大鷲が男の遥か上空を横切った。


 ─ピイィーーッ


 次の瞬間、手を添えていた男の長剣が、大きく煌めく銀色の光を放つ!


 ──ザンッザンッ!


 斜め十文字に放たれる斬撃! 最後に──


 ──ザンッ!!


 真横へと大きく長剣が薙ぎ払われた。


 その斬撃を受けた流れる滝の水が、一瞬、四つの水の塊となる。そしてそれは四方向へと飛び散り、音を立てながら、地面に打ち付けられた。


「……す、凄い。流れ落ちる水を、剣で両断するなんて……」


「ああ、確かに。奴は一体……?」


 茂みに隠れながら囁くカレンに、ソニアがそう呟く。


 やがて、その男は長剣を一度、大きく横に薙ぎ払うと、自らの腰の鞘へと音を立てながら納めた。


 ──チンッ


 そして少し後ろへと振り返る。


「……どうやら、鼠が紛れ込んでいるようだな、二匹か?」


「「!?……」」


 その声に思わず反応してしまうカレン。


「……にゃあ……」


「わわっ、このバカ姉貴!」


 小さく呻きながら、カレンの口を押さえ付けるソニア。


「ほう、近時の鼠はそのように鳴くのか」


 男は声がした方向へ、切れ長の目の鋭い視線を送る。


「いい加減、姿を現したらどうだ? 鼠、いや、化け猫か」


 やがて、その声に応じるように、ばつの悪そうな表情を浮かべたカレンと、仏頂面のソニアが揃って男の前へと姿を現す。


「へへ、ばれてちゃってたか。それにしても、あんたってさあ、すっごいんだね、まさか流れてくる滝の水を剣で切っちゃうなんてさ……あんたって、一体何者なの?」


「この砦の……ミッドガ・ダルの兵士か?」


 カレンとソニアが、黒い長髪の男に、立て続けに質問を捲し立てる。


「この砦の兵士か。まあ、そんな所だ。それでお前達は何だ? どうしてこんな所にいる?」


 そう質問をする男に対し、カレンは砦に着いてからの今までの経緯を男に説明した。


 ───


「成る程、ならば、ちょうどいい。俺もその場に行かねばならんのだった」


 男はそう言いながら、少し離れた場所に行き、そこの地面に置いてある黒いマントへと手を伸ばす。


「え? あんたも呼ばれてんの? だったら、こんな場所で、一体何をやってたのさ」


 カレンの言葉に男は、マントを下着だけの上半身に羽織りながら、答える。


「ああ、近頃少し実戦から離れていたのでな。その調整も兼ねて、ちょっとした自分に対しての戒めだ……」


「「??」」


 男が何の事を言ってるのか、さっぱり理解できないふたりが、キョトンとした様子を醸し出す。


 そんなふたりに、男は首をクイッと傾け、声を掛けてきた。


「まあ、お前達がここに姿を現した事によって、それを思い出す事ができた。その礼と言っては何だが、代わりに、そこまで俺が道案内をしてやろう」


 その言葉に、少し呆けた表情で顔を合わすカレンとソニア。


「こっちだ、さあ、付いてこい」


 黒いマントを翻しながら歩き出す男。顔を見合わせた彼女達は、無言で頷き合い、そしてその後を付いて行くのであった。





                   ◇◇◇





「はあ~、それにしてもよ、あいつら、いつまで俺達の事を待たせるつもりだ。早く俺達の王様に会わせろっつーーのっ!」


 待つ事にしびれを切らしたダンが、大きく欠伸をしながら、そう声を上げた。さすがのファビオもそれに応じる。


「確かに、時間が掛かり過ぎているな。何か問題でも生じたか……」


「まあ、いいじゃないか、まだ、カレンとソニアも帰ってきてないしな」


 ガスパーがそう言った時だった。この天幕の垂れ幕が開かれ、ひとりの黒い鎧の兵士が姿を現した。


「お待たせした。アノニム様がお待ちだ。それと我らが王が、もう少しでお帰りになられる。御案内する。付いてこられよ」


 その兵士の言葉に、バルドゥを中心として互いに顔を見合わせる。


「ミッドガ・ダルの王がきているのか……」


 そして黒い兵士達によって、カレンとソニアを除く獣人達、四人は、一際大きい兵舍に案内され、その中へと入った。


 中は奥に置かれた簡素な造りの椅子がひとつ。その両脇にふたりの人物が立っていた。

 

 右側に立つのは、あの黒の魔導士アノニム。そして左側に立っているのは、黒い鎧で身を固め、巨大な槍斧(ハルバード)を手にしたひとりの巨漢だった。それ以外に、この場所に人の気配は感じ取れない。

 朱色の髪を逆立てた、猛々しいその巨漢の男が、ギロリと入ってきた四人の事を睨み付ける。


「………」


 その姿を横目で見ながら、バルドゥはこの兵舍内をサッと見回す。


(ミッドガ・ダルの王の姿が見当たらないが……まさか、この立っている猛者が、その王なのか?)


 そう思いを巡らしていると、不意に兵舍の垂れ幕が、何者かによって開かれる。そしてその人物は中へと入ってきた。


「レオンハルト様!」


 立っていた巨漢の男が、そう声を上げた。


 ───


 黒い長髪を持つ精悍な顔付きの風貌に、腰に長い剣を帯びた、ひとりの剣士。

 その男が羽織るマントに遮られていたふたりの人物も、続けてその姿を現す。それは──


「バルドゥのおじさん! あとダン、他の皆も!」


 こちらへと陽気に手を振るカレン、そしてペコリと頭を下げるソニアだった。


 白い薄手の下着にマントを羽織っただけのその男は、そのまま無言で置かれた椅子の方向へと向かって行く。

 そして黒いマントを翻しながら、その席へと乱暴に座り込んだ。

 黒い重鎧(フルプレート)を付けた足を組み、その膝に腕を添えながら、身体を前屈みへと突き出す。


「皆、待たせた。お前達、獣人の一族達とは会うのは初めてだな。俺がミッドガ・ダル戦国の王。いや、違うな。ミッドガ・ダル戦団の長、レオンハルトだ」


 椅子に腰掛け、左右に黒い巨漢の戦士と魔導士を従えるレオンハルトと名乗った男が、切れ長の目を獣人達の方へと向けながら、そう声を上げた。


(ミッドガ・ダルの戦王。ミッドガ・ダル戦国。近年その名の国を興し、今では隣国のこのティーシーズ教国やノースデイ王国の領土を次々と切り崩し、自らの版図を広げている、今や一番の大国であるアストレイア王国に次ぐ勢力を持つ国となっている……その国の王が、この男……)


 目の前の男の姿に、目を奪われたバルドゥが、漠然と思いを巡らす。


「ええぇーーっ、あんたってさ、ミッドガ・ダルっていう国の王さんだったの!?」


カレンが驚愕の表情で、レオンハルトの事を指差しながら、大袈裟に声を上げる。


「この無礼な獣人どもめが! 貴様ら野蛮な獣人は、人の礼儀というものを知らんのか! まずは我らが王の前に跪かぬか!!」


 雄々しく吠える巨漢の戦士の声に、バルドゥ達は膝を床につけ、跪こうとする。


「いらん、跪く必要などない。俺は、王になどなったつもりはないのだからな」


 それを止めるレオンハルト。それに巨漢の男が抗議の声を上げる。


「陛下、また、そのような事をお言いになさる。貴方は戦団の長ではなく、ミッドガ・ダル戦国という名の国の王なる御方なのですぞ!」


「何だそれは? 全くのストラトスの受け売りではないか?」


「ぐぐっ、そ、そんな事を仰らないで頂きたい……それではまたこの俺が、い、いや私が、奴に口喧しく捲し立てられてしまいます……本当に勘弁して下さいよ。義長兄(あにじゃ)、あっ、いや陛下!」


「ふははっ、素が出てしまっているぞ、エドガー」


「……レオンハルト陛下、ホント、もう勘弁してくれ……」


 そして主従のやり取りを、一通りやり終えたレオンハルトが、自分の前に立つ獣人達にその顔を向けた。


「さて、そうだったな。俺はすっかり忘れてしまっていたが、このアノニムが事前に暗躍し、色々と策を弄しているのであったな。まあ、まずはお前達の王を呼び出す事から始めよう──アノニム!」


 そのレオンハルトの呼び掛けに、魔導士アノニムが答える。


『承知した』


 アノニムは一歩前に踏み出すと、その手に水晶玉のような物を取り出し、何らかの詠唱を始めた。

 すると、水晶玉がその手から離れ、宙に浮かびながら目映い光を放ち出す。


 そしてやがて、その下に現れる半透明なひとりの男の姿。おそらく、この男が獣人の王たる人物なのだろう。


 黒の魔導士、アノニムの姿見の遠話。その秘術により現れた、実体のない王に向かい、跪く獣人達六人。

 そして朧気な姿の男が、その口を開いた。


 ───


「御苦労だった、バルドゥよ。そして我が勇敢なる一族の戦士達──」


「……我らが王、獣王、バルバトス様!」


 跪くバルドゥの口から、思わず感極まったような声が漏れる。


 その様子を目にしていたレオンハルトが声を上げた。


「さあ、役者は揃った。早速、軍議を始めるとしようか」


 そして右に立つアノニムへと、鋭い眼光を放つ視線を送る。


『………』


「貴様の中に思い描いている『滅びの時』その為の、さぞかし有意義となる話し合いを──な?」



      挿絵(By みてみん)




                 



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