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一心同体の魔人 ─魔剣と少女、Duoが奏でる冒険譚─  作者: Ayuwan
4章 魔人 VS 不死公
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24話 激突

よろしくお願い致します。


 ───


 俺は扉を閉めようと後ろに振り返る。すると、目の前にはディアスの姿が──


 どうやら、見送りに来てくれたようだ。


「デュオ君、武運を……」


 彼の声に俺は手を上げて答えた──次に扉を閉める。


 ──ギギギ、ギィ……


 バタン───


 そして静寂となった。



 ───



 周囲に漂う、カビと埃の匂い。



 だが、城内はそれほど荒れてはいなかった。階段も大きな破損などは無く、その原形を留めている。


 俺は慎重に進みながら、一通り、辺りの探索をし始めた。


 昼間だが、城内にはあまり日の光が入ってこず、かなり薄暗い。


 やがて全て調べ終えてはみたが、この一階には何の異常も特に見付け出す事はできなかった。


 ───


「となると、後は二階か、地下か……」


 俺は両方へと続く階段の前でそう呟く。


「でも、どう考えたって、やっぱり地下だよな?」


 そして地下へと続く階段の先に視線を走らせた。おそらくその先は、この場所以上に日の光が失われる事になるだろう。


 ………。


 心なしか風が吹き荒む音が、地下から俺達の事を呼んでいる不死者(アンデット)達の怨念おんさの声のようにも聞き取れる……。


 ───


『……ねぇ、あのさ、アル。大丈夫だよね?……そ、その……お化けや幽霊だなんて、そんなのただの迷信だよね?』


 まだ言ってらっしゃる─ったく、喋る剣は全然、平気なくせにさ。


『はいはい。その答えは下に降りたら、きっと分かるよ』


 俺達はいかにも怪しそうな雰囲気漂う、地下へと続く階段を降りて行った。


 降り進むにつれ、入ってくる光が弱まり、辺りが急速に薄暗さを増していく。


 やがて地下の広い部屋の空間に辿たどり着いた時には、ほとんどその光は失われていた……。


 ──暗闇の中、静寂だけを感じる──



 ─────



「何も無いのか? いや……これは……囲まれているな!!」


 真っ暗な空間。


 周囲でカタッ、カタッっという、そんな音だけが聞こえてくる。


 徐々に暗さに目が慣れようとした頃、その時を見図ったかのように部屋中の壁に取り付けられたランプが独りでに灯された。


 それにより、俺達を取り囲んでいる者達の正体が顕になる──


 それはやはり予想通りの不死者(アンデット)……それら、複数の魔物達に俺達は囲まれていた。


 ───


 数は数えきれない程だ。確認できる姿は、様々な得物を手にした骸骨戦士(スケルトン)動く死体(ゾンビ)、中にはそれらにつられて集まってきたのか、数体の食屍鬼(グール)の姿も見受けられる。


「おわっ!─って、くそっ、いきなりの修羅場かよっ! それじゃあ、よしっ!」


 俺は背負った剣に手をかけようとした! その時──


『に、にぎゃあああああぁぁーーっ!!』


「う、うわっ! なんだ、どうしたっ、ノエル!?」


『にゃああ……ぐすん……な、何、あれ?……ガイコツが、死体が動いてる……うわっ! ひゃああああーーっ!!』


 ………。


「だあああぁーーっ!! うるさいっ、集中できないだろっ!」


 声に出して言っちゃてるけど、どうせ俺達しかいない。もう構うもんか!


『……だって、だって、だってえぇ~、ガイコツが、死体が……お、お化けっ! うひゃああああああーーっ!!』


「と、とにかくだ、ちょっと静かにしてくれっ! そうだな、自分の意識に対して目を閉じて、耳を塞ぐように試してみてくれ。多分できる筈だから。それで何か別の楽しい事でも考えて、取りあえず大人しくしといてくれよ。分かった?」


『ぐすん……あい、分かった。試してみる……』


「………」


『………』


 な、なんだ? ホントに急に静かになったな。


 ───


『……うふふ。もうダメだよ~~、こんなにいっぱいのトマト、とてもじゃないけど食べ切れない。だけど美味しい、すっごく幸せ……』


 ………。


『……うふふふふふふふふふふふふふふ……』


 な、何かとんでもない妄想を思い描いているようだな。


 ……ま、まあ、いいか、静かにしてくれてるんだし。


 ───


「よし、じゃあ、改めて!」


 俺はまず、背負ったグレートソードを右手に取り、構える。それに反応するかのように数体のスケルトンがこちらに向かって襲ってきた。


「それじゃあ、まずはこっちの方で!」


 向かって来る複数のスケルトンに対して、俺は片手で巨大なグレートソードを振り上げる──そしてデュオの背丈を優に超えるその大剣で、大きく斜め横へと薙ぎ払った。


 ガゴォッ! という音と共に、数体のスケルトンがバラバラに砕けながら飛び散る。


 返す刀で前進しながら、もう一度薙ぎ払いの一撃!


 それにより今度は、反対方向に再びバラバラになったスケルトンが砕け飛んだ。


「グレートソードによる打撃性の斬撃は、やっぱりスケルトンには有効っと! じゃあ、お次は──」


 俺はグレートソードを左手に持ち替え、背中にある魔剣をその右手に取った。


「本命のこの魔剣で!」


 複数のスケルトンに対し、次はこっちから勢い良く向かって行って、右手の魔剣を振り下ろす。


 俺の耳にガゴォ、という打撃音ではなく、ザシュッっという斬撃音が響いてくる。


「──!! これは?」


 再び、飛び散る複数のスケルトンの残骸。


 しかし、前のそれと違うのは。砕け散っているのではなく、真っ二つに両断されていた。


「──す、凄い、スケルトンを『切断』している! しかもこの感じは……」


 ───


 間違いない、力を吸収している。血液も生命もない筈の不死者(アンデット)から、吸収している。


 一体、魔剣(こいつ)は、何を……。


「──何を、吸収しているんだ?」


 軽く俺に戦慄せんりつが走る。


 そんな時、俺の目に飛び込んでくる、宙に浮かぶ人間の頭蓋骨だけの朧気おぼろげな姿の魔物。


「あれは、死霊(レイス)か? 実体がないアンデット……だが──」


 そのレイスに対し、駆け寄って魔剣で薙ぎ払った


 ──ギョオエエエェェーーッ


 断末魔を上げながら、レイスが両断される。


「………」


 ───


 全く予測していない訳ではなかった。だが、この魔剣は一体どれ程の力を秘めているんだ!?



 ──漆黒の剣は何も答えず、ただ、紅い光を鈍く放ち続けている。


 ………。


 まあ、今までからして何でもありだからな、魔剣(こいつ)は。


 ───


 気付けば、周囲を囲んでいるアンデット達の数が増えていた。


 最早この部屋いっぱいにあふれる程に。しかも、相手は恐怖など微塵も感じない動く死者達。


 だが、しかし──


「今ので不安要素はなくなった。後は──殲滅するだけ!」


 俺は両手に持つ剣を振るいながら、周囲を取り囲むアンデット達を次々に切り崩していった。


 辺りに飛び散る骨の残骸やゾンビの肉片。


 それらの塊がどんどん周囲に降り積もる。

 

 ───


 確実にその数を減らしているのは間違いないが、一向にその勢いが衰える気配はない。


 如何せんその数が多過ぎるのだ。


「さすがにしんどいな……切りがない」


 そう呟きながら、ある一体のゾンビを魔剣で切り捨てる。そいつは神官服を身にまとっていた。次に感じ取れる、吸収される力とは別の多数の魔法の詠唱文字──


 ──これは白の精霊の魔法? こんな所で思わぬ拾い物かも。


 どうやらアンデットの中に生前、強い魔力マナを持つ神官が紛れ込んでいたようだ。


 早速、魔剣の剣先をアンデットの大群に向け、俺はその詠唱文字羅列のひとつを頭の中で思い浮かべ、声に出して発動させた。


「──聖なる閃光(ホーリーレイ)!」


 俺が発する声と共に、魔剣の剣先に白く煌めく魔法陣が浮かぶ──次に前方に太い一本の鮮烈な光線が放たれた。


 周囲が目映い白い光に包まれる。


 それにより無数の不死者(アンデット)達が、一瞬にして塵となり消滅する。


 白い光が収まるのを待って確認すると、俺の目の前のアンデット達が、全て消し飛んで無くなっていた。


 ───


「──あーーっ、やめやめ! 全く、勿体ないったら、ありゃしない!」


 突然、背後で女の放つ声が鳴り響く。


 声のした方へと振り返ると、そこには暗い紫色のマントに身を包んだ銀髪の長い髪の女が、片手を腰に当てながら、憮然ぶぜんとした態度で立っている姿が確認できた。


 その姿は、魔導士のような雰囲気を醸し出している。


 ───


「あ~あ、もう、好き勝手にやってくれちゃって、あたしが作り上げたアンデット達が……」


 そう呟く女の容姿は妖艶ようえんで美しいが、その肌はまるで死人のように青白い。


「どうもおいたが過ぎたようね? これはお仕置きが必要かしら。ねぇ、お嬢ちゃん、うふふふっ」


 ───


 ──やっとのお出ましか、『黒幕』さんっ!



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