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一心同体の魔人 ─魔剣と少女、Duoが奏でる冒険譚─  作者: Ayuwan
7章 火の精霊編 小さな王子の小さなクーデター
148/216

146話 交わる紅と青

よろしくお願い致します。

 ───


『行くぞっ! ノエル!』


『分かった! 行こう。アル!』


 ───


 戦いは始まった。


 まずキリアが右手に持つ白銀のメイス、ニヒルラミナ(刃のない)・ギロティナ(断頭台)を天に向かい掲げる。


「──我ら創造主たる五大英霊よ。その御力に於て、我ら定義を守護する為に、全ての術の光の盾となりて、我らに授け賜らん!」


 キリアが発する魔法の詠唱。


 それにより、彼女が掲げる巨大なメイスの先に、天空に浮かぶ様にして出現する一際大きな魔方陣。

そしてそれは、まるでオーロラの様に五色の光を揺らめきながら発していた。


「──五守護法陣!」


 魔法が完成し、ここにいる全ての者の身体が、煌めく五光の輝きに一瞬包まれた。


 おそらくはキリアであればこそ使用する事ができる、最上級となる全属性、物理、魔力に対する防御系魔法。


 透かさずフォリーも精霊召喚の詠唱を始める。


「慈悲深き精霊の女王ティターニアよ。貴女の銘に於て、使役足り得る全ての者の力を、我らを守護する慈愛となりて、恩恵賜れよ!」


 目を閉じながらの詠唱を終えたフォリーが、カッと見開き、自らの右手を前へと突き出す。


 同時に彼女の手の先に、虹色に輝く魔方陣が現れ、周囲は目映いばかりの閃光に包まれた。


 そんな中、誰もが目にする、宙に浮かんだ純白のドレスを纏った、ウサギのぬいぐるみを抱く少女の姿──


『──聞き届けました。我が友、フォステリア・ラエティティアよ』


 宙に浮いた愛らしい少女が、ふぅ~っと、ひとつ息を吹き掛けた。


 すると、突然穏やかな風と共に様々な種類の精霊達が群れを成して、全ての者の中を駆け巡って行く。


 シルフ(風の少女)サラマンデル(火トカゲ)オンディーヌ(水の乙女)グノーム(四肢を有するキノコ)、あらゆる属性の精霊達が、織り成す幻想的な大行進。


 そしてそれらは、やがてぬいぐるみを抱いた少女の元に帰り、共に幻の様に消え去った。


 気付けば、俺自身も身体が軽くなった様に感じ、加えてみなぎる力も感じ取れる。


 フォリー。彼女の最大級の守護となる召喚魔法。おそらくはそれにより、様々な属性の恩恵をこの身に受けるに至った事だろう。


 ──そうだ! せっかく再会を果たしたアレンとコリィが王となり、忌まわしいエクスハティオの呪縛からクリスは解き放たれた。

 事態は良い顛末を迎え入れ様としていたんだ!


 なのに……なのに! こんな所で誰ひとりも死んで欲しくはない!


 皆で今あるこの世界の未来を!


 だから……だからっ!!


 ──魔剣()に力を貸してくれ! 魔剣(黒髪のひと)!!


 ───


 そして俺にしか感じる事のできない紅の瞳が、それに応じる。



 ─────



 ──Yes. Let's hear that wish、My master──



 ─────



 確かに、そんな声か音か……とにかく言葉の様なものをはっきりと感じ取れた俺は、更に右手に持つ魔剣からみなぎってくる力を感じながら、両腕を広げる様に左右へと突き出した。


 ゆっくりと目を閉じて、魔法を発動する。


「──光の(ライティング)防御壁(・ウォール)! 魔力の(レジスト)障壁(・マナ)!」


 俺は目を開ける。


 すると、周囲には数え切れない程の宙に浮かぶ、白と青の輝く複数の魔法陣。


 そして次に、それらがおびただしい数の白と青の閃光の雨となって、地上にいる周囲の者、全員に降り注いだ。


 俺を含め、皆が一斉に瞬時にして白く光る壁と青く輝く壁を身に纏い、そしてそれらは不可視化していく。


 ───


『キリアさんや、フォリーさんも凄いけど……やっぱり……アルもすっごい!!』


『ああ、確かに──』


 …………。


 ……す、すっげえっ! 魔剣(コイツ)の事だから、凄いとはある程度予想はしてたけど……と、とにかく


 ──すっげえぇぇーーっ!!


『………』


 ……ありがとう。魔剣(黒髪のひと)


 ──そんな時。ふと思い浮かぶ、いつか感じた事のある面影。


 艶やかな漆黒の、腰まで届く長髪の妖しくも美しい女性。


 俺の記憶の中では、彼女はいつも無機質を漂わせる無表情だったが、何故かその時だけは、彼女の目の真紅の瞳が、僅かに笑みを浮かべた様に感じたのだった。




 ──────────




 ──No. I just did something natural──My master


 【いいえ。当然な事をしたまでです。私のマスター】


  Because──


 【何故なら──】


 ──Because you and I are one heart and one body──


 【何故なら、 魔剣(あなた)魔剣(わたし)は、一心同体だから──】



 ──えっ!?




 ──────────




 突然、暗闇の中へと引き込まれる感覚に陥り、気が付くと、目の前には例の“黒髪の女性(ひと)”──


 ──ジジジッと音が聞こえ、(おぼろ)気に揺れる蜃気楼の様なその身体。


 じっと俺の事を見つめる真紅の瞳。


 彼女は無表情ではあるが、やはりその顔は、神秘的でとても美しく感じるのだった。


 それはそうと……


 ……え?……今、何って?


 一心同体??


 ……一心同体……。


 ──Yes. That's right


 【はい。そうです】


 ──Master and I──


 【マスターと私は──】


 ………。


 ──The one heart and one body


 【一心同体です】


 ………。


 そう明言する彼女の顔は、相変わらずの無表情だったが、綺麗な目の紅い瞳だけが、やさしく微笑む様に揺らぐ。


 何故だかそんな彼女の顔に、俺はカーッと熱くなり、赤面してしまうのだった。


 ───


 ──ぐ、ぐふっ。


 ………………


 ……………


 …………


 ………


 ……アル……


 ……アルっ!



 ──────────



『──アルっ!!』


 ──えっ?


『アル! 急にどうしたの!?』


『……ああ、悪い悪い。大丈夫、少し……な?』


 ノエルの俺を呼ぶ声に、意識をこちらへと戻す。


『ホント? ホントに大丈夫なの?……もう、急に黙り込んじゃって心配したんだからっ!』


 ……ちょっと放心状態になってたか?


 あまり時間は経ってなさそうだけど……。


『ホント、しっかりしてよ? アルと私は一心同体なんだからね!』


 ──!!


 【 魔剣(あなた)魔剣(わたし)は、一心同体だから──】


『………』


『アル?……アルっ!? ねぇ、ホントに一体どうしちゃったの?』


 ──え、ああ……


 ───


 【一心同体だから──】


 『一心同体だから──』


 ───


 一瞬。俺の頭の中で、魔剣(黒髪のひと)とノエルの顔が重なる。


 ……やっぱ違う。全然別人……だよな?



 ──“一心同体”──



 その言葉を、まさかノエル。彼女以外から言われるなんて……。


 ……ましてや、“黒髪の女性(ひと)”と一心同体なのが、さも当然の事の様に感じてしまって……。


「………」


『……アル?……』


 その事に関して何故だか、ノエルに申し訳なく感じてしまい、彼女に謝罪する自分だった。


『すまん、ノエル。そうだ、俺達ふたりだけが“一心同体”だ!』


『??……アル……』


 怪訝そうな声を漏らすノエルに、俺は自身にも迷いを追い払い、気合いを入れ直す様、彼女に言葉を投げ掛けた。


『よし。それじゃあ、魔人デュオ(俺とノエル)、改めて行くぞ!!』


『……アル──うんっ!!』



 ─────



 黒い巨人イニティウムの方へと、白銀のメイスを振り上げながら駆け寄るキリアと、その直ぐ後に続くフォリー。


 一方、黒い雌型セクンドゥスに、白銀の長剣、ハバキリを真横に構えながら駆けるレオンと、それを追うクリス。


 そして俺は──


 ───


『──聖なる(ホーリー)(・レイ)!』


 突き出した左手に、白い魔法陣。


『──黒の破壊光線(カタストロフィ)!』


 右手の剣先から、黒い魔法陣。


 次に──


 ──ギイィン! ガイィン! ギイィン!


 響く三連続の金属音。最後に一際大きな打撃音が響き渡る。


 ──ガギイィィィン!!


「でっ!──りゃあぁぁーーっ!!」


『フッ──ふぬっ、応!!』


 俺の魔剣と、黒い騎士ルティウム(三番手)の交差させた武器となる両腕が、激しくぶつかり合った。


 ───


「……ちっ! やっぱ予想以上の化けもんかよっ!」


『フフッ、貴様もまた然りではないか!』


 ──ガチッガチッと、打ち合わさった金属の軋む音を耳にしながら、強引に振り抜く為、魔剣に力を込める。


 予想通り、奴との接近し(ざま)に俺が放った異なる属性の魔法は、ふたつ共に奴の左腕から出現した黒い大盾のような物で全て防がれてしまった。


 次に右手から繰り出す魔剣の斬撃に合わせて、同時に放った三本の触手による攻撃も、奴の腕となる武器によって(ことごと)く打ち払われてしまったのだ。


 今はただ、両者打ち合わさった互いの武器に満身の力を注ぎ込む。


 やがて──


『──ぬんっ!!』


「ちっ、ちいぃぃっ──!!」


 ──ギイィンッッ!


 ルティウムが奮起の声と共に、打ち合わさった自らの交差させた両腕を、驚異的な力で左右に振り抜く。


 その行為によって、必然的に魔剣を弾かれる事になった俺は、空中で一回転しながら奴との距離を一旦取る為に後ろへと跳び退いた。


『フフッ。では、次は此方(こちら)から参るぞ──』


 黒翼の騎士ルティウムは、俺へと両腕を突き出した。


『射抜け! 黒い激鑓──暗黒の(ダークネス)戦槍(・ジャベリン)!』


 右手に出現した黒い魔法陣と共に、浮かび上がる尖った先端の黒い魔力(マナ)の槍。そして──


『貫け! 黒い閃光 ──暗黒の(ダークネス)流星光(・ミューティアライト)!』


右手からは、迸る黒い閃光。


 それらルティウムから放たれた魔法による攻撃が、俺達デュオへと迫ってきた。


「──!!」


『!!……ア、アルっ!』


 ………。


「──でやああぁぁぁーーっ!!」


 ノエルの怯える声を耳にしながら、俺は気合いとなる雄叫びと共に、魔剣を振り上げ走り出した。


 ───


 迫りくるおそらくは脅威的な黒い魔法。


 いくら複数の防御系魔法による魔力(マナ)の障壁を身に施されているとはいえ、今までの俺なら、その対処法に、例え一瞬でも間違いなく躊躇していた事だろう。

 いや、もしかすれば恐怖すら感じていたかも知れない。


 だが──


「ははっ、そんなもん、今の俺にとっちゃ都合の良い糧なだけ──全部魔剣()でぶった斬るっ!!」


 ──そう。今は完全に確信していた。


 ──“俺と魔剣()は同一なのだ”──


 ──と


 だったら! 何も怖れる事も、迷う必要なんてのも一切必要ない!!


 なんたって俺の存在自身が魔剣()という存在! (ことわり)とは異なる強大な力を持つ、この世界に在らざる『存在意義』の存在──至高最強の者なんだから!!


 それが認識できたのなら、尚更俺は──


 ───


 先ず迫ってくる黒い光の槍を、俺は駆け抜け様に先端から魔剣で斬り裂いた。


 ふたつに割れた魔力(マナ)のそれは、形をなくし、霧状となって魔剣の方へと吸い込まれる様に消えていく。


『──何だとっ!』


 ルティウムが上げる驚愕の声を耳にする俺に、間髪入れずに迫ってくる黒い光線に対し、俺は次に魔剣を防ぐ様にして用いるのではなく、剣先を光線に突き立てる様にして突っ込んでいった。


 黒い光線と切っ先が触れた瞬間、光線は無数の光へと裂かれる様に四散し、それも霧状の魔力(マナ)となった。


 そして瞬時にそれを取り込む魔剣。


 同時に新たな力が注ぎ込まれ、感じ取れる溢れんばかりの活力──


 俺の右目からは、放たれる強烈な“紅”の光を感じる。


 ───


『……ば、馬鹿な! 魔法を……魔力(マナ)を実剣で斬り裂くなど……あり得ぬ! しかも──』


 続く黒い騎士の驚愕の言葉。


 そうさ、俺は! 魔剣()は──!!


 やがて黒翼の騎士ルティウムの元に辿り着いた俺は、手前で大きく跳躍した。


『貴様! 魔力(マナ)を霧の様にして如何とする? それは、一体どの様な意味合いの所業なのだ!?』


 跳躍の頂点で大きく振りかぶっての魔剣の斬撃を、地上に待ち構える黒い騎士に向かって叩き込む。


 溢れる紅い光が、尾を引く閃光となるのを感じながら──


 ───


 ──ガギイィィィン!!


 俺の放った斬撃を、ルティウムは左腕の剣で受け止める。


 ──ギチッギチッ


『ぐっ──ぐぬうっ!』


 だが、それでは抑え切れず、右腕の戟を剣と交差させ凌ぐ黒い騎士。


『ぐっ……き、貴様! 斯様な力、一体如何に!?』


 ミシッミシッと打ち合う漆黒の剣に力を込めながら、俺は答えた。


「さっきのお前からの魔法、全てこの剣が強くなる為の糧として頂いたよ」


 ──ギチッギチッ


『な、何だと! 貴様、真に異端なる者なのか!?』


 ──ギチッギチッ


「ああ、そうだよ。俺は漆黒の“魔剣”! 本来、この世界とは干渉せざる、異なる『存在意義』、そんな存在だから、定められた(ことわり)なんて関係ないのさ。そして──」


 ──ギチッギチッ


『ぐっ、ぐぬっ!!』


 ──ギチッ!──


 バギィンッッ!


『ぐっ!──ぐぬおぉっ!!』


 魔剣と打ち合わさっていたルティウムの左腕の剣がバラバラに破壊され、同時に振り抜かれる事になった俺の斬撃により、胴から裂かれた奴の左肩が、空中をグルグル回転しながら飛んでいった。


 黒い騎士ルティウムの肩口から鮮血が噴き出す。


 俺が地に足を着けると同時に、空中を舞っていたルティウムの左腕が、パァンッと音を立て破裂し、バラバラとなった肉片も、やがては霧状と姿を変え、俺の持つ魔剣の方にスーッと導かれる様に取り込まれていく。


『ぎっ、ぐぬぬっ! き、貴様は──!』


 肩口を押さえるルティウムの方へと、俺は紅く揺らぐ光の瞳をゆっくりと向ける。


「そして魔剣()は強くなる! それこそが今の俺のすべき事。本来の成すべき魔剣()の『存在意義』なんだ! だから、こんな“小っぽけな世界”のくだらない(こだわり)なんかに、いつまでも付き合ってる訳にはいかないんだよっ!」


 俺の上げる宣言の声に呼応する様に、右手の漆黒の剣が、紅の鈍い光を妖しく強める。


 それと反応し、右の瞳から燃え上がる様な“真紅”を感じた──




 ─────




『……アル……』


『……アル、お願い帰って来て。自分を……“アル”を見失わないで……』


『……アル』


『私を置いて行かないで……また、私をひとりぼっちにしない……で……』


『……ぐすっ……う、ううっ……』


 ……………


 …………


 ………


 ノエルの泣く悲し気な声が、頭の中に静かに響いてくる。



『……お願い、私を置いてかないで』



 ………!?




 ──────────




 ──もう泣くなよ。手間取って予定よりちょっと遅くなっただけじゃないか?


 ──ちょっとって、二ヶ月間も何の連絡もなかったじゃないっ!!


 ──仕方ないだろ、俺だって、これでも今回はかなり厳しかったんだぜ。


 ──分かってる……分かってるよ。だけど、約束したじゃない……


 ──!!……そうだったよな……その……ホントごめん。俺が悪かったよ。今度はちゃんと連絡するから。


 ──お願い、私を置いてかないで──




 ──────────




 ──!!


 ……………


 …………


 ………


 どこだろう。いつだったのだろうか?


 断片的に残る記憶の欠片(かけら)──



 ──お願い、私を置いてかないで──



 何でだろう?


 どうして……


 何故だか、ノエル。彼女から昔にそんな風に言われた様な錯覚に陥って──



 ─────




    挿絵(By みてみん)




『大丈夫だよ、ノエル。俺はここにいる』


 まるで自分自身も夢から現実に戻すかの様に、俺はノエルにそっと念話の声を掛けた。


『えっ……ほんとに! ほんとにアルなのっ!?』


『ああ、俺は魔剣に取り込まれた訳じゃないよ。ただ何となく俺、“魔剣()”の本当の在り方が何となくだけど、分かった気がしただけなんだ。なんか心配掛けちゃったみたいで、すまん……』


『……ぐすっ、ううっ、よ、良かった……』


『ホント、ごめん!』


『ううっ、すんっ……うん、もういいよ。一緒にいられるのなら……』


『ホントにごめん! それと大丈夫。俺はもう二度と魔剣に取り込まれる様な事はない! 前にノエルと交わした契約。俺達はずっと一緒だ!』


『……う──うんっ!』


『俺は“魔剣()”でも、ノエルがつけてくれた名前の存在でもある。そしてこんな俺が、この世界と関わりを持つ架け橋となった存在が──分かってるよな?』


『もちろん!』


『アルとノエルはふたりでひとつ──』


『うんっ!!』


『『一身同体の魔人デュオ・エタニティ!!』』



 ─────



 ──ズシュッ


 音が聞こえ、その方に意識を向ける。


『おのれ、これ以上の屈辱! 最早許すまじ! 黒の御君の騎士ルティウムの名に於いて!!』


 黒翼の騎士の失われた左肩から、新たな腕が異形状となって生えてきていた。


 その形状は手となる部分がなく、最早剣その物。


 俺はゆっくりと魔剣を構え、黒翼の騎士に両目を向ける。


『──!? き、貴様……』


 騎士ルティウムが驚きとなる声を漏らした。


『それはまた面妖な真似事を……貴様のその両目の瞳……』


 ──確かに感じる──


『貴様の互い違いの瞳……それが今では……』


 ──うん。感じるね──


『その両瞳……その色はまるで、交じり合わさった様ではないか──!?』


 ──“俺(私)達は、今完全な『ひとつ』”──


 ───



      挿絵(By みてみん)



『行くぞ! デュオ(ノエル)!!』


『うん! 行くよ、デュオ(アル)!!』




 ─────




 『滅ぼす者』尖兵、ルティウムを静かに見据える、漆黒の剣を持つ少女の目に変化が生じていた。


 以前は右が紅い瞳、左が青い瞳、互い違いの妖眼(オッドアイ)と呼ばれるものであったのが、今では両瞳が紅と青が織り交じる同色となっていた。


 ──神秘的な紫水晶(アメジスト)の輝きのふたつの瞳──


 その両目から、紅い光が溢れ出ている。


 やがて、少女はゆっくりと漆黒の剣を振り上げ、全力で駆け出した。





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