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一心同体の魔人 ─魔剣と少女、Duoが奏でる冒険譚─  作者: Ayuwan
7章 火の精霊編 小さな王子の小さなクーデター
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145話 黒翼の騎士(エクエス)

よろしくお願い致します。

 ─────



 かつて大精霊達が世界を創造した時に、同じく()の者達を護る為に、創られた存在。


 ──四守護竜。


 地の大精霊の守護竜──鳴地竜めいちりゅうウィル・ダモス。


 水の大精霊の守護竜──碧水竜へきすいりゅうコーリエンテ。


 風の大精霊の守護竜──飄風竜ひょうふうりゅうインテリペリ。


 火の大精霊の守護竜──劫火竜ごうかりゅうエクスハティオ。


 そして五つ目の精霊である白と黒(零)の精霊には、それに相等する者が、存在していないとされている事。


 フォリーの考察によればそれは、そういった存在が、“定義”されてはいるが、未だ現実世界に、象を成す。

すなわち、具現されてないだけではないのか?──と。


 そしてそれに当たる守護竜たる者が、おそらくは『滅ばす者』ではないのか?──と。


 白と黒(零)の守護竜の具現化。


 その鍵を握るは、各四守護にまつわる、または所持する“何か”──


 彼女が言うには、四守護竜の内、風と水の守護竜は遥か昔の時にその象と生命なくし、今は伝説上のみ、語られる存在らしい。


 そして更に重要なのが、その(むくろ)があるとされている地。


 すなわち前回ティーシーズ教国の城塞都市ヨルダムの地にて、黒の魔導士アノニムの手によって、風と水の“それ”らは、どうやら奴が所持する物に至ったと予測されるとの事だった。


 今、この世界に於いて現存しているのは、火の守護竜エクスハティオと、地の守護竜ウィル・ダモスのみ。


 そして先程の俺が行った行為によって、最早火の守護竜エクスハティオは──



 ─────



 説明を終えたフォリーは、一息つくと再び俺に真剣な眼差しを向けて語り掛けてきた。


「私は先程、エクスハティオの幻影が消え失せる時に感じたのだが、奴の存在は滅した訳ではないと予測する……何故なら僅かながら、未だ劫火竜の存在を感じ取る事ができるのだ」


 俺はそれに相づちを打つように答える。


「やはりあの時、同時に姿を消したアノニムが、何かを企てているのか……」


 フォリーは一度目を閉じると、軽く頷いた。


「ああ、おそらくはな……この世界とは否なる、幽世(かくりよ)でもある精霊界。()の者は、その中でも灼熱の世界、“獄炎界”にその身を封ぜられていると聞く。少し危険な行為ではあるが、私は精霊を通じて精霊界を垣間見る事を試みようと考えている」


 そして俺に再び強く頷いて見せた。


「フォリー……大丈夫?」


 思わず零れ出てしまう俺の言葉に、フォリーは美しいその顔に、ニコッと笑みを浮かべた。


「任せておけ! デュオ。何か事態が緊急の様相を呈するのなら、その時はお前の剣の力を必要とするかも知れない。頼りにしてるぞ?」


「うん。その時は任せて!」



 ─────



『さて、それは如何ともし難く。その様には参りませんよ──』


 ──!?


 不意に後方から声らしきものが響く。


「何者か!?」


 フォリーも声を上げ、その声の発生元に目をやった。


 そんな俺達の目に映るのは──


『フフッ、何人(なんぴと)たりとも今の黒の御君に干渉する事、敵わず──

不躾ながら、このわたくしめが貴殿方のお相手を仕まつりましょう』


 皆、一斉に人の声とも取れない不気味な音の様な言葉を放つ者に注目する。


 黒い鎧に赤黒の髪。顔には例の仮面。

 長槍を持つ右手に、剣の形を象った自らの左腕。


 それは、かつて“オルデガ”と呼ばれていた者だった。


 そしておそらく今は、『滅ぼす者』の尖兵となる者──



「……な、何っ!?」


「え?──くそっ!!」


「チィッ──!」


 フォリーと俺が驚愕の声を漏らし、レオンは舌打ちを打ちながら、それぞれの武器へと手を伸ばす。


 ──ガギイィィィン!


 それと同時に発生する激しくぶつかり合う金属音。


「下がれ! 下郎!!」


『ほう……中々、どうして』


 キリアが振り下ろす巨大な白銀の鉄鎚(メイス)を、自らの剣の左腕で受け止めている男の姿が確認できた。


 ギチッギチッと、両者の持つ打ち合わさった武器が軋む音を立てる。


 それは誰よりもいち早く奴の存在に気付き、手にする白銀のメイス、刃のない(ニヒルラミナ)断頭台(・ギロティナ)で襲い掛かったキリアだった。


 さすがにレオンをして、最強の人間なる者と言わしめた事だけはある。

 驚異的な瞬発力だった。


 だが──


「──な……!?」


『フフフッ──』


 キリアが思わず絶句の声を上げ、それに対し、男からは嘲笑の声が漏れる。


 ──ギリリッ


 それもその筈、驚くべき事に打ち合わさったいた男の左腕の剣が、キリアの持つ男よりも明らかに巨大なメイスを、ジリジリと押し返していた。


 やがて──


『フフッ、ぬんっ!』


「くっ!──せやあっ!」


 ──ギイィィィン


 仮面の男が気合いの声と共に、キリアのメイスを打ち払う。


 それと同時に、男から振り離され様に、透かさずメイスの逆側での突きを繰り出すも、その咄嗟の攻撃も、男の右手に持つ槍で打ち払われてしまった。


「…………」


 後ろに飛ばされる事になったキリアが、ズザザッと片膝を地面に着きながら、険しい視線で仮面の男を睨み付けていた。


「──キリア!」


レオンが長剣を構えながら、キリアの前方に立つ。


「無事か? キリア」


「はい、申し訳ありません。レオンハルト様」


 横目でチラリと伺いながら、問いかけるレオンに答えるキリア。

 そんな二人の元に、俺達も辿り着いた。


「アノニム! やはり奴は──!?」


 フォリーがレイピアを構え、


「こ、こいつらが僕の心臓を……エクスハティオの奴を……?」


 クリスが長杖を左手に身構える。


 後方では抜刀し、コリィを守る様にして構えるアレンの姿も確認できる。そしてそれらふたりを守るべく、イザベラやガリレオを筆頭に、親衛隊が続々とその元に集結していた。


 そんな中、最後に俺がレオンの前に立ち、魔剣を構えて仮面の男と対峙する。


「アノニムは今どこだ! 一体何をしている!?」


 ───


 仮面の男は静かに笑う。


『フフッ、黒の御君の崇高なる(ことわり)のご所業に、貴殿方野卑たる者が知る必要は、無きにしも非ず。今更、敢えて知る必要もないでしょう──フフフッ……』


「何だと! だったら、力付くで知るまでだ! 例え『滅ぼす者』の眷族だろうと、たったお前ひとりだけで私達を止める事ができると思ってんのかよっ!?」


 俺が右手にする魔剣で、男を差しながら問い掛けの大声を放つ。


 その言葉に、仮面の男は一度軽くうつ向き、直ぐに俺へと視線を戻した。


 仮面から僅かに覗く男の瞳が、黄色い光を灯す。


『成る程、如何にも今のわたくしの力、ひとつだけでは如何ともし難いでしょうね。ならば──』


 男は右手に持つ長槍を手放した。


『わたくしは、自ら本来の姿に戻り、黒の御君より授かった大いなる恩恵の力を以てして、貴殿方に推し当たらせて頂きましょう!』


カツンッと音を立て、槍が地面に接触する。


 瞬間──


 再び暗く立ち込める暗雲から、一筋の稲光が轟音を轟かせながら地上に向けて迸った。


 ───



 ──アオォォォォォォォーーンッ──



 また耳に届く、心の中に直接響いてくるかの様なおぞましく感じる、怨嗟か絶叫とも取れる音。


 ゴゴゴッと再び大地が大きく揺らぎ、激しい暴風が吹き荒ぶ。


「──くっ!!」


 それらに耐える為、下半身に力を込め、両腕で顔を覆った隙間から、仮面の男の姿が変貌していく様を、何とか確認する事ができた。


『フフッ──フハハハハハハッ!』


 気高く笑い声を上げる仮面の男の周囲から、突然出現した多数の黒い筋肉の筋の様な物によって、男の身体は覆い被さる様に包まれていく。


『殻を“破る”のではなく、“纏う”──わたくしは『滅ぼす者』三番目の尖兵、その中核(メディウム)と成す者!』


 それら黒い筋が男の身体絡み付く様に駆け巡り、纏い付き、黒い表皮となり、次々とある形を成形し、象っていく。


『──『滅ぼす者』の三番手(なり)!!』


 やがて、暴風と地震は和らぎ、顕になるかつて“オルデガ”と呼称されていた『滅ぼす者』の眷族。


───


 赤黒い髪の仮面の頭部はおろか、身体全体を重厚な黒い表皮の様なものに覆われていた。


 そう──まるで漆黒の鎧を纏った“騎士”さながらの様だった。


 最後に完全な甲冑となった頭部の目にあたる僅かな暗い隙間から、黄色い双眸となる光が宿る。


『さて──では、お次と参りましょうか?』


 漆黒の騎士は、ゆっくりと右手を天にかざした。


『“不死者(アニメイト)生成(・デッド)”、不死者(アンデッド)として甦らせるのではなく、新たなる生命として誕生させる、預かりし黒の御君の偉大なる御業(みわざ)──“幽魂(レナトゥス)転生(・アニマ)”!!』


 ──アオォォォォォォーンッ!


 再び亡者の悲鳴ともなる音が、辺りに木霊する。


『さあ、今一度参れ! わたくしの前に! 完全なるルティウム(三番手)に成らんが為に!!』


 バチッバチッと音を立て、黒い騎士。中核(メディウム)の背後に二つの空間の歪みが現れ、そこからそれぞれ、全裸の男女の姿が──


 左側から黒髪の細身の男性。


 右側からは澄んだ白い髪の美しい女性。


『参れ! 左翼(シニストラ)! 右翼(デクステラ)! 再びわたくし達はひとつに!! これを以て、わたくしは完全なる『滅ぼす者』、三番手の尖兵成らん──!!』


 左右の歪みから完全に姿を現した男女は、ふたり共に目を閉じ、意思のない者ように、ただ宙に浮いていただけだったが、みるみるその姿は黒い肌を持つ異形の怪物へと変化していった。


左翼(シニストラ)、剣の形状の両腕を持つ、背に左片翼だけを生やした怪物。


右翼(デクステラ)、戟の形状の右腕を持つ、見事なプロポーションの背に右片翼だけを生やした怪物。


 そしてそれらふたりが、やがて宙から降りて地上の中核(メディウム)と重なる──


 瞬間、今度はメディウム目掛けて、天から轟音と共に激しい雷の様なものが叩き付ける様に迸った。


 メディウムの黒い鎧の身体が眩しい閃光に包まれて、目を開けて直視できなくなる。


「く、くそっ! 一体……」


 目映い光に視線を遮られ、目を背けていた俺が、やがて光が収まり目にした者の姿は──


 ───


 ──ヒュンッ!


 剣が空を切る音が耳に届く。


 かつて黒い鎧の怪物。今もその姿は、以前の騎士の様な鎧の雰囲気を醸し出していたが、肩や胸部、膝、肘、有りとあらゆる先端となる部分が鋭く尖る形状となっていた。

 また、全体的に身体自体が一回り大きくなった様にも感じる。


 右腕には手とは別に、腕から突き出る様に飛び出た黒い戟。


 左腕も同様にして生えている黒い剣。


 そして何よりも──


 ──バサッ


『フフッ──』


 その背に生えた見事なまでの美しい漆黒の両翼。


 怪物は、バサッバサッともう一度翼をはためかせる。


 ──黒い翼を持つ暗黒の騎士──


 その荘厳なる姿は、まるで空想上の存在である“悪魔”と対を成すとされる“大天使”、いや、黒と染まっているので“堕天使”──


 それを連想させた。


『さあ、わたくしは『滅ぼす者』の三番手──ルティウム!!』


 完全体となったルティウム(三番手)が、音とも感じる声を、右腕の戟を天に突きかざしながら響かせた。


 また一度、雷鳴が轟き、かざされた戟に雷撃が迸る。


 同時に──


 ──アオォォォォォォォーーンッ!


 例の死霊の絶叫が木霊する。


 そして三度(みたび)発生する激震。


 ミシッミシッと大地が軋み、やがて細かい亀裂が周囲に走った。


 ───


 ──“うわああぁぁぁぁーーっ!!”──


 ───


 揺らぐ大地で、地に足を着く者達から驚愕と恐怖の声が発生する。


 やがてその割れた隙間から、競り出す様に、或いは手を覗かせ、這い上がる様に例の“黒い不死者(アンデッド)”が、続々と姿を出現させる。


 ───


「──く、くそっ!これは一体!?」


『……ア、アルっ!!』


 俺の漏らす声に、ノエルが反応してくる。


『……大丈夫だ。魔剣()がいる!』


『……う──うんっ!!』


 ───


『フフッ、これぞさ迷う幽魂を転生させ、新たな生命“黒い(ニゲル・)戦う者(ベラトール)”を創造する、我が黒の御君の御業(みわざ)──幽魂(レナトゥス)転生(・アニマ)の真骨頂(なり)!!』


 ──“オオォォォォーーッ”──


 揺れておぼつかぬ足元の中、大群となった黒い亡者達が、一斉に奇声を上げる。


 ただ唯一、翼を持つ黒い騎士だけが、両腕を広げて声高らかに嗤っていた。


『フッ、フハハハハハッ! 全ての者は黒の御君の素晴らしき御力に、黙せ! 恐れおののけ! ただ目を見開き刮目せよ!!』


 そして──


 ──ドガガッ!


 ──ドガッ!


 突然、“何か”が天空より降り注ぐ様に落ち、地面に突き刺さったのだった。


 それらは、ルティウムの左右にそれぞれ伏し、片ひざを着いていた状態から、やがてゆっくりと立ち上がり始める。


 ルティウムの右側に立つは──


「──ば、馬鹿な……あり得ん! こいつは確かに、あの時。風の祭壇に於て、デュオの手によって滅された筈!!」


 フォリーが驚愕の視線を送る先は、


 ──巨大な四本の腕としなやかな尻尾を持つ、竜頭の黒い巨人。それぞれ大剣と槍斧(ハルバード)を得物としている──


 そして左側に立つは──


「──むっ! まさかこやつは、水の神殿にて討ち果たした、あの黒い女怪か!?」


 レオンが切れ長の目で睨み付けるその先は、


 ──腰まで届く美しい白銀の髪に、完全な美となる女体を象った黒い身体。手に持つは、身の丈を大きく超える長槍の様な形状の長剣──


 ───


「何だ!? こ、コイツらは──」


『えっ、何で?……そ、そんな……嘘──』


 俺とノエルも今、確実に認識する。


「『滅ぼす者』、先鋒イニティウムと、二番手の尖兵セクンドゥス!!」


『えぇっ! そんなまさか、確かアルが倒した筈じゃ……』


 問い掛けてくるノエルに、俺は念話で応じる。


『ああ、確かに二体共、魔剣()の力を使って討ち倒した……』


 ───


 やがて、激しい地揺れは収まり、代わりに感じた事のある、例のあの現象。


 ──ミシッ、ミシッ


 空気が重く軋む──


 ───


『──フフッ、フハハハハッ!! これぞ、我が黒の御君の御業(みわざ)にて、大いなる創造の御力、幽魂(レナトゥス)転生(・アニマ)は、わたくし逹『滅ぼす者』の眷族に於ても例外ではないのですよ──』


 黒い巨人と黒い雌型を伴った黒い鎧の者ルティウムが、応えとなる言葉を放つ。


 それに応じ俺達は、それぞれの武器を三体の怪物に対して構え直した。


 俺達を含め、ここにいる全員の周囲には、取り囲む様に蠢く黒い不死者(アンデッド)、こいつが言う“黒い(ニゲル・)戦う者(ベラトール)”の姿が──


 ──ミシッミシッ


 空気が軋む。


 ───


『フフッ、ニゲル・ベラトールを含め、先鋒イニティウム、二番手セクンドゥスも所詮、我々『滅ぼす者』の眷族に於ては、只なる斥候兵、名の如く“尖兵”でしかないのですよ。まあ、例えるのなら、ベラトールが(ポーン)、イニティウムと二番手セクンドゥス辺りは、それぞれ(ルーク)(ビショップ)と言った所で──フフッ、如何でしょうか?』


 嘲笑の様にして言うルティウムに対して、俺は声を荒らげた。


「だったら、お前は一体何だってんだっ!? 尖兵の三番手ルティウム! 結局はお前だって、ただの斥候、つまりは使い走りじゃないのかよっ!!」


『──何だと!!!』


 ──ミシッミシッ


 空気が軋む。


 黒い鎧の怪物、ルティウムの鎧に覆われた僅かな目にあたる隙間から、黄色い光がふたつ、怪しく灯り揺らめく。


『──わたくしを……我をその様な下賎の者と同一と見下すとは! 我は黒の君主(キング)直属の『滅ぼす者』の眷族にて、騎士(ナイト)の正当な定義を与えられた存在(なり)! 斯様な侮辱。貴様、万死に値する!!』


 黒翼を大きく広げ、激情となる言葉を吠える黒い騎士ルティウム。


 やがて、奴の左右に意思のない者の様にして立つふたつの『滅ぼす者』の尖兵の目が、ゆっくりと開かれる。


 黒い巨人の赤い目。


 黒い雌型の金色の瞳。



 ─────



「ちっ、少し分が悪いか……」


 白銀の長剣、ハバキリを構えたレオンが舌打ちを打つ。そして──


「近接を主軸に二手に分かれる。あの黒い巨躯の相手はキリア、お前に任せる。フォリーは以前、奴と接触がある様なので、彼女の援護を頼む」


「承知致しました。レオンハルト様!」


「分かった。任せてくれ!」


 キリアとフォリーがそれに応じる。


「俺はあの女の怪異と対峙する。すまんが、クリス。援護を頼む」


「うん、レオ兄ぃ。分かったで!」


 クリスの返事を最後に、レオンは後ろから俺に声を掛けてきた。


「デュオ、聞いての通りだ。我らの力が奴らにとって如何程となるか、やってみねば分からぬが、最早言ってもいられん。お前はあの黒い親玉を頼む。期待している」


 俺は後ろを振り返らずに、魔剣を構えたままレオンに声を上げた。


「了解! 全力でぶっ飛ばす!!」


『よし! 行っくよっ!!』



 ─────



 ──ミシッミシッ


 左右にイニティウムと、セクンドゥスを従えたルティウムが、黄色く光るふたつの目となる輝きを強める。


『フフッ、異端の力を持つ者、デュオ・エタニティよ、元来己が存在は我ら、否。この世界に於ても脅威的ではあるが、そもそもそれに於ては、我が黒の御君の成さる事に、直接的障害には至らんのだ。如何な強大な存在とて、余り自惚れるではない! 貴様の存在など、黒の御君にとって些細な事でしかないのだ』


「だから、それがどうしたってんだ!? そんなの俺にはどうだっていい。魔剣()が俺である為に、今はお前逹『滅ぼす者』をこの力を以て、全力でぶっ潰すだけだ!!」


 俺が上げる宣言となる言葉に、黒い騎士ルティウムが、武器となる両腕を斜め十字に交えて応じる。


 ──ミシッミシッ


 ───


「フフッ、ハハハハハハハッ!──ならば、我も全ての力を以てそれに応じよう! 貴様如き、黒の御君の御手を煩わされる必要も在らず! 我こそは『滅ぼす者』三番手の尖兵にて、同時に黒の御君の剣となり、盾となる騎士(エクエス)、ルティウム!──いざ推して参る!!』



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