表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一心同体の魔人 ─魔剣と少女、Duoが奏でる冒険譚─  作者: Ayuwan
2章 蜥蜴の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)
14/216

12話 ドラゴンスレイヤー

よろしくお願い致します。


 ───


 咆哮を上げた(ドラゴン)は、俺の方へ一度視線を送ると、そのまま振り向き、大きな身体を振り返らせながら歩き出そうとした。


 鬱陶うっとうしく付きまとう俺の事など無視し、これからこの島自体を破壊しようと考えているのだろう。


 ───


「そうはさせるかよっ!」


 魔剣を振り上げ、奴に向かう。


『下がれっ! 虫けらが!』



 ──グルゥオオオオオオウッ!



 再度、奴の口から放たれる竜の咆哮(バインドボイス)


 だが、俺の動きは止まらず、そのまま奴の身体に魔剣を突き立てた!


 ───


『な、何故だ! 何故、動ける!?』


 竜が驚愕の声を上げる。


「悪いな、『竜の咆哮(バインドボイス)』の耐性は、もう吸収済みなんだ」


 剣を引き抜きながら、再び竜の身体を駆け上がり、今度は奴の頭の眉間に魔剣を突き立てようと試みる。


 が、途中で奴と目が合った。そして竜は顎を開き、口内を覗かせる。


 その奥には赤い炎が揺らめいていた。


 ───


「げっ! ヤバい!!」


 竜が顎を開き、吐き出す物。それは──『竜の吐息(ドラゴンブレス)』!


 その灼熱の炎は、鉄をも溶かす高温とも言われている。


 ───


 辺りに広がる爆音と炎の渦──そして煙の発生により、ほとんどの視界は失われる。


 やがてその視界が戻る頃、竜の視覚に俺の姿は映ってはいなかった。


『がははははっ! 虫けらめが、燃え尽きおったか!』



 ─────



「──それが残念。そうはなってないんだな、これが」


『何だと! 虫けらめ、何処だ、何処にいる!?』


 間一髪、俺はその時。奴の顎の裏側に魔剣の触手を突き立て、移動する事によりその難を逃れていた。


 触手に宙ぶらりんとなっていた俺は、それを引き寄せ、そのまま一気に奴の顎の裏側へと魔剣を突き刺した。


 魔剣が放つ鈍い紅い光が、一瞬強くなる。


 さて──


「これで、『竜の吐息(ドラゴンブレス)』の方も頂き─っと!」


 ───


『ぐう、ぐぅおおおおっ!……お、おのれ!!』


 奴は右足の爪で、俺を叩き落とそうとする。


 それを上に跳んでかわした。


「じゃあ、今度は、あんたから散々吸収しまくったこの力、全力で!」


 俺はまず、左手に持つハルバードを放り投げた。


 次に空中で魔剣を両手で大きく振りかぶり、真下にある奴の右足目掛けて放つ、渾身の魔剣の一撃。


 それを受けた奴の右足が両断され、血飛沫ちしぶきを上げながら吹き飛んだ。


『──ぐっ、ぐぅがあああああああぁぁーーっ!!』


 奴が苦痛に吠える。


「それから、これは前のお返しだ!」


 俺は口元に手を当て、それを前へと突き出した。


 『──竜の吐息(ドラゴンブレス)!』


 俺の頭であるワニの口先が開き、灼熱の炎が吹き出される。


 そしてそれは、竜の身体を焼き焦がしていく。


『──があああああああぁぁーーっ!! ぐうっ、ぐぐっ……き、貴様は、貴様は一体、何者だ! この儂が、竜たるこの儂が、これ程までに!』


 竜は怒りに燃える金色の目で、俺の事を睨む。


『これ程の力、何処で得た? 一体、何処で!!』


 俺は竜の前に立ち、奴に向かい、魔剣を振りかざしながら言う。


「戦いが始まる前までは圧倒的に俺の力の方が劣ってた。でも、相手が悪かったな。俺とこの漆黒の魔剣は、戦う相手が強力であればあるほど強くなるんだ。あんたがここで敗れて死ぬ事になるのは、あんた自身が強過ぎたから。ただ、それだけ──」


『ぐぅ、ぐぬぬぬっ……』


「さあ、もう苦しそうだし、もうどどめを。せめて、あまり痛みを感じないように……」


 そう言い終えると、俺は目を閉じて、もう一度、深く息を吸う。


 そして目を見開くと同時に、竜に向かって勢いよく走り出した。


 竜の繰り出してくる最後の抵抗をかわしながら、その身体を一気に駆け上がる。


 そのまま竜の頭の上に乗り、真上へと跳んだ。


 次に全体重を乗せ、その首に自身最大となる力で、魔剣を振り下ろす!


 ───


 俺が地面に着地したと同時に、ドオオォーン! という音と共に、切断された竜の首が地面に転げ落ちた──




                   ◇◇◇




 竜と呼称される存在が、他者との戦いに於いて、敗れる事はまず、ほとんどと言っていい程ない。


 それが生物の頂点に立つ存在たる由縁だ。その存在たる竜が、たったひとつの個体。しかも自らよりもずっと劣る劣等種に、その首を切断されての敗北など。


『……そんな事……あり得る筈が……あり得る……筈がない……の……だ……』


 与えらた自我を持つその竜は、最後にそんな事を思い浮かべながら事切れた──




                   ◇◇◇




 ふと俺の足下に途中で手放したハルバードが落ちているのに気付く。


 そういえばこれは元々、俺の身体であるこのリザードマンが最初から手にしていた物だ。


 俺はそれを拾い上げる。そして転がっている竜の首のそばに、戦闘でボロボロになったそのハルバードを突き立てた。


 自分がリザードマンとして戦った勝利の証として──


 ───


「この勝負、トカゲの勝ちだ!!」


 ───


「うわああああぁぁ~ん、勇者様あああぁぁ~っ!」


 見るとロッティがもの凄い勢いで飛びながら突っ込ん来る。そしてビターンッと音を立てて、俺の鼻に抱き付いてきた。


 あ、やっぱソコなんだ。


 思わず、心の中で苦笑いを浮かべる。


「良かった。ぐすん、本当に無事で……」


「言っただろ? 俺に任せろって」


「うんっ! 本当にありがとう!」


 ロッティは泣きじゃくりながら微笑む。その笑顔に今までの戦いの疲れが癒される。


 ───


「そうだ、ロッティ。じゃあさ、早速、俺にご褒美をくれよ」


「あ、そうだったね。じゃあ、まずはひざまずいて~~」


 俺は片膝を着き、胸に腕を当てながら、空中にフワフワと浮いているロッティに対し、うやうやしく頭を下げた。


「え~っと、それじゃあ……汝、勇敢なるリザードマンの勇者よ。そなたの活躍により、()の邪悪な竜は討ち滅ぼされた。その功績を称え、そなたに竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の称号を授ける」


「はっ、恐悦至極! 慎んでお受け致します。“緑の姫様”──」


 ………。


「……ぷっ、くくっ、あははははっ!」


「くすっ、あはははっ!」


 そして可笑しくなってお互いに笑い合う。そんな時、不意に透き通るような声が、心の中に響いてきた。



 ─────



『ロッティ、ご苦労様でした。そして勇者様、この島の者を救って頂き、誠にありがとうこざいました。心よりお礼の言葉を申し上げます──ロッティ。その御方を、私の所までお連れして』


「はい。(しゅ)様」


 そしてその声は聞こえなくなる。


 事態があまり把握できず、少し呆然としている俺に、ロッティは手を差し伸べてきた。


「行きましょう。勇者様」


「何処に行くんだ?」


「私を生み出した主様、そしてこの孤島の代表者でもある御方の所へ──」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ