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一心同体の魔人 ─魔剣と少女、Duoが奏でる冒険譚─  作者: Ayuwan
2章 蜥蜴の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)
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11話 開始 トカゲの竜退治

よろしくお願い致します。


 ───


 無数の木々が生い茂る樹海の中。俺は音を立てないように、一歩、また一歩と、息を殺しながら、(ドラゴン)へと近付いて行く。


 ───


 しかし、改めて見ると本当にデカいな、こいつ──


 竜は同じ姿勢のまま眠っている。起きてくるような気配は今のところはなさそうだ。


 竜一体で島の全てが破壊されるだなんて、何て大袈裟なって思ってはいたけど……。


「……こいつは、相当ヤバいな……」


 さて、どうしたもんかな?

 

 卑怯だけど、眠ってる間にこの魔剣で頭に一撃。


 相手は下位種といえど、あの竜だ。まあ、要は倒せばいいんだし。


 そう思案しながらも、徐々に竜との距離は着実に縮まって行く。


 ───


 後、一歩踏み込めば、こちらの攻撃範囲に入る──その時。


 突然、何かに反応したかのように地鳴りを起こしながら、竜の巨大な身体がゆっくりと動き出した。


「ちっ、やっぱり、そんなに上手い具合にはいかないか──」


 ゴゴゴゴゴゴッと、地面が叫び声を上げる。


 そして竜は起き上がり、首を持ち上げ、目を見開いた。


 金色に鈍く輝く、不気味な瞳。


 ───


『──誰だ! わし領域(テリトリー)に踏み込み、眠りを妨げるのは!』


「えっ?」


 言葉を発した! なんで? 厳竜(ストーンドラゴン)は自我を持たないって、そう言ってたんじゃ……。


 そして竜が俺の存在に気付き、目の前にいる俺と竜との目が合う。


『貴様か? 虫けら如きが、何をしにここにやって来た! まさか、この儂を倒そうなどと、たわけた事をほざくんじゃなかろうな!』


 竜が威嚇する視線で、俺の事を睨み付ける。


「いや、そのつもりだけど。あんたを倒しに─っていうか、“殺しに”やって来た」


 すると竜はキョトンといったように、頭の動きを一瞬止めた。そしてわざと愉快そうに笑い声を上げる。


『がはははははははっ! 貴様のような虫けらが、全ての生物の頂きに在る、竜であるこの儂を殺すだと! 不愉快にも程がある! この痴れ者めが!!』


 不意に叩き付けてきた、前足による尖った爪の一撃!


 それを紙一重で後方に跳んでかわす──空振りに終わったその攻撃で、激しい衝撃音と共に地面が大きくえぐれた。


 げげっ、すっごい威力!!


 ──だけど、当たらなければ問題なしっと。


 竜が右爪、左爪と次々に前足による攻撃を交互に繰り出してきた。


 俺はそれを左右に跳んでかわす。


『ぐぬっ、この虫けらめが! ちょこまかと、身の程をわきまえろ!!』


 ───


 ──グルゥオオオオォゥ!


 竜が耳を裂くような雄叫びを上げた。


 その声を耳にした瞬間、俺の心の中にある感情が流れ込んでくる。


 それは恐怖という感情──


 それにより、俺の心は恐怖によって染め上げられ、身体がすくみ、動かせる事ができなくなった。


 ───


 ぐぐっ!……何だこれは! 竜の咆哮(バインドボイス)ってやつ?……く、くそっ、身体が動かせないっ!!


 それでも心の中で必死にそれに足掻き、なんとか自制心を取り戻した。


 だが、まだ身体はいう事を聞かず、俺の意思で動かす事ができない。


 もしかすればこのリザードマンの身体自身が、本能的に恐怖を感じ続けているのかも知れない。


 ──ちくしょう! このままじゃ……。


 ───


 そして感じられる身体に叩き付けられるような、強烈な衝撃。 


 それに耐えきれず、真横に吹っ飛ばされ、巨木の壁に打ち付けられる。


「──が、がはっ!」


 喉の奥から、鮮血が溢れ出す。


 ぐっ、ぐぐう……い、今のは……き、効いた……。


 どうやら尻尾による薙ぎ払いの攻撃を食らったようだ。


 身体に駆け巡るような、激痛がほとばしってくる。


「くそっ、動けてさえいれば、あんなのかわせていたのに……そ、それにしても──い、痛ってええええぇぇ!」


 あまりの痛みに軽く目眩めまいがする。


 だが、致命傷を受けた訳ではない。この身体はかなり丈夫に作られているようだ。さすがは選ばれたリザードマン。


 それに──


 ……!?


 何だか、さっきまで感じていた激痛が、かなり弱まったように感じられる──まるで急速に治癒されているかのように。


 ふと気になり、右手にある魔剣に目をやった。


 ───


 いつも通り、紅い光を鈍く発生させているそれと交じり、何となく耳に届く、静かなキィィーンという低音。


 ───


 そんな、まさかな。さすがに俺の考え過ぎだろ……でもこれなら、もう充分にいける!


『がははははははっ! 絶望しながら死んでゆけ!』


 今度は再び、爪による攻撃。


 それを跳んでかわしながら距離を取る。そして一度、少し深めの深呼吸。


 ……すううぅぅーーーっ、はああぁぁーーーっ


 さて、ここからが仕切り直し。


 ───


「うん、あんたは間違いなく強いよ。でも、こっちも負ける訳にはいかないんだ。頼まれたから──あんたを“殺して”くれって──」


『ぐぬぬぬっ、なめるなっ! この虫けら風情が!』


 へへん、やつは怒り狂ってるようだな。よし、いい流れだ。今度はこっちの番、まずは──


 俺は竜に向かって走り出した。


 怒りながら繰り出してくる、でたらめな攻撃を全てかわし、竜の身体をその腕から駆け登る。


 そしてその首に向かって、左手に持つハルバードを力いっぱい振り下ろした。


 ガァイイィィーン! と金属音が打ち響く。


「あいだだだだだだっ!」


 跳ね返される刃先と共に、手に痺れるような痛覚が走る。


 予想通り、普通の武器では竜鱗には全く歯が立たない。傷すら付いていないようだ。


「なら、こっちの方はどうだ!」


 かさず体勢を立て直し、今度は右手の、例の魔剣の方で切り付けた。


 切り裂く音と同時に、俺の右手に感じる竜の血肉の感触。


 竜鱗など物ともしない。さすがは安定の我が魔剣。


 そして『吸収』──


 ───


「!?──おおっ、何だ! す、凄い! これが(ドラゴン)の持つ力……」


 今までに感じた事のない強力な力が、俺の、リザードマンの身体に注ぎ込まれる。


 奴を見てみると、どうやらその様子に驚愕しているようだった。


 ──自らの首を切り裂かれ、血を流している事に──


 ただ、身体が巨大過ぎる為、その傷口はそんなに深くはない。


 ───


『──ぐうおおおおおおおっ! 儂の身体に傷を付けるだと! その剣は一体……その剣は一体……何なんだああああああぁぁっ!!』


 竜は叫び声を上げて、再びその爪を振り下ろしてくる。


 俺はそれをかわしながら奴の身体を切り裂く──連続で繰り出される竜の狂ったような様々な攻撃に対し、反撃を繰り返す。


 何度も何度も──


 それを受け、確実に浅いながらも竜は身体に無数の傷を増やしていく。


 その度に魔剣を通して竜の強力な力が、俺の身体に注ぎ込まていくのを感じ取れる。だが、どの傷も致命傷までには至らない。


 このまま続けていても、奴の倒れる気配は全く感じ取れなかった。


 しかし──


 俺が狙っているのはそれじゃない──俺自身の身体の強化だ!


 魔剣を構え、次の攻撃に備える。


 だが、奴は突然。その動きを止めた。


 ───


『──もうめだ……馬鹿馬鹿しくなってきた……待てと言われて滅びの時を眠りながら待った……その代償として自我を得たが、もう我慢ならん! 滅びの時など儂の知った事か! 今直ぐに全てを焼き尽くし、討ち滅ぼしてくれる!!』


 ───


 竜の怒りの咆哮が辺りにとどろいた。



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