第1話 prologue ~プロローグ~ [西暦2018年冬]
今、洞窟を全速力で走っている最中だ。
何故こんなことになっているのかは、雪弥自身でも分からない。しかも裸足で走っているから、小石を踏んだりして血が出ている。
「クッソ。なんだよこんな状況。訳わかんねぇよ。」
そう言いながらも走り続けなければいけない。
後ろから、目が金色に輝いていて、いかにも獰猛そうな肉食獣らしき獣が追って来ている。
爬虫類のような皮膚を持ち、尻尾まで全身黒色で、皮膚がテカっている。2トントラック並みの大きさである獣が後ろから全速力で迫ってきているのだ。
ただ、不幸中の幸いなことに、その獣はあまり足が速くない。
しばらく走っていても自分の体も疲れる気配が全くない。
が、そんなことにすら気づかないほど雪弥は焦っていた。
そんな時、前に明かりが見える。
「おぉ、もうすぐここを抜けられる! いや、抜けたとしても、あんなヤベェもんどうすんだよ。」
焦っていて後ろを振り返っていないから、もう猛獣を振り切っていることにすら気づかない。
側からみれば奇声をあげて走っている変態の絵にしか見えない。
だが、一瞬の出来事であった。脳が理解する前に、いや、たとえ理解したとしていてもどうすることもできなかった。
後ろからしか脅威は迫っていないものだと勝手に認識していたので、他の方向からの脅威に鈍感になっていたのだ。
「あっ…」
雪弥は、古典的な罠の一種である、落とし穴に見事に引っかかったのだ。
そりゃあ、もう、綺麗なホールインワンであった。
「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぞっっ!!!」
変な鳴き声をを発しながら綺麗に下に自由落下していった。
「パァッぁーイヤァァァァァァァ。」
まだ落ちて行く。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドッゴォォォン!!!!!
人間が地面に衝突しても出ないような音が聞こえる。
だがそこには地面に突き刺さった雪弥が痛がっていた。
「クッソぉぉぉ。いてーよ。なんだよこれ。絶対ありえねーよ。まず21世紀に猛獣に追いかけられて落とし穴落ちるってありえねーだろ。」
まず、32秒間も自由落下していて、さらに無事でいて、愚痴をこぼす自分の身体能力にツッコむべきであろう。
スカイツリーから飛び降りても11.5秒ほどしかかからないから、いかに高いところから落下してきたのかが分かるだろう。
「しっかし、なんだこの洞窟的な、いや洞窟かここ。こんなもん、現代の東京の存在してたかね。こんなの、田舎の西東京にすらねーぞ。」
ゴミみたいな不適切な発言をしながらもまだ地面に突き刺さっている。
やっと地面から抜け、安全を確認しつつ座り込む。
そこで自身に起こったことを振り返った。
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毎朝、家を遅刻ギリギリに出る雪弥は、電車に乗って37分、そこから自転車で18分かかる坂道の上に建てられた高校に通っていた。
友達は少なくもなく、多くもない。普通の高校生と呼べるつまらない人間であった。
6限目の最後の授業が終わり、いつも通り、交通量の少ない坂道を自転車で下りながら駅に向かい帰宅しようとしていた。
「ほぉー。終わったー。家帰ってm○nster飲みながらモン○ンやるかー。p○4版今日発売したし家に届いてるだろ。」
そう言いながら、自転車にまたがり、ペダルを漕ぐ。
いつものように下り坂に身を任せて重力のみで駅まで行こうとしていた。
だが、一瞬空が真っ白になったかと思った直後、すぐに真っ暗になる。
人間、予想外のことが突然起きると思考が停止するのだ。
雪弥はまず、30秒ほど固まって、ようやく大きく息を吸い込み、
「意味ワカンねぇーーーーーーー!!。」
オペラ歌手も金タマがヒュンとなるような絶叫を響かせる。
そうしてこの暗い空間が、洞窟であることを雪弥が認識するまで時間はかからなかった。
その絶叫に引き寄せられたのか、獣が後ろから迫ってくる。それで冒頭の部分に戻るわけだ。
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『とりあえず、ここにずっといても何も進まない。とりあえず移動してみよう。』
そう思い、先ほど出口があったので、洞窟らしきとこらから出るべく、とりあえず出口を探して外に出ようとする。
洞窟の中なのに妙に明るい。半径5メートルくらいは見渡せるだろう明るさだ。
上から落ちてきたので、出口はまだまだ先であろう。
「しっかし、広いなぁ。もう30分程歩いてるけど、壁すら見当たらねーぞ。どんだけ広いんだここは。」
同じ状況が続いてくるので、人間という生き物はその状況に適応してしまい、慣れてしまうのだ。
だが、雪弥は学んでいる。落とし穴がまたあるのではないかと。
雪弥はバカではないのだ。一応…
だが、そんな警戒をあざ笑うかのように、雪弥が足を踏み入れた途端、急に光り出した。
「うぉッッッ!!!」
思わず下品な声を発してしまう。
雪弥は床を見た。
そこには、不思議な紋様が地面に描かれていた。
「もう、なんだよ。驚かねーよ。」
驚いていたことも忘れて、雪弥は呆れてしまう。何度も理解不能なことが続くと慣れてしまうのだ。
そこで、この洞窟に来た時と同じような、なんとも形容し難い、不思議な感覚が、また起こった。
それは、先程洞窟へと転移させられた時と同じ感覚であった。
「嘘だろ!? まだ何も理解してないし、何がなんだかわかんないんだけど。」
また視界が真っ白になったのだ。だが次は暗転するのではなく、今度は青と緑であった。
気づけば、雪弥は崖の上らしき所に立っていた。
そこは見渡す限り青い空が続き、緑の森が広がっていた。
入道雲が雄大に青空に広がり、崖の下を見下ろすと、緑のグラデーションが美しく、絨毯のような木々が永遠と水平線まで広がっている。
空気は澄んでいて、都会に住んでいた雪弥には新鮮で、胸が洗われるような心地がした。
そこまでは、アマゾンなどに行けば地球でも見られるであろう。
だが、地球には存在しないようなものが雪弥の目に飛び込んで来た。
それは、ゲーム好きの雪弥には一目でわかった。
「あんなでっけぇ木、地球じゃ見られないよなぁ。それに、さっきの黒い化け物も地球には存在しないし。」
そこには、雄大に緑の葉をつけた、世界樹という名前が最も似合うような木が鎮座していた。
雪弥は、暫くその木に圧倒されて言葉が出てこなかった。
「あんなの見せられたら、地球じゃない別の惑星に来たとしか言いようがないな。」
持ち物を確認して、案の定、財布とスマホしか持っていないことを確認する。このまま過ごしても、栄養失調で死ぬだけだ。
「このままじゃヤベーな。とりあえず、食料確保しよう。意思疎通ができる生物を探す前に、死なないようにしなきゃな。」
雪弥は、世界樹を目印にしながら方角を決定し進み始める。
およそ1時間半ほど進み、そろそろ休憩するか、と思った矢先、またしても不幸な出来事が起こった。
先ほど追っかけられた獣よりは少しマシだが、明らかに強そうな獣が眼の前にいるのだ。
そして、こちらを見ているのだ。
「うわぁ。またヤベー奴かよ。運がないのか、それとも、あのレベルが普通なのか…。どちらにしろ、まだ死にたくない!。」
そう思うが、今回の獣は動きが素早く、雪弥にスピードでは振り切れない。
背中を見せながら全速力で逃げているが、雪弥と獣の差は縮まる一方だ。
もう追いつかれると思った直後、光が見えた。
獣が爆発したのだ。
「うわっ!! 」
雪弥は、爆風に巻き込まれて、ショックで意識を失ってしまった。
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意識が朦朧としている雪弥は、自分の体が揺れているのを感じていた。
「うっ!! どこだここは!」
「まだ起きてはなりません。」
そう声が聞こえた。この世界に来て、初めて他人の声が聞こえた。
「誰だ!」
雪弥は、いきなり話かけられて困惑し、大声をあげてしまう。
だが、だんだんと状況がつかめて来て、目の前の人物の顔を認識できるまで落ち着きを取り戻した。
何かに乗って移動しているのだろうか。雪弥は疑問に思ったが、それよりも気になることを質問した。
「アンタはあの獣に襲われなかったのか?それともアンタが爆発させたのか?」
「貴方に意識を奪われていたみたいで、襲われはしませんでした。そのおかげで、撃退することができました。それよりも、ここは、魔獣の数が特段に多い地域です。なぜ、貴方はここにいらっしゃったのですか?」
そう質問してきたのは、容姿端麗でおっとり系の美人。10人いれば100人振り向くほどの人物だった。
エルフと言われれば信じてしまうような儚さと透明性を兼ね備えていて、肌が透き通るほど白く、黄金色に輝く髪の、見るのももったいないほどの美人であった。
身長はおそらく160cmくらいであろうか。
「知らん。白くなったら、暗くなって、黒いのに追っかけられ、落っこちて、白くなって暗くなって、追っかけられて、気づいたらここにいた。」
「……もうちょっと、具体的に説明して欲しいのですが……。」
そう金髪美人が呆れているのは、朴念仁の雪弥にすらわかった。
「あぁ …すまない。だが、自分にもよくわからないんだ。」
雪弥は困ったように言った。
「いや、気にしなくても大丈夫です。見たところ貴方は、訳ありのようですから。それよりも気になるのは、白くなって暗くなるということです。その時に浮遊感みたいな感覚が伴いましたか?」
そう質問され当時のことをよく思い出す。
「あぁ 。たしかに2回とも飛んでる感じがしたな。なんか訳の分からん文字が光ったと思ったら、視界が白く染まったんだよ。」
すると、その金髪美人は驚いたようにしている。
「まさか転移魔法でここまで飛ばされたのですか?」
「ちょっと待て!魔法?魔法といったか?質問に質問で返して悪いが、魔法が存在するのか?」
雪弥は、目を見開いて金髪美人の肩を揺さぶる。おっぱいがめっちゃ揺れている。
「キャッ。ちょっと離してください。ビックリしますよ。」
金髪美人は顔を赤らめて、驚く。
「すまん。だが、気になってしまったんだ。」
雪弥は、魔法という言葉でここは地球ではないことを確信する。
「はい。こちらもビックリしてしまい申し訳ありません。ですが、魔法を知らないのですか?言葉は悪いですけれど、田舎の子供ですら魔法をしらないことはないですよ。一体どんなところで生活していたんですか?」
「うーん。魔法がないところかな。」
「そんなところは存在しません。この世界には、空気中にすら魔素が存在しているではないですか。あのサクリアーブルの葉をみてください。緑色に少し光っているでしょう。」
ここで雪弥には知らない単語が聞こえる。
「すまないが、サクリアーブルとはなんだ?お菓子みたいな名前だな。」
すると金髪美人は目をまん丸く見開いて、
「貴方、サクリアーブルすら知らないのですか?馬車の窓から大きな木が見えるでしょう。まさか、一回も見たことがないのでしょうか?」
「あぁ 初めて見た。まず俺が住んでいたところにはこんなでっかい木なんて一度も見たことがないからな。」
「貴方は一体どれほど遠くからいらっしゃったのですか?」
「すまない、分からないんだ。」
雪弥は、異世界転移したことは気づいていたのだが、面倒ごとは嫌いなので、黙ったままでいた。
金髪美人は困ったような顔をしていた。が、めちゃくちゃ可愛かった。
「おそらく、記憶がなくなっているのでしょう。なくなった経緯はわかりませんけれど、予測としては、魔法で消されたのか、脳へのダメージで偶然消えたのか、この二つしか考えられませんね。」
「魔法で記憶消去ができるのか…。」
「はい。できます。できると言っても、その魔法を使える人は限られています。なので、もし、魔法で記憶を消されている場合は、魔法を起動して貴方にかけた人は絞られてくるのですが…。」
「おそらく、魔法ではないだろうな。」
雪弥はすっとぼけて返答する。転生者の処遇が不明だからだ。
「はい。記憶改竄の魔法を使用できる人は世界に7人と言われていて、その使い手が人格者であることが世に知られています。貴方が犯罪者か危険思想の持ち主であった場合、記憶改竄をする場合がありますけれど、記録に残りますしね。」
「記録に残る?どういうことだ?」
「記憶改竄の魔法は殆どが犯罪者にかけられることが多いのです。滅多なことでは、魔法をかけられませんが、中にはあまりに悪質な犯罪を犯した犯罪者は記憶改竄の魔法をかけられるのです。そうして、記憶をなくした後、刑務所にて一生を過ごさなくてはなりません。その時に、記憶改竄魔法を使用したと公的な文書に残るのです。」
「刑務所みたいなものもあるのか。しっかりしているんだな。」
「はい。サクリアーブルの麓には大国が存在しています。ル・ボアという大国なのですがご存知ないですか?」
「知らんな。申し訳ない。」
「いえいえ、大丈夫です。それよりも、魔法の知識すらないとは、どんな記憶の消され方したんでしょうか。魔力は貴方の体にも流れているので、魔法が使えないということはなさそうですが。」
「魔力って見えるのか?」
「見えませんよ。そのような知識は後で屋敷についてから詳しく話してあげます。聞いたら思い出すかもしれませんし。あと、もし貴方が犯罪者である場合、入国するときに審査があり、そこで引っかかります。そうするとすぐに処刑されてしまいます。それだけは大丈夫ですよね。」
「あぁ 、大丈夫だ。生まれてから人を殺したり物を盗んだりしたことはない。」
「それなら大丈夫ですよ。審査はすぐに終わりますから。もう少しでル ボア皇国の入国審査場に到着します。」
しばらく、金髪美人は一人で何やら考えていた。その姿は、とても様になり、女性でも惚れてしまうほどである。
馬車は、雪弥のケツに毎秒ごとにダメージを与えているが、雪弥は金髪美人を見ることによって回復している。
「考え事をしてる途中でぶった切って申し訳ないけど、名前はなんていうんだ?名前がわからないと呼ぶときに呼べないだろう。」
雪弥がナンパまがいのことを平然と言ってのける。
「すみません。名前も名乗らずに。私は、リーシェ・トゥールーズと申します。貴方のお名前もお聞きしてよろしいでしょうか?」
「あぁ 、俺はユキヤ センドウという。リーシェか。よろしくな。」
「よろしくお願いします。ユキヤ様?でよろしいでしょうか。変わったお名前ですね。もしかして、ル・ボア皇国の出身ではないのかもしれませんね。名前を覚えていらっしゃるということは、おそらくなにかのショックで記憶がなくなったのでしょうか?」
「そうだな。自分の名前がスラスラ出てくるとは思わなかったよ。」
雪弥は焦りながら、その焦りを隠して返答する。
「あ、ユキヤ様。もうすぐ、入国審査局に着きます。貴族用の入り口を使いますので、早く通ることができますよ。とりあえず審査をして、入国申請を行い、もし、国籍がなかった場合、取得をしなければなりませんが、身元は私が引き受けますので心配しないでください。すぐ終わると思います。」
ここで雪弥は疑問に思う。
「なんで、俺が悪人じゃないと分かるんだ。普通はこんな風に便宜を見ず知らずの人に便宜を図らないぞ。世間知らずなのか?」
「失礼ですね!違いますよ…。私には少し特殊な力がありますからわかるのです。それに、貴方といるのも悪い気がしませんし。」
雪弥は魔法の力って万能だなぁと心の中で思う。
「そうか。でも、助けすぎだぞ。たしかに獣から庇ってくれたのはありがたいが、流石にお世話になりすぎている。」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください。」
「いや、気になる。」
雪弥は借りはなるべく作らず、作ったらとことん返す主義なのだ。
「いや、気になさらなくても結構です。」
「いや、無理だ。だが、このままでは、決着が着かん。借りたのは返す主義なんでな。」
「はぁ 。わかりました。ですが、あまりお気になさらず。あと、獣ではなくて貴方を襲っていたのは魔獣ですね。」
「獣と魔獣はどう違うんだ?」
「獣は魔法が使えませんが身体能力が極めて高いですね。ただ魔獣は、身体能力が低いことを魔法で補っているというのが大雑把な違いですね。身体能力も魔法力も両方秀ている魔獣もいますけど。」
「そうなのか。」
「はい。ユキヤ様。詳しい話はまた後でにしましょう。入国審査局に着きました。これから役人様からの審査があると思いますけれど、正直に答えてくださって結構です。私は手続きを済ませたら、この先にある門の入り口でお待ちしております。」
「あぁ 、りょーかい。行ってくるよ、リーシェ。」
『まだ知らない知識が多すぎる。後でリーシェに聞いておこう。』
そう思いながら審査を受けに行った。
こうして千堂雪弥の異世界での人生が始まった。
ということで、なろうには初投稿となります。ここまで読んでくださってありがとう。感謝です。
以下プロットからの抜粋
《主人公》
・千堂雪弥(17)
坂道の上に建てられた高校に通う高校生。
貸し借りは基本的に嫌いで、あまり人と関わりたくない性格。だが、意外と友達は多い。帰宅途中、転移させられる。チート野郎。(予定)
《ヒロイン枠》
・リーシェ(16) [家名: トゥールーズ 種族:人間?]
王侯貴族の娘。家の相続権は自分から放棄しようとしているが、認められていない。
主人公を初対面で助けている。
《この世界の世界観》
魔法があり大気中に魔素が漂っている世界。惑星であり、地球と半径や気候などはほぼ同じであるが、生態系などは異なっている。
知能を持つ生物は、人間、エルフ、ドワーフ、魔族、に大別され、さらに肌の色や姿によって分けられる。
《人間》
肌の色で分類される。黒色、白色、黄色、褐色、に分類され肌の色だけが違い、魔力量や体力などには差がない。
魔法があるせいか差別などはなく、人間は基本的に肌の色では争わない。
が、大陸や国家が元での差別は存在する。国家間、宗教上の戦争は多発している。
《エルフ族》
数百年前まで、他の種族とはあまり関わりがなかったが、現在主人公が飛ばされた時には、他の種族との外交をしている。肌の色は白色がほとんどを占めているが、遺伝子疾患などを含めるとその限りではない。
基本的に、争いを好まないが、自分の種族に誇りを持っているため、エルフ族が虐げられると、その重い腰を上げ、戦火に身を投じることもある。
なお、先祖返りと呼ばれる、魔力量が特に多いエルフはハイエルフと呼ばれる。
エルフが外交断絶状態であった時は他の種族からの差別が多かったが、現在は特にない。
現在、存在するほとんどのエルフが人間の国に所属している。なので、人間との関係は特に良好。
なお、寿命は男性女性ともに800歳程度。
《ドワーフ族》
エルフと同程度の寿命を持ち、基本的にドワーフ族で固まって生活している。このような、鎖国主義な性格だが、他種族を見下すというよりは、興味がないと言ったようなものである。
ほぼ物作りで一生を使い、ドワーフ族の中で社会的な地位を上げるには、いいものを作ったり、開発する必要性がある。
職人気質のドワーフももちろんいるが、ほとんどは温厚なドワーフが多い。
ドワーフは身長で判別できる。ほとんど150cmを境としてGドワーフとFドワーフに分類されるが、生物学的な分類のため、一般市民にはあまり浸透していない。
Gドワーフは先祖が洞窟に住んでいたため、洞窟で暮らせるように体型が小さくなるように遺伝子的な変化があったと思われている。
Fドワーフは先祖が森に住んでいたため、基本的に人間やエルフと見た目はほぼ変わらない。
他人にあまり興味がないせいか、差別は存在しない。
《魔族》
4つの種族の中で最も分類が多く複雑すぎて、まとめて魔族と言われている。基本的に人型をしているが、ごく少数の種族だけ人型でないものもいる。
寿命は種族によって様々であるが、平均すると3000歳ほど生きると言われていて、中には寿命が来たら、仮眠に入り、身体の細胞を再生して若返る種族もいる。
人間やドワーフ、エルフなどと肌の色や姿が違うためすぐに判別できる。
魔族は、種族ではなくその長い寿命のせいか、所属する派閥によって分類されることが多い。
派閥が3つ存在する。ほとんどの魔族が派閥に所属している。
今の真魔王の治世が6000年ほど続いている。
先代と現在の真魔王の治世の境目が魔族の歴史の大きな分岐点となっている。
【真魔王派閥】
君主を真魔王とする、派閥。真魔王を敬意の対象として崇め、唯一神としている。そのため人間やエルフの宗教とよく対立していて、度々戦争になることがある。
穏健派と過激派がいるがほとんどが過激派。これは現真魔王が過激思想の持ち主であることに由来する。
【先代真魔王派閥】
現真魔王派閥の過激さに、反発して独立した団体。先代の真魔王を神として崇めていて、唯一神として祀っている。先代の真魔王は既に死去しているため、偶像を作り、それを神として崇めている。基本的に高齢の魔族が多いため、穏健だが、経験は積んでいるため一人一人の戦力がかなり高い。
【魔神崇拝派】
古にいたとされる魔神を敬意に対象としている派閥。基本的に穏健である。ただ、敬う対象が異なるため、真魔王派閥、先代魔王派閥と争いになることがある。
魔法オタクが多く、世界中の魔法書を全て所有していると言われている。
《魔法の種類》
・転移魔法
主人公がかけられたと思われる魔法。まだ詳しいことは解明されていない。
・爆裂魔法
リーシェが最初雪弥と会った時に使った魔法。魔法が使われ始めた最初の頃は、他の魔法の失敗した時に発動する魔法だと思われていたが、エネルギーを圧縮することによって意図的に引き起こせることが分かってからは、新しい魔法として一般に受け入れられていった魔法。
ただ魔素を圧縮すればいいだけなのだが、圧縮する魔素の量をコントロールすることが難しい。なので一撃必殺として沢山の魔素を圧縮して使う人が大多数だが、チームプレーには向いておらず、使い所がない。
魔素の量を調節できるようになると、化ける魔法。
・記憶改竄魔法
脳に作用し、記憶の改竄や消去などを行える魔法。多くの魔素量を要するため、使える人が限られる。
処刑にも使える。犯罪者の犯した罪の記憶を消去し、自分がなぜ刑を執行されているのかを分からなくし、なぜ犯罪者と呼ばれているのかをわからなくする。そうすることによって、精神的に追い詰めていき、自殺する人もいる。死刑よりも重い罪で、人格を壊される恐怖を生きながらにして味わうため、最高刑に指定されている。
苦を味合わせず、死んで逃げる事を防止するため、このような処刑法がとられている。なお、罪を命をもってしても償いきれない場合にのみ、宣告される刑で、見せしめる目的が強い。
《ル・ボア》
雪弥が最初に訪れた国。サクリアーブル(後述)の麓にある国家。国王が存在しており君主制の政治形態である。
移動手段は、馬車が多く、最近開発された魔法車というものがあるが未だ一般的には浸透していない。
下水も整備されていて環境はとてもいい。
が、国を出るとすぐ森で、一応街道の整備はされているものの、獣や魔獣が出るため、ところどころ崩壊している。
《サクリアーブル》
半径5kmの幹を持つ大樹。樹齢は測定不能で、諸説にもよるが、世界が創られた時に同時に創造された樹とも言われている。研究者が未だ絶えず、ほとんどのことが解明されていない。また、神聖視する人も多い。
《魔素》
空気中に存在する高エネルギー体。生体には害はない。いろいろな種類の魔素がある。魔素を圧縮したり、膨張させたり、組み合わせたり、なんらかの刺激を加えると、魔法が発動する。だが、このことは、意識しないでできることであり、理論を学ばずとも、魔法は使えるようになる。