098.焦土/監視
【────命中。効果を確認……】
【────目標の破壊を確認。魔素量の大幅な減少により反射反応無し】
【────柱型槍身冷却保存開始】
【────柱型槍身第二列、分離完了。第三列に換装……】
【────完了】
【────現動作終了。以後待機状態へ移行】
まるで監視機器。
外部から目にしたとしても、遜色はないほどの色彩を孕んだ画面。
そこに映し出されていた六角の巨塔に向かって突き進む「物体」は……。
単調なる音声と共に、炸裂。
……一瞬で、映された全てを灰色にした。
そして視界が晴れ、映し出される光景。
シュトルムが呼称した「帝都防術塔」は、その原型を留めていない。
もとより捉えていた「地点」には、ただ荒地が広がるばかりなのだ。
「……ああ、なんと。まさかあれ程までに強固であった防御魔術を一撃で……私は間違っていなかった……そうだ、オネスティさん!」
「……はい」
冷静に画面を見つめ続けていたシュトルム。
作戦の完了を受けるなり、歩を進める。
「あなたのお陰で、帝国の防御網を破壊、後の侵入に際した絶対防壁を挫くことが出来ました。それで……こちらなんですが」
腰に付けられていた雑嚢に手を入れ……。
シュトルムは、握り拳を作ったまま、私の元へと差し向ける。
私は目の前に現れた強固なる腕。
そして、拳を目にしながら受け皿のように手を出した。
「これは……?」
「こちらは携帯式魔術槍に取り付ける……使用性向上部品とでもいいましょうか。この部品を本来魔術筒を充填させるのに必要な穴に組み込むことによって、直接、魔術槍内に魔素を取り入れることが出来ます」
「つまり、魔術筒はもう、使用しないということですか?」
「そうなりますね。筒に魔素を封入する方式は画期的でしたが、その持続性には難点がありました。なので、この部品を用いて、魔素から魔術に変換させる過程を省略することによって……防御魔術を打ち破る『間接的』な射出が可能となるのです」
私はシュトルムによって渡された部品を目にする。
自身の手の平に置かれた細管に耳にした言葉を重ねて思考を巡らせた。
「失礼します……はい! これで、問題は無いでしょう!」
「すみません、ありがとうございます」
上部に開けられた、魔術筒を差し込む穴。
保持し、細管を慣れた手つきで、捩じ込む。
僅かな重みを感じる変化に、私は少しばかりの期待を抱いてしまったのだ。
「いえいえ。魔術筒に関する情報のお陰で、今回の射出が行えました。……しかし、たった今得られた情報から、次列射出までの冷却期間に乱れがあることが分かりました。ですので、変換器を用いた改良を加えたいと思います。その時はまた────」
【────魔術反応複数確認……】
【────推進魔素力量から目標は現区域と推測】
「……それはそうですよね」
シュトルムは、響き渡る音声に対して機敏に反応し……。
踵を返すと足早に、計器周辺へと舞い戻る。
「貴殿の任務遂行が確認された。これより単独行動を行い、王国の体裁をその身で示す……それを胸に耐えてくれ」
「分かりました。お気遣いありがとうございます。……あとは、予定通りですね」
「ああ。私とダルミは魔導騎士団面々によって解放に至る。……それ以降は、別個と捉える」
極めて形式的な動作によって射出、そして破壊された巨塔。
それが何を意味し、どのような影響をもたらすのか。
私には、到底想像が出来なかった。
しかし。
今までより触れ、耳にしてきた一つ一つを思い出せば、目標としたそれが今後にとっての分水嶺となることは、私にでも感じることが出来る。
監視機器により目にした射出物。
それはまさに、私が使用していた魔術筒に形状が酷似していた。
……異なる点はその大きさ、規模である。
一撃で巨塔を消し去った柱型魔術槍。
その実行を推し進めたのは、私の戦闘情報……であるのだろうか。




