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097.鏑矢/分離


私は彼の言葉を確かに耳にしながら、向けられた手を握る。



シュトルムの唐突なる行動に首を(かし)げながら……。

所謂(いわゆる)、「握手」という行為を行う。



すると、何故か。

彼は、間髪入れずに後退(ずさ)りをする。



何を思ってか急ぐようにして、身体を平面(スクリーン)の下に戻す。

その傍には細かな音を立て、小球が大球の周りを回る計器が存在している。



以前より速度を増していたそれを小さく(うつむ)きながら眺めるシュトルムは、その場で触れながらに、手を動かしているのだ。





「王国が関与したくないこと……それをこれより、私が行います。トーピード魔導騎士団の皆様を巻き込んだのには……魔術槍の情報を得るためでもあったのです」



「……それは」



「はい! オネスティさん。約束のとおり、実行の元となる情報を戦闘状況から取らしてもらいました。これにより、防御魔術に対しての有効性が認められ、開発段階であった特効武器を実戦に生かすことが出来ます」



「────」





魔術槍。

確か、この武器が私の腕に装着される前。

長竿(ながざお)のような形をした形態を「二種充填式魔術槍」と呼称していた。



二人一組で運用する武器。

その形態時にてシュトルムから告げられた言葉。



────試験運用は済ませてあるが。

試験段階……今回の実戦情報を『収集』させてもらう。



……そうだ。

エクタノルホスから得られる角の回収。

それこそが、必要不可欠な武器を貸し出す条件であったのだ。





「つまりー、これからシュトルムさんはー、王国とは独立したという名目の上でー、攻撃をするのですねー!」



「……そうなりますね。政治的な立場というのが、いつの時代にもあるものです」



「でも、そうなったらさ。シュトルムさんは王国からも帝国からも追われる立場になるんだよね……それって」



「=うん。分離。うん」



「いえ! この私の身体さえあれば、あとはどこへでも行けます。頃合いを見て……戻ってきますよ」



「……これより、防御魔術を貫徹する長距離射程なる魔術槍を放ちます。私が反乱したと見せかければ、王国への責任は免れられるのです」





シュトルムが触れている存在。

映像のように映し出されているその画面前部分には、一つの大きな球体を取り囲むようにして八つの球体が同心円状に回転している。



上部と連動するかのように感じられる存在。

まるで、計器のようなものであると確認出来る。



それに触れると、連動するかのように画面に赤い四角形の線が浮き上がる。



画面に拡大され、映し出される光景。

線の内部にて捉えているのは六角の巨塔であった。





「……君が試してくれたおかげで、防御魔術を破る力は十分にあると結論が出ました。あとは、そう……撃つだけです」





計器に触れながらにて、こちらに目を向けるシュトルム。

彼の目に当たる部分は大きな単眼の撮影機器(カメラ)のようである。



備え付けられた単眼は、私を捉えるなり、けたたましく動作させる。



軌道修正をしているのかと思われる程に揺らいだ視点。

それは、彼の様子を反映させているようであった。





【────魔術管運搬完了】



【────魔術作動弁解放……】



【────長距離柱型魔術槍充填完了】





「……そろそろですね。────イラ・へーネルさん。それでは」



「ああ。シュトルム。貴殿の行いが、活路を見出すと確信する」



「……はい。お手数をお掛けして申し訳ありませんでした。……どうか王国を頼みます」



「あとは……任せてくれ」





【────使用柱型槍身第二列】



【────目標位置再確認……】



【────接続完了……】



【────射出管理は管制計器に委任します】





「外殻分離、形状変化。……槍身固定。目標、帝都防術塔」





上面、更にいえば空間内に響き渡る。

淡々とした音声は、聞き覚えのない単語を列挙する。



シュトルムが操作する機器。

それを見守るイラ・へーネル。



外枠には事の流れを囲む面々。

反響する音声に空間内は緊迫し、静寂なる現状は変化を迎える。





「長距離柱型魔術槍────射出」





【────射出確認】



【────速力安定……】



【────予想到着点。管変換にて読み上げ開始】



【────第十管通過。第九管通過。以後省略……】



【────三、二、一……】


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