096.再会/思惑
「へーネル団長……? ダルミさん……?」
光り輝く巨大な板の下。
備え付けられていた椅子に座るのは見慣れた人影。
何も変わりの無いような様子に、私は疑問を抱く。
「お勤めご苦労。これより我々魔導騎士団における作戦は完了。後の運びはターマイト戦略騎士団に一任する」
「……団長ー? これはー、どういうことですかー?」
「って、ファブリカ! あそこ……!」
オリヴァレスティが指し示した先。
私があの時、魔術槍を受け取った扉の辺りに人影が映し出された。
「皆様お疲れ様です。あなた達のお陰で、安全に事が運べそうです」
「シュトルムさん……」
「何が起きているのでしょうかー?」
「……混乱するかもしれないな。そうだな、まず。私達はシュトルムの人質にはなっていない」
『────』
「といって我々が結託して、王国への反抗を企てている訳では無いのだ」
「つまりー、非常事態発生時の救援もー、シュトルムさんの一連の行いもー、全てが異なるということですかー?」
「救援を要請したのは事実だ。確かに非常事態だったんだ。……だが、私とダルミが魔術士の接近を報告するべく向かった先。問題が発生した……のだ」
「そうですよ。事前に把握出来た魔術士群を報告しにターマイト戦略騎士団に入るなり、シュトルムさんが言ったのですよ────」
「私はこれより、防御魔術を打ち破る攻撃を帝都に向かい敢行する。故に、魔導騎士団は反乱を諌めるべく対処に当たって欲しい、……ですね」
シュトルムは歩を進め、大きな作動音を鳴らしながら。
イラ・へーネル、そして、ダルミの傍へと寄る。
「その通りですよ。シュトルムさん。そんなことを言われたへーネル団長と私は、苦悩に苛まれたのですよ」
「苦悩って、ダルミ……もしかして」
「=うん。反抗は事前に計画されていた……? うん」
「そうだ。魔術士群の発見、その報告時にシュトルムから告げられた作戦。……ターマイト騎士団の反抗、独断的戦闘行為の発生を諌めるべくトーピード魔導騎士団が派遣。後に捕虜として収容。そこまでが決められた手筈であったのだ」
「じゃあ……団長達が捕まったっていうのは全部……」
「=うん。対外的の……。うん」
「そうだな。帝国領へと侵入した戦略騎士団を打倒するべく、予定調和の如く現れた大量の敵魔術士群に向かって……ちょっとした芝居をしたんだ」
「そうなのですよ。私とへーネル団長がシュトルムさんの騎士に捕まり、拘束される様を彼等に、見せたのですよ」
「そして交戦……したのだが、予想外の事態に救援を要請した。それを第一の理由とすると、第二の理由として、一度有効と認められた防御魔術への攻撃……そう、魔物への効果は認められたんだ」
「そうですね。私がイラ・へーネルさんとダルミさんに、お願いしたのです。……魔術士への攻撃実験は未知であり、実験段階である魔術砲の有用性を調べるために。私の辺りを囲んで張り付いてしまっているのでは、攻撃手段がなく……助けを求めた次第です」
「よって、現作戦は王国が関与していないことを透明化させる意図を含め、秘密裏に行動する必要があった。……当然、それは内部からもな」
「なるほどー、今の今まで情報が開示されなかったのはー、敵の方にー、シュトルムさんの反乱を信じさせる必要があったからなのですねー!」
「……ということは、今はもう……」
「=うん。帝国へ情報が伝わって……。うん」
「そうなりますね。帝国に対しては、私が行ったへーネル団長の捕縛をもって示したのです。……敵は消え去り、頃合でしょう。あとは────」
シュトルムは、私を見るなり、足を進める。
近くまで来てその足を止めると……。
機械のような腕を向けて、手を出しながらに頷いた。
「ありがとうございました!」
「え……?」




