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092.交戦/実験


「────?!」



「ファブリカ!」





砲門が自ら生み出した光によって覆われ……。

中身と言うべき「塊」が、先端で留まっている。



認識阻害を再び展開させたファブリカ。

そして、私に杖の上で衝撃への備えを促すオリヴァレスティ。



二人の表情は魔術士群による包囲網、装甲に張り付いた大部隊を発見した……どの時よりも、焦りに満ちていた。



彼女達の呼吸は上がり、空中上での背中越しでも熱量が伝わる。





「ふ、二人ともー、地面ギリギリまで降りるよー!」



「分かった! 兄ちゃん! しっかり掴まってて!」



「分かりました。今のうちに離脱を────」





────刹那、光の塊が弾けた。





「撃ってきたー……?」



「ファブリカ! 今すぐに!」



「=うん。退避。うん」





無数に備わった砲はこちらを捉え……。

今まで蓄積し続けていた(エネルギー)を「光球」として射出した。



針山のように向けられた砲門。

そこから放たれた、全ての光球が迫る。



……杖は大きく下降し、後から身が追いつく。

杖の頭から地面へ向かって進む速度は何ものとも比べ物にならない。



一直線に迫る射出物は、私達が目標地点から瞬時に移動したがために魚雷が艦艇を通り過ぎるかの如く、走り抜ける。



元よりいた場所を通過し、(しばら)くすると……。

凝縮された眩い光の球は、遥か背後で爆散した。





「……ふー、上手く避けれたねー。オリヴァレスティもー、よく付いてこられたねー!」



「……ねぇ、ファブリカ。そんなことは置いといてさ、これは、そういう事だよね」



「=うん。紛れもない事実。うん」



「……この状況にー、なんて理由をつけたらいいのかなー。まさかー、私達に向かって攻撃してくるなんてねー」



「……まさか、敵に占拠されて……」





可能性としては考えられる……はずなのだ。



しかし、彼女達が危惧しているのは、更に内面的な事態。

攻撃そのものが所有者の意思であるか否かである。



私は、最も考えられる可能性は捨て置き、そうであって欲しいという希望的な真実を全面に押し出してしまった。





「それは、残念だけどなさそう。だって、こうしている間にも……団長との連絡が取れない」



「=うん。こちらからの問いかけにも応じず、といって発信がある訳でもない。敵魔術士が消え去った現状において、阻害をするものはおらず、考えられるのは……。うん」



「……シュトルム団長ー。彼がー、一枚噛んでる可能性が高いねー」



『あー……。皆様お待ちかねでぇ、ありますぅ』





聞き覚えのある声。

突如、無数の穴を広げた巨大物体の方角から無機質なる音声が広がる。





「なぜぇ聞こえるのかぁ、ですってぇ? それは辺り一面ンン、音声反響体ィを散りり、ばめさせてぇ、いた頂いててますからねぇ、……どこにいるららのか、あ、あある程度なら掴めンますよぉ」





おかしいと思っていたのだ。

何故、敵の防御魔術さえ容易に突破出来る技術をもったシュトルムの武装が、戦場と化した空間内に寄与していないのかと。



だが、違和感に対する答え。

それを最初から仕組まれていた事であるとすれば、予備弾薬についての説明が行われなかったことや、魔術士が残されてたことも全て、辻褄が合う。



……多少無理があり、勢いに任せた暴論であったとしても。

やはり、面白いほどに、全てが繋がるのだ。





「当てようと思えば、当てられる。……そういうことですね」



「はは、良くぞ、私に代わってて、魔術士を殲滅してくださいました。……あなた達ががが、戻って? ……くるのは、はは、こうこ、までしなにいと掴めないでありりますからねぇ」



「────まさか、認識阻害対策としてー、わざと敵を残したままにしておいたー……?」



「そう考えた方がいいね、敵との交戦が始まれば────って、それ以前に……。敵の防御魔術を貫ける武器を持っているのは、私達だから……」



「=うん。仮に攻撃が加えられるとするなら、姿が見えずとも私達がここへ来たって、紐づけられるね。うん」





シュトルムからの報告的音声(アナウンス)

それを聞いて、私は……思い出す。



帝国の魔術士が空から、地上には戦闘を行わんと身構えた騎士達が迫る。

奇襲を察知し、ファブリカと偵察をしたあの時。



私達は得られた情報を元に王国へと赴き。

事前情報として、襲撃への備えを可能とした。



予定調和の如く訪れた、魔術士と魔術駆動車。

その群れを成す様と、対峙する城壁上の騎士達。



完全なる防衛体制。

先立って手に入れた情報により、対処可能であるのにも関わらず、王国上層部は敵の侵入を黙認している。



結果的にそれは、魔術筒からなる魔術結界の展開持続へと繋がった。



役割を終えて悠々自適に通過していく魔術士を殲滅したのは、今対峙している「シュトルム」その人であり、上空はおろか地上部隊までも「実験」と称して消し去った様を、私は鮮明に覚えている。


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