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091.焼却/蜂巣


奇襲へと迫るトーピード魔導騎士団。



認識阻害、そして複合的な魔術による先制攻撃は……。

包囲網を突破したことにより、成される。



整った環境と、静寂なる周辺。

ターマイト戦略騎士団を取り巻く現状との対比によって、「空中上で」静止する私は、深々と自らの腕に、力を込めていた。





「兄ちゃん……頃合についての調整は任せるよ……」



「……はい」





重複による視界を借りることなく、目と鼻の先へと近づいた距離にて味方の魔術士、つまりはトーピード魔導騎士団は静止する。



超常的な加速を終え、進行方向に突き進むことが収束へと向かうと、今度は……紛うことなき「仕事」が待っていた。



(もや)を纏っているおかげで、装甲に張り付く魔術士群に視認されないとはいえ、彼等を背後にしながら魔術槍を構えるのには胆力が必要だ。



携えた魔術槍。

そこに挿入した魔術筒の内部には複合的な魔術が充填されており、照門から辺りを伺っている間にもその存在感に押し潰されてしまいそうなのである。





「=うん。こんな時は息を止めると良いよ。うん」





オリヴァレスティの助言により、動揺抑えるべく息を止める。

呼吸に意識を取られていた私は、その一瞬の動作により「時間」を得る。



────私は、僅かに飛び出した取手を、勢い良く引き込んだ。



放たれた魔術筒。

私は移動蹟(いどうせき)を追う。



進行軸に沿って回転しながらに。

噴煙を吐いたまま、群体の中心に飛び込んでいく。



たった一つの小さな筒が、蜂の巣を刺激する。

当初こそ、複合魔術を視野に入れていなかったが為に……。

無謀なる作戦であると考え、疑わなかった。



しかし、ファブリカとオリヴァレスティが封入し、射出した魔術筒。

その目標に見合わない大きさの攻撃手段が、内部で炸裂する「殺虫剤」のようであると、私はやはり、思いもしなかった。



《色彩豊かな閃光。辺りには噴煙滲ませた紫炎が拡散する》



防御魔術を破壊することの出来る魔術槍。

無数に展開させられた防御魔術を……いとも簡単に貫く技術がこちら側へと向けられていないのは、正しく偶然であろう。





「やったね……」



「……これで、団長さんとダルミさんに応えられましたかね」





ファブリカ、そしてオリヴァレスティの魔術を掛け合わせて作られた魔術筒は爆散し、敵の防御魔術を破壊、備えそのものを無力化し、加害範囲を広めながら、盛大優美なる「殲滅」へと至った。





「=うん。すごい、全滅だよ。うん」



「こうも防御魔術が意味を成さないなんてー、逆に怖いねー!」



「……ファブリカさん、オリヴァレスティさん。団長さんは、なんと言っていたのですか?」





雷光の如く閃光に目を細める。

それほどまでの威力・熱量を得られ、訪れたこの結果を見て私は思う。



何故、敵の防御魔術さえ容易に突破出来る技術をもったシュトルムの武装が、殲滅ないし崩壊に寄与していないのかと。





「途切れ途切れでー、はっきりとはしてないー……んだよねー。敵襲とー、こちらへ来るようにってのは聞こえたんだけどー!」



「うん……。あんなに乱れることなんか無かったから、警報も鳴るし、……心配だよね」



「……少し気になったのですが、これを作ったのはシュトルムさんです。襲撃を受けた際に、それを活用した攻撃手段があったのではないかと思うのですが……」



「考えられるのはー、二つーかなー。まず一つ目は何らかの工作によって攻撃手段が削がれたー。二つ目はー、予想以上の数量によってー、対応が間に合わなくなったー。とかかなー!」



「……そうですね。これ程までの武器を私などに与える程ですから、自身に組み込んでいるのは必然ですよね」



「=うん。どちらにせよ、全滅してしまった魔術士の現状を見れば、これから戦略騎士団側の動きはあると思う。うん」



「それならー、このままだとーシュトルムさんに見えないままだよねー!」





腕を上げ、指を鳴らすなり空気が揺らぐ。



内部から風が吹き入れるかのような現象に、自身の透過解除を実感する。





「はいー! これで、シュトルムさんー、そして団長さんとダルミにもー、気づいてもらえ────って」





訪れた目標からの動き。



今まで、沈黙を続けていたターマイト戦略騎士団の砲門。

それら全てが、こちらに向いている。





「まずいッ、ファブリカ! 早く認識阻害を!!」



「分かってるってー! なんでこっちに向けるのさー!」





内部の空気は抜け出した。

入り込んだかと思った空気は、舞い戻るかのように吐き出される。



再びかけられた認識阻害、訪れる変化。



それが何を意味しているのか……。

私達に向けられた砲門の先端には、「光」が集まっていた。


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