084.適性/結果
「おかしいな、適性があれば普通ならここで目が光るはずなんだけど……」
「=うん。不可解、不可解。うん」
「それはつまり、私に適性がないということでは……」
「いやー、……ねぇ?」
「うんうんー、オネスティーくんが口にしたメノミウスの体組織の件もあるしねー。そうとは言いきれなそうだねー」
「うーん、オリヴァレスティお姉ちゃんから拒絶なく食べれたって聞いた時は、間違いないと思ってたんだけど……あは!」
「反応がないぜェ! 不具合かァ?」
「それがどちら側の不具合なのか、気にはなるだよねぇ」
「……ま、不具合であれ、どっちにしてももう少し調べないといけないナ」
「=うん。そうだね。うん」
ア号姉妹は静かに頷く。
それを目にしていたオリヴァレスティは、隣にいたファブリカに視線を送る。
腕を自然体に伸ばしていたファブリカは、何を受け取ったか視線が送られるや否やその場で腕を組み、オリヴァレスティの立ち位置と入れ替わるかのように、こちらへと……恐れることなく近づいた。
「……オネスティーくん、実はねー。さっきかけたー体液が浸透するとー、器官が活性化してー、魔術の流れがすごーく良くなるんだー。だからねー魔術適性があってー、すごく流れた魔術がねー、出口から溢れ出ちゃうんだよねー!」
「出口……」
「そうそうー、出口ー。それが、ここー! 目なんだよねー」
そう言って更に近くに迫ったファブリカは……。
自身の目を示した後、私の目を示してみせる。
「魔術を使うと、簡単に言えば目が光るんだけどー」
「魔術を本人が使わずに、調べる方法が……メノミウスの体液であると……」
「そうなんだよー。オネスティーくん、まだ魔術がどうとかないしー、使えないからこれで調べるしかないしー、上手くいくと思ってたんだけどー……」
「そのための! メノミウスのお肉なんだよね!」
言葉の詰まるファブリカに、オリヴァレスティが答える。
「=うん。食べればすぐに流れがあるかないかは分かるしね。うん」
「その……二つの種類があるようなのですけど、何が違うのですか? 肉を食べて前もって知るのと、体液をかけて調べるのと……」
「それはね! 魔術を使うには、魔素溜りから魔素を吸い出して、一旦体内に溜めて、放出させなきゃいけないんだ!」
「=うん。体内に溜めることによって、その人が使える魔術が振り分けられる。うん」
「そして! それによって! メノミウスの肉を拒絶反応なく食べれたオネスティさんには、少なからず魔素を通わせる適性があることは分かったんだ! ……あは!」
アンが頷きながらに近づく。
その距離はファブリカ、オリヴァレスティと大差なかった。
「……なるほど。前もって調べたのは用意するかしないか、判別出来るからですか」
「……ま、抽出するのにも割と大変だしナ」
「……そうデスね。出来れば他のものに回したいのが本心デスね」
「ファブリカさんにも手伝ってもらったしなァ!」
「うんうん……そんなわけで、色々あって作った抽出物が無駄にならないように、前もって保険をかけといたんだ! それで……今検査ってことなんだけど……ね。……あは」
アンの言葉から辺りに暗雲が立ち込め、淀んだ空気へと変質する。
私の目が光らなかったことは、結論しては魔術の使用が不可能であるということなのだろうが、如何せん前もって保険として実行した「食事」が、検査結果を混乱に至らせるとは思いもしなかったであろう。
「ま! いいじゃん! 兄ちゃんが完全に魔術が使えない、なんて可能性はなくなったんだし!」
「=うん。今のところ魔術は溜めれるが、自己的な出口がない。それだけ分かれば、後はなんとでも出来そう。うん」
「まーそーだねー! 魔素溜りから吸い上げることだけ出来るなら、まずは一安心ー、だねー」
纏まり始める魔術適性検査。
私の中でその結果は、未だ確定には至っていない。
どうやら、彼女達の会話によると。
魔術適性のある人間が魔術を行使すると……目が光るらしい。
放出出口なる魔素が流れ出る原理を利用した検査。
体内器官を活性化させる活性化させる体液によって行われたが、反応はない。
実際ここで反応がなければ魔術を使うことが出来ない人間であると認定されるようだが、どうにも私は、異なるようだ。
魔導騎士団の策略かメノミウスの肉を用いた事前検査。
嘔吐などの拒絶反応を起こさなかったがために、少なからず適性はある。
つまり、大地から魔素を通わせ、吸い上げることだけは出来るようなのだ。
だが、放出のために必要な瞳の輝きが確認出来ないために……。
魔術は、どのようにしても、使えないのだろうか。
「え、私、魔術……使えないんですか?」
「……それは────」




