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083.検査/感触


適性があれば杖として機能する代物。

それを計り示すのが、同様に置かれた内容物。



私に、その適性が無ければ、恐らくこれは……ただの鈍器である。





「お! オリヴァレスティお姉ちゃん! これで安心だね! ……あは!」



(ねぎら)いだよねぇ」



「そしてェ! これからここに置かれた二つのものによってェ! オネスティさんの魔術適性が解き明かされるぜェ!」



「……ま、そのための事前準備をオリヴァレスティさんに頼んでいたんだよナ?」



「……そうデスね。ファブリカさん」



「やっぱりー、ア号姉妹は勘が鋭いなー! よしよしー……で、どうだった?」



「うん! 大丈夫そうだったよ! 事前に分かるかどうかはあれだけど……拒絶反応もなかったし!」



「=うん。吐かなかった……。うん」



「え」



「抗体がー、あるみたいだなー。そうなるとー、これから行うー適性検査もー、明るいものだよねー!」



「もしかして……メノミウスの肉を食べるように指示したのって……」



「私だよー!」





声高らかに手を挙げて注目を(さら)うファブリカ。

それを見て不敵な笑みを浮かべるオリヴァレスティ。



……私はその二人から末恐ろしさを感じた。





「これからその……ア号姉妹さんの協力によって作られた内容物で、判別出来るのではなかったのですか……」



「……ま、せっかく食料が手に入ったんだし、試してみるのも悪くないんじゃないかナ」



「死にはしないぜェ!」



「まあまあ、皆! やっとメノミウスの体液から検査用の液体が抽出(ちゅうしゅつ)出来たんだし! 早速オネスティさんを調べてみようよ! ……あは!」



「……それで、大丈夫デスか? オネスティさん」





不安げにこちらを見ながら尋ねるエミリー。



私は、その気遣いを受け取りながら、前を向く。





「大丈夫です。これからメノミウスの肉を活用した選択が増えることが分かったので……」



「……そうデスか。それなら────アン?」



「うん! じゃーオネスティさん! これかけるから! 目、瞑ってて! ……あは!」





《暗転/暗転》





私は反射的に目を閉じる。

訪れた暗闇、残香(ざんこう)のような微量の光線によって、(うす)(あわ)い「赤」が(にじ)むが、それはすぐに濃黒(のうこく)色へと、極めて収縮的に……変化する。



身体か頭かそれかどこか。

内容物がどのようにして「かかる」のかを知らずに、勢いのまま視界を消してしまったがために、拭いきれぬ不安が大いに募る。



ファブリカにオリヴァレスティ、そしてア号姉妹。

彼女達を前にして目を閉じるというのがこんなにも恐ろしいものだと思うのは、先程の出来事があったことが影響しているのだろうか。



……それとも、彼女達と初めて出会ったその時から、本来の目的とは外れた「道」に猜疑心を抱いていたからだろうか。



ここは異国の地。

否、社会通念、普遍的情報など通用しない……。

ありとあらゆる現状が、理解を「凌駕」する異空間。



魔術を元に人々が生き、統一された言語を用いる。

形成された文化圏に存在する、彼女達。



私は異なる世界の住人であったがために驚愕し疑心暗鬼に(おちい)ることも多々あるが、これ(すなわ)ちこの世界における「常識」なのだと液化、更には簡略化させて自らに浸透させてしまえば、自然と解決する。



しかし、私は自身の「普遍」一新させ、新たな文化圏の中で溶けてしまうといった未来に対して、それこそ末恐ろしさを感じる。



私は、あの場所から決断をして、人探しのためにここまで来たのだ。

そこに至る目的は、当然今も変わっていない。



監察対象である冬月不悠乃の消失、彩雲彩花、先遣隊の捜索。

行わなければならないことがあるのを理解した上で……。

その実行せねばならない根本は、この場所、この世界から発生したものではないのだと、冷静に思い続ければならない。



そう……考えている。





「いくよ! ……あは!」





息を呑み、言葉の途切れを追う。

消え去ったアンの声は、始まりの合図となって私を襲う。



────頭部に僅かな感触。



イラ・へーネルやオリヴァレスティのように頭部に何もつけていないせいか、如実かつ鮮明に、内容物の接着が伝わる。



そして。

何故か、身体ではなく頭部に感じた僅かな感触は、私の体を加熱させた。





「……え、熱い……?」



「……そうデスね。安心してくださいデス。そう感じているだけデスから」



「そうそう! 燃えてたりしてるわけじゃないからね! ……あは!」



「体内器官の活性化によって、じっくりと魔術適性を調べているぜェ!」



「……ま、じきに分かるナ」



「……目を……開けても?」



「いいよ! ……あは!」





目を開ける────と、そこにはオリヴァレスティがいた。



……それも、かなりの至近距離にて。





「え?」



「んー……? なんだーこれ」



「=うん。これは……。うん」





密接に至りそうな距離にて、私の目を覗き込むオリヴァレスティ。

視線をずらしてア号姉妹……。

そしてファブリカを見れば、彼女と同様に不安げな表情を見せている。





「……何か、あったのですか?」


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